【完結】勇者PTから追放された空手家の俺、可愛い弟子たちと空手無双する。俺が抜けたあとの勇者たちが暴走? じゃあ、最後に俺が息の根をとめる

ともボン

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第五章 ~邂逅、いずれ世界に知れ渡る将来の三拳姫~

道場訓 四十二   武術の秘訣、黙念師容

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 意を決したエミリアが軽快な歩法フットワークで距離をちぢめてくる。

 しかし、真っ直ぐ最短に向かってきたわけではない。

 上半身を左右にさぶりながら、ジグザグに間合いをめてきたのだ。

 俺にまとしぼらせにくくしたのだろう。

 やがて急接近してきたエミリアは、立て続けにパンチを放ってきた。

 コンパクトで素早い左拳でのきざき(ジャブ)だ。

 ふむ、まあまあだな。

 顔面へと飛んで来た2発のきざき(ジャブ)を俺はてのひらで受けた。

 ――パンパン!

 てのひらで受けた衝撃でかわいた音が鳴る。

 さあ、次はどうする?

 2発のきざき(ジャブ)が不発に終わったエミリアは、そのまま大きく斜めにみ込みながら脇腹へ鉤突かぎづき(フック)を放ってきた。

 馬鹿、それは素直すぎるぞ。

 俺は脇腹へ飛んできた鉤突かぎづき(フック)を、肘を下に落とすことで腕全体で守る受け技――り受けで完全に防御する。

 本当ならば相手の拳に肘打ひじうちをして壊すのだが、大事な弟子であるエミリアにはそんなことはしない。

「くっ!」

 エミリアはコンビネーション・ブローをふせがれると、後方に退しりぞいて大きく間合いを外した。

「どうした? もう終わりか?」

 俺の挑発ちょうはつを受けてエミリアは逆に闘志を燃やしたのだろう。

 目を見開いたエミリアは、今度は俺を本気で倒すつもりの攻撃を仕掛けてくる。

 鋭い踏み込みからきざき(ジャブ)をり出すエミリア。

 だが、先ほどの相手を出方でかたを見る牽制けんせいきざき(ジャブ)ではない。

 み込み――腰の回転――肩の入れ方――脱力した腕の振り――これからを一体化させた上、さらに連続したコンビネーション・ブローをり出してくる。

 狙ってきた場所も上々じょうじょうだった。

 顔面から胸部、そこから腹部へ行ってまた顔面など攻撃する場所をワンパターンにならないよう上下に散らしながら攻撃してきたのだ。

 それこそBランクの冒険者たちにも十分通用する体術たいじゅつだろう。

 けれども、まだ俺には通用しない。

 ――パンパンパンパンパンパンパンパンッ!

 俺は右手一本でエミリアのコンビネーション・ブローをてのひらで受け止めていく。

 そして最後の攻撃を受け止めたとき、そのまま右手をエミリアのひたいの前に突き出した。

 折り曲げた人差し指を親指の腹でおさえ、一瞬で伸ばそうとする力をたくわえたあとに人差し指を親指から外してエミリアの額にぶつける。

 バチンッ!

 エミリアは俺の極限まで手加減した〝デコピン〟を食らうと、見えない糸で引っ張られたように後方へ吹き飛んだ。

 背中から床に落ちてたたみの上を何度も転がる。

 ……もう終わりかな?

 などと思った俺の予想はすぐにくつがえされた。

「まだまだ……」

 エミリアはのそりと上半身を起こすと、片膝をついて立ち上がった。

 頭部にダメージが残っていたのか、何度も頭を左右に振る。

「いいぞ。その調子だ」

 俺はにやりと笑い、エミリアに言った。

「エミリア、俺に攻撃をする前にちゃんとした気力アニマってみろ」

気力アニマを……る?」

 俺はこくりとうなずいた。

「そうだ。お前も見ていただろう? 俺が【神の武道場】に入る次元の扉を出す前にした〝息吹いぶき〟の呼吸を……それにアリアナ大草原で気力アニマを流し込んだとき、お前は心身ともに感じたはずだ。身体の中に生まれた気力アニマ充実じゅうじつした光の感じ――光気感こうきかんをな」

 俺はエミリアの目を真摯しんしに見つめた。

「もう一度、それらすべてを自分で再現してみろ。それだけで俺の態度はまったく変わるぞ」

「で、ですが私はその呼吸法も自分で気力アニマる方法も教えてもらっていません」

「確かにお前にはまだ息吹いぶきの呼吸法も気力アニマる――三戦サンチンの型も直接は教えてはいない……だが、教えてはいなくてもお前にははずだ」

 エミリアは意味が分からないとばかりに首をかしげる。

「武術の秘訣ひけつには〝黙念師容もくねんしよう〟という言葉がある。優れた武術家の動きを見て稽古けいこを積み重ねれば、いずれ自分も同じことが出来るという意味だ」

 もちろん、と俺は付け加えた。

「どれだけすぐれた動きだろうと、1度や2度ほど見たぐらいで同じ動きが出来るわけじゃない。だが、そのぐらいは真似まねできるだろう。いいか? エミリア。最初は見様見真似みようみまねでも一向に構わない。今の自身が持つすべてを総動員してまずはやってみろ」

 俺がそう言うと、エミリアは迷うことなく「はい!」と快活かいかつに返事をする。

 そして――。

 エミリアは両足が「ハ」の字になるような立ち方を取った。

 背筋は真っ直ぐになるように伸ばし、拳を握った状態の両手の肘を曲げて中段内受ちゅうだんうちうけの構えになる。

 まだまだつたなかったが、それでも何とか形になっている三戦さんちんの構えだ。

 コオオオオオオオオオオオオ――――…………

 エミリアは見様見真似みようみまねで〝息吹いぶき〟の呼吸法を行っていく。

「いいぞ、エミリア。慌てなくてもいい。上手くしようとしなくていい。大事なのは自分の身体で感じている感覚だ。体内に光が満ちていると感じたら、その光を外へと向けて放出しろ。内臓から骨へ、骨から筋肉へ、そして筋肉から皮膚を突き抜けて〝息吹いぶき〟とともに外へと放出――いや、炎のように燃え上がらせろ!」

 次の瞬間、エミリアの身体に急激な変化が起こった。

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ――――ッ!

 エミリアの下丹田げたんでんの位置に、目をくらませるほどの黄金色の光球が出現した。

 そして目に見えた光球からは火の粉を思わせる黄金色の燐光りんこう噴出ふんしゅつし、あっという間に黄金色の燐光りんこうは光のうずとなってエミリアの全身をおおい尽くしていく。

 まぎれもない、気力アニマ顕現化けんげんかだ。

 こいつ、まさか最初からここまで……。

 いくら光気感こうきかんを感じたことがあったとはいえ、見様見真似みようみまね息吹いぶき三戦さんちんによる気力アニマの練りで顕現化けんげんかいきまで行くとは思わなかった。

 正直なところ驚きを隠せない。

 こいつは……エミリアは天才だ。

 俺が感心していると、エミリアはすかさず自流の構えを取る。

「ケンシン師匠……もう一度、お手合わせ願います」

 直後、エミリアは床を蹴って一足飛いっそくとびに間合いをめてきた。

 さっきよりも何倍も速く、複雑なステップを踏みながら疾走しっそうしてくるエミリア。

 そんなエミリアに俺は心の底から感激かんげきした。

 気力アニマ顕現化けんげんかによって身体能力が飛躍的ひやくてきに向上し、文字通り今のエミリアは疾風しっぷうごとき速さで距離をちぢめてくる。

「シッ!」

 エミリアは鋭い呼気とともに、連続したきざき(ジャブ)を放ってきた。

 しかし、その鋭さと速度は先ほどの比ではない。

 複雑なステップからり出されてきたこともあってか、縦横無尽じゅうおうむじんな角度から連打必倒れんだひっとうの拳が飛んでくる。

 ――パンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンッ!

 俺はそんなコンビネーション・ブローをてのひらで受けていく。

 だが、右手だけではない。

 左手も使った両手のてのひら駆使くしして受け流し、あるいは軌道をらしてになっている拳をさばいていく。

 うん、いい攻撃だ。

 ただ、お前は絶対的に実戦経験じっせんけいけんが足りない。

 どれだけ攻撃に速さと重さがあろうと、戦術が未熟みじゅくな武術家は木偶でく以下だぞ。

 俺は攻撃が途切とぎれた一瞬のすきをつき、エミリアの腹部に前蹴まえげりを放った。

 エミリアは俺の蹴りを最大限に警戒けいかいしたのだろう。

 咄嗟とっさに両手を「×」字に交差させて防御する。

 しかし、俺の本当の狙いは蹴りによる攻撃ではなかった。

 俺は途中で前蹴まえげりの勢いをピタリと止めると、前蹴まえげりを放った左足を床にストンと下ろす。

 そしてエミリアが面を食らった直後、俺はそのまま踏み込んでエミリアの防御を無力化させた。

 何のことはない。

「×」字に交差させていた両手を、同じくこちらも両手を使ってこじ開けたのだ。

 もちろん力づくなどという強引なものではなく、と呼ばれる手を開手かいしゅにして相手の攻撃をさばく技法を応用したものだ。

 なのでエミリアはすべもなく、俺にふところを開けた結果になってしまった。

「エミリア、お前には才能がある。これからもっと修練しゅうれんはげめよ」

 俺はそう言うとエミリアのあご先に右手を突き出し、先ほどの〝デコピン〟の要領ようりょうであごを打ち抜いた。

 あごを支点に頭部を揺らされたエミリアは、全身が弛緩しかんした状態になって床に崩れ落ちる。

 それでもエミリアの意識は消えてはいない。

 俺はその辺も加味かみして意識がなくならない程度に加減したからだ。

 それはなぜか?

 決まっている。

 俺は落ち着いた足取りでエミリアから離れた。

 3人がいる位置のちょうど中央部分まで歩を進めていく。

「さてと……はこれぐらいでいいな?」

 俺は唖然あぜんとする3人に向かって言った。

「今度は1人ずつじゃなくて3人いっぺんに掛かってこい。もしも一発でも俺に攻撃を当てられた奴がいたら、そいつは一番弟子を名乗ってもいいぞ……まあ、当てられたの話だがな」

 我ながら嫌味いやみな物言いだなと思いながらも、これぐらい発破はっぱを掛けるのがちょうどいいとも思った。

 そして、実際にこれが意外とこうそうした。

 3人はやる気を出して今度は全員で立ち向かってきたのだ。

 その後、俺は3人とたっぷり1時間は組手くみてをした。

 けれども、結果は誰も一番弟子を名乗れなかったのは言うまでもない。
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