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最終章 ~華やかで煌びやかな地下の世界・元勇者の消滅編~
道場訓 九十六 勇者の誤った行動 ㉛
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キース・マクマホンこと俺は、通路の中を延々と進んでいた。
どれぐらい時間が経ったときだろうか。
「ん?」
俺は人の気配を感じて立ち止まった。
目の前にあるのは「L」字形の曲がり角だ。
その通路の曲がった先から異様な気配を感じたのである。
普通の人間の気配じゃねえな。
どれぐらいのランクかは分からなかったが、少なくともAランク以上の魔物のような気配を感じた。
だが、こんなところに魔物などいるのだろうか。
まあいいさ、と俺は平然と曲がり角を曲がった。
この魔人の力があれば、どんな魔物がいようと簡単に倒せると思ったからだ。
「…………」
そして曲がり角を曲がるや否や、俺は視界に入ってきた光景に言葉を失った。
10メートル以上先に1人の人間が立っていた。
身体つきから見て女ではなく男だろう。
だろうと性別を予測したのは、その人間は自分の顔を隠すような気味の悪い〝般若〟の面を被っていたからだ。
しかもその般若面の男は、自分の肩にぐったりとしている女を担いでいた。
ケンシンやカチョウと同じ黒髪の女だ。
加えて女が着ていたのは純白の空手着だった。
牢から脱獄した空手家の女に間違いないだろう。
見たところ、どうやら気を失っているようだ。
「おい、そこの仮面野郎!」
俺はこちらに背中を向けていた般若面の男に叫ぶ。
般若面の男は足を止めると、ゆっくりとこちらに身体を向けてくる。
「どちら様ですか?」
やはり般若面の性別は男だった。
声質が男そのものである。
まあ、そんなことはさておき。
「俺のことなんてどうでもいい。てめえがどこのどいつでその空手家の女をどうする気かは知らねえが、俺もその空手家の女に用があるんだ」
ぺっ、と俺は威嚇の意味も込めて通路に唾を吐き捨てる。
「だから、大人しくその女を置いて俺の視界から消えろ。そうすれば命だけは助けてやる」
本当だった。
別に俺は魔人の力を得て快楽殺人者になったわけじゃない。
素直に俺の言うことを聞く奴なら、殺さないでおくこともできる。
ただし、もしも少しでも抵抗する意思を見せたなら話は別だ。
そのときは容赦なく俺はあの般若面の男を殺すつもりだった。
「……あなた、普通の人間じゃありませんね」
般若面の男は仮面の下で笑った。
そして空手家の女をそっと地面に下す。
俺の言うことを聞く気なんだな。
と、俺が般若面の男を見て思ったときだ。
「――――ッ!」
俺は両目を見開いて驚愕した。
瞬きをするかしないかの刹那の間に、10メートルほど離れた位置にいた般若面の男が視界から消えたのだ。
「な……そんな馬鹿な」
俺は瞬時に身構えて般若面の男がいた場所を見つめた。
だが、その場所には床に寝かされた空手家の女がいるのみ。
「どこに消えやがった!」
俺が血相を変えて叫んだそのとき――。
ポン。
誰かが後ろから俺の肩に手を置いてきた。
「なぜかあなたからは私たちと同じ匂いがしますよ」
同時に男の声が聞こえてくる。
俺は下腹に氷を詰め込まれたような不快感を感じた。
そして慌てて振り返った直後、俺の腹部に凄まじい衝撃が走った。
どれぐらい時間が経ったときだろうか。
「ん?」
俺は人の気配を感じて立ち止まった。
目の前にあるのは「L」字形の曲がり角だ。
その通路の曲がった先から異様な気配を感じたのである。
普通の人間の気配じゃねえな。
どれぐらいのランクかは分からなかったが、少なくともAランク以上の魔物のような気配を感じた。
だが、こんなところに魔物などいるのだろうか。
まあいいさ、と俺は平然と曲がり角を曲がった。
この魔人の力があれば、どんな魔物がいようと簡単に倒せると思ったからだ。
「…………」
そして曲がり角を曲がるや否や、俺は視界に入ってきた光景に言葉を失った。
10メートル以上先に1人の人間が立っていた。
身体つきから見て女ではなく男だろう。
だろうと性別を予測したのは、その人間は自分の顔を隠すような気味の悪い〝般若〟の面を被っていたからだ。
しかもその般若面の男は、自分の肩にぐったりとしている女を担いでいた。
ケンシンやカチョウと同じ黒髪の女だ。
加えて女が着ていたのは純白の空手着だった。
牢から脱獄した空手家の女に間違いないだろう。
見たところ、どうやら気を失っているようだ。
「おい、そこの仮面野郎!」
俺はこちらに背中を向けていた般若面の男に叫ぶ。
般若面の男は足を止めると、ゆっくりとこちらに身体を向けてくる。
「どちら様ですか?」
やはり般若面の性別は男だった。
声質が男そのものである。
まあ、そんなことはさておき。
「俺のことなんてどうでもいい。てめえがどこのどいつでその空手家の女をどうする気かは知らねえが、俺もその空手家の女に用があるんだ」
ぺっ、と俺は威嚇の意味も込めて通路に唾を吐き捨てる。
「だから、大人しくその女を置いて俺の視界から消えろ。そうすれば命だけは助けてやる」
本当だった。
別に俺は魔人の力を得て快楽殺人者になったわけじゃない。
素直に俺の言うことを聞く奴なら、殺さないでおくこともできる。
ただし、もしも少しでも抵抗する意思を見せたなら話は別だ。
そのときは容赦なく俺はあの般若面の男を殺すつもりだった。
「……あなた、普通の人間じゃありませんね」
般若面の男は仮面の下で笑った。
そして空手家の女をそっと地面に下す。
俺の言うことを聞く気なんだな。
と、俺が般若面の男を見て思ったときだ。
「――――ッ!」
俺は両目を見開いて驚愕した。
瞬きをするかしないかの刹那の間に、10メートルほど離れた位置にいた般若面の男が視界から消えたのだ。
「な……そんな馬鹿な」
俺は瞬時に身構えて般若面の男がいた場所を見つめた。
だが、その場所には床に寝かされた空手家の女がいるのみ。
「どこに消えやがった!」
俺が血相を変えて叫んだそのとき――。
ポン。
誰かが後ろから俺の肩に手を置いてきた。
「なぜかあなたからは私たちと同じ匂いがしますよ」
同時に男の声が聞こえてくる。
俺は下腹に氷を詰め込まれたような不快感を感じた。
そして慌てて振り返った直後、俺の腹部に凄まじい衝撃が走った。
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