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第二章
8・銀の髪飾り
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翌朝、しっかり朝食をすませてキイロは子供を連れて、梅花と共に出かけた。
「キイロ、重くない?」
「大丈夫。子守ならいつもしてたから」
実家に居た頃はなぜか関係ない子供の面倒を押し付けられていた。
義母の友人だか知り合いだかをキイロに預けては自分はその知り合いと頻繁に遊びに行っていた。
下の兄弟は全くいないが、子供の扱いは慣れている。
「本当にキイロの子供じゃないのよね?」
「もしそうなら梅花と学校に通ってるときに妊娠してるでしょ」
「そうよね。でもなんか雰囲気がどことなく、キイロに似ているのよね」
火事から逃げ出して子供をじっくり見たのだが、まるで本当にキイロの子供のように似ているのだ。
髪の色も、目の色も。顔の雰囲気まで。
多分、誰が見てもこの子供はキイロの子供か、そうでなければ年の離れた兄弟だと思うだろう。
「おまけに懐いてるからありがたいわ」
キイロの背中で、子供は大人しくおんぶされて、のんびりと前を見つめていた。
ぐずる事もなく、泣くこともなく。
親がいなくて不安じゃないのかな?と心配にもなるが、特に気にはしていないらしい。
「ま、現場に戻ればなんかわかると思うよ。ひょっとしたら親がいるかもしれないじゃない」
一晩勝手に預かったのは悪かったが、あの状態では生きているだけでも奇跡だろう。
「まずは家を確認して、それから誰か居たら話を聞いてみるしかないねえ」
話をしながら、梅花とキイロ、そしてキイロにおんぶされた子供はキイロの嫁入り先まで歩く。
梅花の家は街の外れのほうなので、街中を通りぬけていく必要がある。
まだ朝の早い時間なので店は所々しか開いていなかったが、丁度通りすがりに、子供のおもちゃを売る店が店開きした所だった。
くるくるまわる風車を子供がじっと見つめていたので、キイロは尋ねた。
「すみません、もう商売されてますか?」
「ええ、いいですよ」
「その風車、ひとつ欲しいのだけど」
「へいまいど」
そして財布を出そうとして、はっとキイロは気づく。
「……やば。財布もなにもなかった」
すっかり忘れていたが、キイロは自分のわずかな荷物を梅花の家に置いて来ていた。
梅花が尋ねた。
「あたし、出しとこうか?」
「え、うーん。えーと」
そこでキイロははっと気づく。
「この髪飾りで交換って駄目ですか?」
「へ?あんた、こりゃいいものだよ?」
「うーん、でも私には必要ないものだから」
「ええ、こっちはそりゃ構わないけど」
うーん、と唸って店主は、そうだ、と手を叩く。
「丁度いい品があるんだよ!これだ!これを一緒ならどうだい」
それは珍しい、美しいガラスの『ぽっぺん』だった。
「ええ、いいんですか?」
「いやあ、逆にこれならまだ商売で納得できるよ。それでもたりないけどね」
「ありがとうございます。ほら、風車だよ、良かったね」
子供は喜んで風車を受け取り、キイロも主人からぽっぺんを受け取った。
「ありがとうおじさん!お金じゃなくてごめんね」
「いいって事よ!こりゃいいものだからすぐ買う人が出らあ!店に並べときゃすぐ売れるさ」
「助かります。じゃあね、おじさんありがとうございました」
「いいっていいって!」
おじさんはニコニコして、キイロの髪飾りを受け取った。
「本当に良かったの?あれ、いい髪飾りだったじゃない」
「実は嫁入り道具の中に入ってたものなんだよね。だから私のじゃないの」
「嫁入りの時ならあんたのじゃん」
「なんか趣味合わないからこれはいらないわーって義母がポイっとしてたのを拾っただけだし」
「はあ、あんたってやっぱ苦労人ねえ」
それより、現場はもう少し歩く必要がある。
「じゃ、向かいますか」
「そうね。早く確認しないと」
キイロと梅花は現場へと小走りに向かった。
朝から割のいい商売が出来たと、おもちゃ屋の主人はほくほくだ。
今日は人通りも多くなりそうだし、案外この髪飾りも早く売れるかもな、と屋台の一番目立つ場所に髪飾りを置いた。
「薄氷さま、少しはお休みになられませんと」
「気にするな。眠ってなどいられないだけだ」
「しかし」
部下を振り切り、街中を速足で歩く銀髪の軍人は嫌でも人目を引いた。
「キイロ、重くない?」
「大丈夫。子守ならいつもしてたから」
実家に居た頃はなぜか関係ない子供の面倒を押し付けられていた。
義母の友人だか知り合いだかをキイロに預けては自分はその知り合いと頻繁に遊びに行っていた。
下の兄弟は全くいないが、子供の扱いは慣れている。
「本当にキイロの子供じゃないのよね?」
「もしそうなら梅花と学校に通ってるときに妊娠してるでしょ」
「そうよね。でもなんか雰囲気がどことなく、キイロに似ているのよね」
火事から逃げ出して子供をじっくり見たのだが、まるで本当にキイロの子供のように似ているのだ。
髪の色も、目の色も。顔の雰囲気まで。
多分、誰が見てもこの子供はキイロの子供か、そうでなければ年の離れた兄弟だと思うだろう。
「おまけに懐いてるからありがたいわ」
キイロの背中で、子供は大人しくおんぶされて、のんびりと前を見つめていた。
ぐずる事もなく、泣くこともなく。
親がいなくて不安じゃないのかな?と心配にもなるが、特に気にはしていないらしい。
「ま、現場に戻ればなんかわかると思うよ。ひょっとしたら親がいるかもしれないじゃない」
一晩勝手に預かったのは悪かったが、あの状態では生きているだけでも奇跡だろう。
「まずは家を確認して、それから誰か居たら話を聞いてみるしかないねえ」
話をしながら、梅花とキイロ、そしてキイロにおんぶされた子供はキイロの嫁入り先まで歩く。
梅花の家は街の外れのほうなので、街中を通りぬけていく必要がある。
まだ朝の早い時間なので店は所々しか開いていなかったが、丁度通りすがりに、子供のおもちゃを売る店が店開きした所だった。
くるくるまわる風車を子供がじっと見つめていたので、キイロは尋ねた。
「すみません、もう商売されてますか?」
「ええ、いいですよ」
「その風車、ひとつ欲しいのだけど」
「へいまいど」
そして財布を出そうとして、はっとキイロは気づく。
「……やば。財布もなにもなかった」
すっかり忘れていたが、キイロは自分のわずかな荷物を梅花の家に置いて来ていた。
梅花が尋ねた。
「あたし、出しとこうか?」
「え、うーん。えーと」
そこでキイロははっと気づく。
「この髪飾りで交換って駄目ですか?」
「へ?あんた、こりゃいいものだよ?」
「うーん、でも私には必要ないものだから」
「ええ、こっちはそりゃ構わないけど」
うーん、と唸って店主は、そうだ、と手を叩く。
「丁度いい品があるんだよ!これだ!これを一緒ならどうだい」
それは珍しい、美しいガラスの『ぽっぺん』だった。
「ええ、いいんですか?」
「いやあ、逆にこれならまだ商売で納得できるよ。それでもたりないけどね」
「ありがとうございます。ほら、風車だよ、良かったね」
子供は喜んで風車を受け取り、キイロも主人からぽっぺんを受け取った。
「ありがとうおじさん!お金じゃなくてごめんね」
「いいって事よ!こりゃいいものだからすぐ買う人が出らあ!店に並べときゃすぐ売れるさ」
「助かります。じゃあね、おじさんありがとうございました」
「いいっていいって!」
おじさんはニコニコして、キイロの髪飾りを受け取った。
「本当に良かったの?あれ、いい髪飾りだったじゃない」
「実は嫁入り道具の中に入ってたものなんだよね。だから私のじゃないの」
「嫁入りの時ならあんたのじゃん」
「なんか趣味合わないからこれはいらないわーって義母がポイっとしてたのを拾っただけだし」
「はあ、あんたってやっぱ苦労人ねえ」
それより、現場はもう少し歩く必要がある。
「じゃ、向かいますか」
「そうね。早く確認しないと」
キイロと梅花は現場へと小走りに向かった。
朝から割のいい商売が出来たと、おもちゃ屋の主人はほくほくだ。
今日は人通りも多くなりそうだし、案外この髪飾りも早く売れるかもな、と屋台の一番目立つ場所に髪飾りを置いた。
「薄氷さま、少しはお休みになられませんと」
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部下を振り切り、街中を速足で歩く銀髪の軍人は嫌でも人目を引いた。
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