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第一章
2・子供を拾いました
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「あぁっ、娘さん!危ない!なんてことを!」
「ダメだ!そん中はもうどうにもならない!」
「自殺行為だ!」
キイロが炎の中に飛び込んでいく姿を見た人々が、次々にそう叫んだが、自分たちも逃げ遅れてしまう。
「あんた、あたしたちも逃げないと!」
「しかし」
「構ってられないよ!逃げろ!」
次々に人々は屋敷から逃げ出していく。
キイロは構わず、燃え盛る炎の中へ飛び込んで行った。
屋敷の中は一層ひどい炎で、ぶわっと熱気が肺の中に入る、はずだ。
だがキイロには全く届かなかった。
(やった。やっぱりいけんじゃん)
炎で焼けおちた柱を踏みつけてあっという間に履いていたぼろ草履は一瞬で焼けた。
だが、キイロは平気だった。
まるで全身を守るかのように白い靄がキイロを包み、熱を一切近づけない。
素足で踏みつけながら炎の中、奥の間の方へ進んで行くと、小さなかすれた猫の鳴き声が聞こえた。
そこか、と声の方へ進むと、キイロは驚いた。
(猫じゃない!!!)
小さな子供が、体を丸めて泣いていたのだ。
慌てて子供を抱きかかえた。
キイロに抱きかかえられた子供は、けほっと咳きこんでしがみついてきた。
(なんでこんな所に子供が?)
嫁ぎ先に子供がいるなんて聞いてないし、そもそも大きなお屋敷だったからひょっとしたら使用人の子供かもしれない。
キイロは着物の中に子供をぐいぐい押し込んで、炎に触れないように包み込む。
「大丈夫よ。もう助かるからね」
そう言うと、キイロは、静かに息を吸った。
(ん―――――っ)
思い切り、自分の中からため込んだ空気を、体の中から押し出す様にいきんだ。
すると急に、ゴロゴロと空が鳴り始めた。
(初めて、この力に感謝するかも!)
あちこち焼け落ちて、ぼろぼろになった屋敷の中をキイロは逃げやすい場所を選んで走って逃げる。
(どこか、通れるところを)
すると、いきなり目の前に雨のアーチが現れた。
まるでここを通れと言わんばかりに、水の門が連なっている。
(うそ!こんな事できたの?!)
さすがに驚くキイロだが、いまはそれどころじゃない。
この子供をなんとかして助けなければ。
耳を澄ましながら走って逃げるが、他に泣き声は聞こえない。
炎は燃え盛り、いくら妙な力があると言っても、キイロ自身はいまいち把握していないのに、危険な中にこれ以上いる訳にも行かない。
(他に居ないでよ!)
そう願いながらキイロは雨のアーチの出来上がる方向へ走り抜けていったのだった。
気づけば、いつの間にか屋敷から遠く離れた丘の上へたどり着いていた。
屋敷はまだ炎が残り、とんでもなく被害は大きそうだ。
「他のおうちが巻き込まれないと良いのだけど」
キイロが小さく呟くと、炎に呼ばれたのか雲から雨が降り始めた。
屋敷の周りを囲むように、ざあざあと雨が降り出し、小さな火は次々に消え始めた。
「ああ、雨だ。良かった、少しは火事が収まるかも」
そして腕の中の子供を見ると、いつの間にかすやすやと眠っていた。
(良かった。無事だ)
年の頃は二歳に届かないくらいだろうか。
どこの子供か判らないが、とにかく無事ならなんとかなる。
「それより、私もどうにかしなくちゃなあ」
今更あのクソ実家には帰れないし、かといって頼る所はないし。
「どーしよう」
まずは考える必要があった。
燃え尽きた屋敷跡に慌ててたどり着いた男は、惨状を目の当たりにして声を失った。
「―――――なんという事だ」
今日は婚姻の日、願って願って待ちに待った、愛する妻を迎える事が出来る、人生最良の日になるはずだったのだ。
「なぜ、どうしてこんな事に」
絶望し膝をつきそうになる。
だが、彼の軍人としての矜持がそれを許さなかった。
「ダメだ!そん中はもうどうにもならない!」
「自殺行為だ!」
キイロが炎の中に飛び込んでいく姿を見た人々が、次々にそう叫んだが、自分たちも逃げ遅れてしまう。
「あんた、あたしたちも逃げないと!」
「しかし」
「構ってられないよ!逃げろ!」
次々に人々は屋敷から逃げ出していく。
キイロは構わず、燃え盛る炎の中へ飛び込んで行った。
屋敷の中は一層ひどい炎で、ぶわっと熱気が肺の中に入る、はずだ。
だがキイロには全く届かなかった。
(やった。やっぱりいけんじゃん)
炎で焼けおちた柱を踏みつけてあっという間に履いていたぼろ草履は一瞬で焼けた。
だが、キイロは平気だった。
まるで全身を守るかのように白い靄がキイロを包み、熱を一切近づけない。
素足で踏みつけながら炎の中、奥の間の方へ進んで行くと、小さなかすれた猫の鳴き声が聞こえた。
そこか、と声の方へ進むと、キイロは驚いた。
(猫じゃない!!!)
小さな子供が、体を丸めて泣いていたのだ。
慌てて子供を抱きかかえた。
キイロに抱きかかえられた子供は、けほっと咳きこんでしがみついてきた。
(なんでこんな所に子供が?)
嫁ぎ先に子供がいるなんて聞いてないし、そもそも大きなお屋敷だったからひょっとしたら使用人の子供かもしれない。
キイロは着物の中に子供をぐいぐい押し込んで、炎に触れないように包み込む。
「大丈夫よ。もう助かるからね」
そう言うと、キイロは、静かに息を吸った。
(ん―――――っ)
思い切り、自分の中からため込んだ空気を、体の中から押し出す様にいきんだ。
すると急に、ゴロゴロと空が鳴り始めた。
(初めて、この力に感謝するかも!)
あちこち焼け落ちて、ぼろぼろになった屋敷の中をキイロは逃げやすい場所を選んで走って逃げる。
(どこか、通れるところを)
すると、いきなり目の前に雨のアーチが現れた。
まるでここを通れと言わんばかりに、水の門が連なっている。
(うそ!こんな事できたの?!)
さすがに驚くキイロだが、いまはそれどころじゃない。
この子供をなんとかして助けなければ。
耳を澄ましながら走って逃げるが、他に泣き声は聞こえない。
炎は燃え盛り、いくら妙な力があると言っても、キイロ自身はいまいち把握していないのに、危険な中にこれ以上いる訳にも行かない。
(他に居ないでよ!)
そう願いながらキイロは雨のアーチの出来上がる方向へ走り抜けていったのだった。
気づけば、いつの間にか屋敷から遠く離れた丘の上へたどり着いていた。
屋敷はまだ炎が残り、とんでもなく被害は大きそうだ。
「他のおうちが巻き込まれないと良いのだけど」
キイロが小さく呟くと、炎に呼ばれたのか雲から雨が降り始めた。
屋敷の周りを囲むように、ざあざあと雨が降り出し、小さな火は次々に消え始めた。
「ああ、雨だ。良かった、少しは火事が収まるかも」
そして腕の中の子供を見ると、いつの間にかすやすやと眠っていた。
(良かった。無事だ)
年の頃は二歳に届かないくらいだろうか。
どこの子供か判らないが、とにかく無事ならなんとかなる。
「それより、私もどうにかしなくちゃなあ」
今更あのクソ実家には帰れないし、かといって頼る所はないし。
「どーしよう」
まずは考える必要があった。
燃え尽きた屋敷跡に慌ててたどり着いた男は、惨状を目の当たりにして声を失った。
「―――――なんという事だ」
今日は婚姻の日、願って願って待ちに待った、愛する妻を迎える事が出来る、人生最良の日になるはずだったのだ。
「なぜ、どうしてこんな事に」
絶望し膝をつきそうになる。
だが、彼の軍人としての矜持がそれを許さなかった。
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