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第二章
12・立派な馬車
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馬車を目の前にしたキイロは一瞬立ち止まった。
「どうしました?」
「いえあの」
「ああ、失礼、子供を抱えたままでは乗りにくいですね」
「いえ、大丈夫です」
慌ててキイロは馬車へ乗り込む。
あまりに立派な馬車で驚いたのだ。
薄氷はキイロの手をとって乗るまでサポートしてくれた。
「では、扉を閉めますね」
「え?あの」
「私は別に馬で向かいます。行き先は判っていますから」
言うと薄氷は扉を閉めた。
馬車は動き出し、軽やかに進んで行く。
梅花は馬車を見て、驚いた。
「立派な馬車ねえ、さすが薄氷家だけあるわ」
「梅花が立派って言うなんて、よっぽどなんだ」
「よっぽどよ。キイロ、あなた本当に良かったわ。薄氷家なら、何の心配もないもの」
キイロは首を傾げた。
梅花がなぜこんなに喜んでいるか判らないからだ。
「ねえ、薄氷家って、一体なに?ご立派な家なの?」
キイロの問いに、梅花は一瞬驚いて、そっか、と苦笑した。
「そういえばキイロは社交界も行ってないものね」
意地悪な義母はキイロの存在を全く消し去っていたので、キイロに招待がくることもなかったし、社交界なんて参加したことすらない。
「私も、家が没落する前にちょっといったことがあるくらいだけど。薄氷家といえば、宮家との繋がりもあるやんごとないお家柄よ」
「そんなに」
「ええ。この国の宮家がいくつかあって、そのなかでもちょっと変わったおうちがあるでしょう?」
キイロは頷く。
この国は神の末裔が国の代表になっていて、その神の末裔を守るものも、また神の能力を持ったものであった。
「その中のいくつかのお家は、軍でも強力な力を持っていて、そのひとつが薄氷家ね。確か陸軍、海軍、ともに将校がいらっしゃって、かなりの地位にあるはず。あの方も、多分、強いお立場なのだと思うわ」
さすがに軍の階級までは判らないの、と梅花が言うが、そんなの、キイロも全く判らない。
「それで軍服、軍人だったのね」
「ええ。それに薄氷家は親類も多くて、中にはご商売で成功されているおうちもあったはず。かなりの財産を抱えているとお話に聞いたことがあるの」
「それでなんか立派なお屋敷っぽかったのね」
「あなたの為に用意したっておっしゃってたわね」
「驚いた。まさか、ご実家じゃなかったなんて思わなくて」
到着したら火事になっていたので、どのくらいかは判らないが、焼け跡をちらっと見ただけでも相当な規模だったことは判る。
「でも本当にそうなのかな?私がそんな場所へ嫁入りするなんて考えられないのだけど」
もしそうだとしても、義母や義兄が邪魔しそうな気がする。
なにせ、キイロの事が気に入らなくて仕方がないのだから。
「ひょっとして、だから内緒にしてらしたんじゃない?」
「だから?」
「そう。実は薄氷さまは、あなたのご実家の様子をよくご存じだったから、内緒か、もしくは誤魔化して嫁入りさせたんじゃないかしら?だったら、あなたがどこに嫁入りするのか知らなかったのも、納得がいくの」
「なるほど」
せめて名前くらいは教えてくれると思っていたのに、それすら「行けば判る!」とか言っていたけど、義母らも知らなかった可能性があるのか、とキイロは呆れた。
(本当に私のことなんかどーでもいいんだなあ)
今更だけど、いいかげんな家族だなと思った。
「でも、薄氷様って素敵な方じゃないの。おまけにキイロ、あなたの事をとっても好きそうに見えるし!」
「そ、そう?」
キイロからしたら、さっき初めて会ったばかりの人なのに、そんな事より驚きのほうが大きい。
「あんなに美しい男性、見たことがないわ。それにあなたを守ってたし。なんだかもう安心ね」
「そんなの……判んないわよ」
人が外と内でどんなに顔が違うのか、キイロはよく知っている。
その事は、梅花だって家が没落してよく判っていた。
「どうしました?」
「いえあの」
「ああ、失礼、子供を抱えたままでは乗りにくいですね」
「いえ、大丈夫です」
慌ててキイロは馬車へ乗り込む。
あまりに立派な馬車で驚いたのだ。
薄氷はキイロの手をとって乗るまでサポートしてくれた。
「では、扉を閉めますね」
「え?あの」
「私は別に馬で向かいます。行き先は判っていますから」
言うと薄氷は扉を閉めた。
馬車は動き出し、軽やかに進んで行く。
梅花は馬車を見て、驚いた。
「立派な馬車ねえ、さすが薄氷家だけあるわ」
「梅花が立派って言うなんて、よっぽどなんだ」
「よっぽどよ。キイロ、あなた本当に良かったわ。薄氷家なら、何の心配もないもの」
キイロは首を傾げた。
梅花がなぜこんなに喜んでいるか判らないからだ。
「ねえ、薄氷家って、一体なに?ご立派な家なの?」
キイロの問いに、梅花は一瞬驚いて、そっか、と苦笑した。
「そういえばキイロは社交界も行ってないものね」
意地悪な義母はキイロの存在を全く消し去っていたので、キイロに招待がくることもなかったし、社交界なんて参加したことすらない。
「私も、家が没落する前にちょっといったことがあるくらいだけど。薄氷家といえば、宮家との繋がりもあるやんごとないお家柄よ」
「そんなに」
「ええ。この国の宮家がいくつかあって、そのなかでもちょっと変わったおうちがあるでしょう?」
キイロは頷く。
この国は神の末裔が国の代表になっていて、その神の末裔を守るものも、また神の能力を持ったものであった。
「その中のいくつかのお家は、軍でも強力な力を持っていて、そのひとつが薄氷家ね。確か陸軍、海軍、ともに将校がいらっしゃって、かなりの地位にあるはず。あの方も、多分、強いお立場なのだと思うわ」
さすがに軍の階級までは判らないの、と梅花が言うが、そんなの、キイロも全く判らない。
「それで軍服、軍人だったのね」
「ええ。それに薄氷家は親類も多くて、中にはご商売で成功されているおうちもあったはず。かなりの財産を抱えているとお話に聞いたことがあるの」
「それでなんか立派なお屋敷っぽかったのね」
「あなたの為に用意したっておっしゃってたわね」
「驚いた。まさか、ご実家じゃなかったなんて思わなくて」
到着したら火事になっていたので、どのくらいかは判らないが、焼け跡をちらっと見ただけでも相当な規模だったことは判る。
「でも本当にそうなのかな?私がそんな場所へ嫁入りするなんて考えられないのだけど」
もしそうだとしても、義母や義兄が邪魔しそうな気がする。
なにせ、キイロの事が気に入らなくて仕方がないのだから。
「ひょっとして、だから内緒にしてらしたんじゃない?」
「だから?」
「そう。実は薄氷さまは、あなたのご実家の様子をよくご存じだったから、内緒か、もしくは誤魔化して嫁入りさせたんじゃないかしら?だったら、あなたがどこに嫁入りするのか知らなかったのも、納得がいくの」
「なるほど」
せめて名前くらいは教えてくれると思っていたのに、それすら「行けば判る!」とか言っていたけど、義母らも知らなかった可能性があるのか、とキイロは呆れた。
(本当に私のことなんかどーでもいいんだなあ)
今更だけど、いいかげんな家族だなと思った。
「でも、薄氷様って素敵な方じゃないの。おまけにキイロ、あなたの事をとっても好きそうに見えるし!」
「そ、そう?」
キイロからしたら、さっき初めて会ったばかりの人なのに、そんな事より驚きのほうが大きい。
「あんなに美しい男性、見たことがないわ。それにあなたを守ってたし。なんだかもう安心ね」
「そんなの……判んないわよ」
人が外と内でどんなに顔が違うのか、キイロはよく知っている。
その事は、梅花だって家が没落してよく判っていた。
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