【完結】勇者PTから追放された空手家の俺、可愛い弟子たちと空手無双する。俺が抜けたあとの勇者たちが暴走? じゃあ、最後に俺が息の根をとめる

ともボン

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第七章 ~華やかで煌びやかな地下の世界・武士団ギルド編~

道場訓 六十四   過去の過ちと償い

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 客間に雪崩なだれ込んできた役人の数は約20人。

 これは非合法な魔薬まやくを使用された場合を想定してのことだろう。
 
 事実、役人たちは革製のけい甲冑かっちゅうを身に着けて武装していた。

 それは大いに分かる。

 非合法な魔薬まやくを使用すれば、子供でも大人を殺せる戦闘力が生まれるのだ。

 その中でも特に戦闘経験のある人間が使うと危険度はね上がる。

 相手によるが武装した20人でも少ないぐらいだった。

 ただし、それは非合法な魔薬まやくを目の前で使用している相手がいるのならの話だ。

「おい、アンタら。これは一体、どういうことだ? 理由を説明してくれ」

 部屋の主であったコジローが役人たちに慌ててたずねる。

「どうもこうもない。理由は申した通りだ。そこの黒髪の女はキキョウ・フウゲツだろう? 勇者パーティーのカチョウ・フウゲツの妹。それは相違そういないな?」

 役人の1人は大刀を抜くと、その大刀の切っ先をキキョウに向ける。

 キキョウは申し訳なさそうにうなずいた。

「……はい、拙者せっしゃはキキョウ・フウゲツです」

「やはりな。だったら何も変わらん。非合法な魔薬まやくの購入及び所持により捕縛致ほばくいたすゆえ、抵抗せずに神妙しんみょうに縄につけ。もしも抵抗すればこの場で斬り捨てるぞ」

 役人たちは本気だった。

 こいつらは本気でキキョウを捕まえる気であり、抵抗すればこの場で斬ることもいとわないという目つきをしている。

 だが、なぜだ?

 どうして役人たちは非合法な魔薬まやくをキキョウが持っていたことを知っている?

 俺は念のためエミリアに顔を向けた。

 するとエミリアは俺に見つめられた意味をさっしたのだろう。

 はっきりと自分ではないという顔で首を左右に振る。

 安心しろ、エミリア。

 別にお前をうたがったわけじゃない。

 念のため確認したかっただけさ。

 この中でキキョウが非合法な魔薬まやくを持っていたことを知っていたのは2人。

 俺とエミリアだけだ。

 そして俺は役人にキキョウを売るような真似はしていないため、必然的に事情を知る者はエミリアだけということになる。

 しかし、エミリアが密告みっこくしていないことは最初から分かっている。

 となると残りの事情を知る者はリゼッタだけだったが、リゼッタもそんなことをするような女ではないことは俺が1番よく理解していた。

 だとすると、残る可能性は1つしかない。

 いや、それしかなかった。

 実際のところ役人も罪状をべたときに口にしている。

 非合法な魔薬まやく及び所持により、と。

 俺がそんなことを考えていると、役人の1人が確認するように声を上げた。

「このたびヤマトタウンにおいて大規模な非合法な魔薬まやくの取り締まりを行ったところ、売人ばいにんたちが持っていた顧客こきゃくリストの中にそなた――キキョウ・フウゲツの名前がっていた。そして見回り組の1人が武士団サムライギルドへと向かうキキョウ・フウゲツを見たと言うのでこうしてさんじた次第」

 役人たちは一斉にキキョウを取り囲む。

「キキョウ・フウゲツ。もはや証拠はがっておる。フウゲツ家のためにもここは大人しくご同行されたほうが得策とくさくだと思うが」

 なるほど、と俺は納得した。

 どうやら誰かが密告みっこくしたのではなく、売人ばいにんたちの売り買いリストの中にキキョウの名前が記載きさいされていたのか。

 だとしたら何よりの証拠だ。

 実際のところキキョウが非合法な魔薬まやくを所持及び使用したのは事実である。

 しかし、最近で使った相手は俺だった。

 そしてキキョウにも確認を取ったが使ったのは俺をふくめて3回だけであり、その他の2回はダンジョンの中で使用したという。

 ただし使用が認められている許可範囲エリアのギリギリだったため、黒か白かと言われたら灰色グレーという微妙な感じだったらしい。

 そうなるとキキョウの罪は所持と俺に対する使用の2点にしぼられるが、役人たちの言い分を聞く限りでは使用した事実までは調べてはいなかった。

 あくまでも役人たちが主張しているのは、購入及び所持の2点だ。

 それなら俺が使用したことを黙っていれば、幾分いくぶんは罪が軽くなるに違いない。

 たとえここでキキョウが捕まったとしても、購入と所持だけの罪ならばある程度の保釈金ほしゃくきんを支払えば釈放しゃくほうになる可能性が高かった。

 これはヤマトタウンだけではなく、それこそ中央街などでもたまに行われていたことだ。

 ヤマトタウンでは役人だったが、他の場所では警邏隊けいらたい(街の警察組織)が裏社会相手に大規模な犯罪の摘発行為てきはつこういを行うことがある。

 主に裏賭博カジノや人身売買などだったが、その他にも非合法な魔薬まやくを売りさばく売人ばいにんたちの摘発てきはつ検挙けんきょがあった。

 俺も少なからず裏社会の人間を相手にしたことがあるので知っている。

 役人たちや警邏隊けいらたい(街の警察組織)は表向きは街の治安維持ちあんいじのためと名目しているが、実のところ裏社会の人間たちを摘発てきはつ検挙けんきょする本当の目的は金と実績だ。

 裏賭博カジノには貴族の人間も参加していることが多く、その場で逮捕された貴族たちは多額の保釈金ほしゃくきんを払って自由の身になる。

 その保釈金ほしゃくきんが役人や警邏隊けいらたい(街の警察組織)のふところに入るという仕組みだ。

 一方で売人ばいにんなどを摘発てきはつ検挙けんきょすると王宮や司法機関に対する警邏隊けいらたい(街の警察組織)の実績になるため、こうしてたまに大規模な摘発行為てきはつこういが行われるのだ。

 要するに今回のような騒動の本質は役人や警邏隊けいらたい(街の警察組織)のための、小遣い稼ぎと上へのおべっかに他ならない。

 だからこそ、ここは役人たちの顔をつぶさないほうが得策とくさくだった。

 もちろん、抵抗しようと思えば俺はいくらでも抵抗できる。

 それこそ俺がその気になれば武器を持った役人の20人など相手にならないが、そんなことをすれば俺たちは晴れておたずね者になってしまう。

 俺はちらりとキキョウを見る。

 するとキキョウはすでに俺を見つめていた。

「ケンシン殿どの、申し訳ありませぬ。これは拙者せっしゃまねいたことです。そのケジメはつけなければなりません」 

 キキョウは立ち上がると、役人たちに頭を下げた。

「お役人の方々、お手数をお掛けいたします。拙者せっしゃは抵抗いたしませぬゆえ、どこへなりとも連れて行っていただきたい」

 その言葉に嘘偽りがないと判断したのだろう。

 役人たちは大刀をおさめると、キキョウに縄をかけて客間から出て行った。

 その後、エミリアが俺に近寄って来る。

「いいんですか? ケンシン師匠。このままだとキキョウさんが……」

「分かっている。だが、そう慌てるな。こういうことは往々おうおうにしてあるんだ。むしろ、抵抗したときのほうが面倒になっていただろう。それに捕まったとはいえ、キキョウがどうにかなるというものでもない」

「つまり、どういうことですか?」

「役人たちに保釈金ほしゃくきんを払えば、キキョウはすぐに帰ってくるということさ」

 と、俺が何の心配もせずに断言したときだ。

「甘えな」

 今まで黙っていたコジローが険しい顔で言った。

「あのじょうちゃん死ぬぞ……それもとんでもなくむごたらしい目にってな」
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