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第二章
9・やっと見つけた
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「お前は帰って良い。私が探す」
「そうではなく、薄氷さまがお疲れなのではと」
「だからどうした」
戦場から戻ってすぐ、自身の結婚式だと思って帰ってきたら新居は火事、花嫁は行方不明、その家族は花嫁衣裳を着て乱痴気騒ぎ。
本来なら倒れてしまう所だろうが、そんな場合ではなかった。
薄氷 朧は無意識に速足で街を歩くのだが、そもそも長身で目立つ上に、銀色の長い髪、更に軍人でも上位クラスの男が歩いていれば、みな、何事かと目を見張る。
「でしたら!もう少しゆっくり歩いてください!皆怯えております!」
そう言われ始めて薄氷は足を止めた。
「……そんなにか」
「はい。ぶつからないのは流石でございますが」
瞬時に人を避けるのはいいとして、あまりに鬼気迫る表情なので人は皆驚いている。
「わかった。少しゆっくり歩こう」
そういって薄氷は、やはりそれなりの速足で進んで行く。
(もうこれは仕方がないな)
ここが限界の妥協点なのだろう。
仕方なく追いかけると、今度は薄氷がいきなり立ち止まり、部下の男は薄氷の背中に顔をぶつけた。
「グエッ」
「あれは」
「どうなさったんですか、薄氷さま」
部下に答えず薄氷はすぐさま走り出し、ある店の主人に声をかけた。
「御主人!この銀の髪飾りはどうした!」
突然軍人に話しかけられ、店主は「ひぇっ」と驚いていたが、部下がさっと前に立った。
「申し訳ない、実はある人を探しているのですが」
「―――――ああ、ひょっとして、子供をおんぶしたお姉ちゃんかい?」
店主がそう言うと、薄氷は目を見開いた。
「子供?」
「ええ、はい。二歳になる前くらいかな?弟さんをおんぶしたお姉ちゃんがね、現金がないからってこの銀の髪飾りで風車と交換してくれって。さっきのことだよ。さすがに風車だと価値が違い過ぎるから、うちで一番高いぽっぺんも一緒に渡してねえ」
子供、ということはあの子も一緒で、しかも無事なのか!
薄氷はあまりの事に全身から力が抜けそうになった。
「どこに向かったか判りますか?」
「ああ、街の中のほうへ向かって行ったね」
ひょっとして、と薄氷は気づいた。
(火事の現場へ戻ったのか!)
一晩どうしていたのかは判らないが、子供連れならきっとあの子を彼女は助けてくれたのだろう。
「主人、この髪飾りを返し、いや、いくらだ?」
「いくらって、いま値段をつけようかと飾ったまま考えていた所で」
薄氷は懐から財布を取り出すと、そのままぽいっと主人へ投げた。
「充分入っているだろう。それでこれを譲ってくれ」
そう言うと、薄氷は銀の髪飾りを懐にしまった。
財布の中身を確認した主人は「ひえぇえ!」と驚いた声をあげたが、薄氷はすでにその場を去っていた。
「ちょ……軍人さん、こりゃ大金が過ぎる……ああ、行ってしまった……」
財布の中に入っていたのは、この店の売り上げの数か月分にもなるほどの額で、主人はため息をついた。
(仕方ねえ、髪飾りの分を抜いて、あとはあの人を見つけるか、軍に届けるか)
あれだけ目立つ軍人さんなら、すぐに見つかるだろう。
「おじさん、風車頂戴!」
可愛いお客さんがやってきたので、主人は「あいよ!」と風車を回し始めた。
場所がつかめたらあとは向かえばいい。
薄氷の足は自然に早くなる。
(彼女だけでなく、あの子も一緒とは)
ひょっとしたら人違いであるかも、という考えは浮かばなかった。
火事であったというなら余計に、彼女とあの子供の力は二人を助けるだろう。
(でも彼女はなにも知らないはずなのに)
偶然、あの子を助けたというなら、どこまでも彼女は彼女らしい。
薄氷もそんな彼女だからこそ、救われたのだから。
やっと目的地の前に着いた。
火災現場なので検証が行われているが、その連絡を受けていた。
そこに立っている女性が二人いた。
彼女だ、と思い喜び近寄ろうとしたのだが、あろうことか、彼女はどこかの男に髪を引っ張られていた。
薄氷は全身が怒りに包まれ、思わず剣を抜きそうになるが、落ち着きを取り戻し、叫んだ。
「私の妻になにをする!」
「そうではなく、薄氷さまがお疲れなのではと」
「だからどうした」
戦場から戻ってすぐ、自身の結婚式だと思って帰ってきたら新居は火事、花嫁は行方不明、その家族は花嫁衣裳を着て乱痴気騒ぎ。
本来なら倒れてしまう所だろうが、そんな場合ではなかった。
薄氷 朧は無意識に速足で街を歩くのだが、そもそも長身で目立つ上に、銀色の長い髪、更に軍人でも上位クラスの男が歩いていれば、みな、何事かと目を見張る。
「でしたら!もう少しゆっくり歩いてください!皆怯えております!」
そう言われ始めて薄氷は足を止めた。
「……そんなにか」
「はい。ぶつからないのは流石でございますが」
瞬時に人を避けるのはいいとして、あまりに鬼気迫る表情なので人は皆驚いている。
「わかった。少しゆっくり歩こう」
そういって薄氷は、やはりそれなりの速足で進んで行く。
(もうこれは仕方がないな)
ここが限界の妥協点なのだろう。
仕方なく追いかけると、今度は薄氷がいきなり立ち止まり、部下の男は薄氷の背中に顔をぶつけた。
「グエッ」
「あれは」
「どうなさったんですか、薄氷さま」
部下に答えず薄氷はすぐさま走り出し、ある店の主人に声をかけた。
「御主人!この銀の髪飾りはどうした!」
突然軍人に話しかけられ、店主は「ひぇっ」と驚いていたが、部下がさっと前に立った。
「申し訳ない、実はある人を探しているのですが」
「―――――ああ、ひょっとして、子供をおんぶしたお姉ちゃんかい?」
店主がそう言うと、薄氷は目を見開いた。
「子供?」
「ええ、はい。二歳になる前くらいかな?弟さんをおんぶしたお姉ちゃんがね、現金がないからってこの銀の髪飾りで風車と交換してくれって。さっきのことだよ。さすがに風車だと価値が違い過ぎるから、うちで一番高いぽっぺんも一緒に渡してねえ」
子供、ということはあの子も一緒で、しかも無事なのか!
薄氷はあまりの事に全身から力が抜けそうになった。
「どこに向かったか判りますか?」
「ああ、街の中のほうへ向かって行ったね」
ひょっとして、と薄氷は気づいた。
(火事の現場へ戻ったのか!)
一晩どうしていたのかは判らないが、子供連れならきっとあの子を彼女は助けてくれたのだろう。
「主人、この髪飾りを返し、いや、いくらだ?」
「いくらって、いま値段をつけようかと飾ったまま考えていた所で」
薄氷は懐から財布を取り出すと、そのままぽいっと主人へ投げた。
「充分入っているだろう。それでこれを譲ってくれ」
そう言うと、薄氷は銀の髪飾りを懐にしまった。
財布の中身を確認した主人は「ひえぇえ!」と驚いた声をあげたが、薄氷はすでにその場を去っていた。
「ちょ……軍人さん、こりゃ大金が過ぎる……ああ、行ってしまった……」
財布の中に入っていたのは、この店の売り上げの数か月分にもなるほどの額で、主人はため息をついた。
(仕方ねえ、髪飾りの分を抜いて、あとはあの人を見つけるか、軍に届けるか)
あれだけ目立つ軍人さんなら、すぐに見つかるだろう。
「おじさん、風車頂戴!」
可愛いお客さんがやってきたので、主人は「あいよ!」と風車を回し始めた。
場所がつかめたらあとは向かえばいい。
薄氷の足は自然に早くなる。
(彼女だけでなく、あの子も一緒とは)
ひょっとしたら人違いであるかも、という考えは浮かばなかった。
火事であったというなら余計に、彼女とあの子供の力は二人を助けるだろう。
(でも彼女はなにも知らないはずなのに)
偶然、あの子を助けたというなら、どこまでも彼女は彼女らしい。
薄氷もそんな彼女だからこそ、救われたのだから。
やっと目的地の前に着いた。
火災現場なので検証が行われているが、その連絡を受けていた。
そこに立っている女性が二人いた。
彼女だ、と思い喜び近寄ろうとしたのだが、あろうことか、彼女はどこかの男に髪を引っ張られていた。
薄氷は全身が怒りに包まれ、思わず剣を抜きそうになるが、落ち着きを取り戻し、叫んだ。
「私の妻になにをする!」
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