わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います

あきた

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第三章

20・本当の名前

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(おかしいな?おかしいよ絶対に)

 でも間違いなくこの子はずっと抱えていたあの子に違いないので、不思議に思いながらキイロは子供を抱えなおした。

 風呂を終え、着物を着せかえて貰い、案内された部屋で待っていると、女中らが「こちらへどうぞ」と呼ぶので頷き従ってついていった。

 長い長い、一体どこまで続くんだ?という廊下を歩き進んでいくと、やがて大きな襖のならんだ部屋の前に案内された。

「こちらです。どうぞ」

 そういわれ、真ん中の襖がすらっと開くと、そこはお城かと思うほど大きな大きな広間だった。

(ひっろ!)

 驚くキイロの正面、けっこうな奥に、誰かが座って待っていた。
 女中が「どうぞ」と進めるままに、頷きキイロは座っている人に近づいていった。
 すると、そこに座っているのは美しい、しかしどこか冷たい瞳の女性だった。

「薄氷の当主であらせられる」

 近くにいたおつきの人がそう言い、キイロはその人の前で正座し頭を下げた。

蘇芳すおう、キイロ、と申します」
八塩やしお梅花うめかです」

 すると、薄氷うすらいの当主は言った。

「嘘である」

 嘘?
 嘘とは一体、何のことだろうか。
 当主が、ということだろうか?
 首を傾げるキイロをじっと見つめ、当主は言った。

「名を名乗られよ」

 さっき言ったのに、聞き取れなかったのかな?
 とキイロは思い、もう一度自己紹介した。

蘇芳すおうキイロです」
「ふうん。やはり嘘である」

 嘘とは一体?
 訳がわからず困惑するキイロに、当主の女性はぐいっと近づいて来た。
 美しく補足、しかし冷たい指先をキイロの顎に当てると「ふうん」と頷く。

「成程、名を縛られておったのか。これは確かに気づかんだろうな」

 何を言われているのか判らず困惑するが、当主は元の位置に戻る。

「ようわかった。我が息子がなぜかのように執着するのか、またその子がなぜ大人しいのかも。これなら確かに、お前を望んでも仕方のないこと」
「?」
「まずはそうじゃの、名前の縛りをどけてやらんと。しかしそうなるとその子がどこまで大人しくしてくれるかもわからんし」

 ぶつぶつと当主はなにかを言っているのだが、キイロにはさっぱりわからない。

「えと、あの」
「もうすぐおぼろも帰って来るであろうし、その際に話をよくするしかあるまいの」

 なにを言われているんだ。
 というか、いまこの人、薄氷の事を『我が息子』って言ってた?
 こんな若いのに?っていうか、息子?本当に?

「っていうことは、もしかしてお義母さま、なのでしょうか」

 キイロが尋ねると、当主は一瞬キイロをじっと見つめたが、しばらく空を見つめ、うーん、と考えた。

「お義母さま……なかなかよい響きじゃの」

 なんだかちょっと感性が面白いのかな?とキイロが思っていると、さっとおつきの人が近づく。
 ぼそぼそ、となにか当主に囁くと、当主は頷く。

「朧が戻ったようである」

 すると、襖が再び開き、ずかずかと男性が入って来た。
 朧だ。

「お待たせいたしました。お時間をとってしまい、申し訳ありません」

 そういって薄氷朧は深々とキイロに頭を下げた。

「おや、この母には挨拶はなしかえ」
「私はまず、私の屋敷のほうへと伝えていたはずですが」
「許せ。気になって仕方なかったのじゃ。それに、うちのほうがなにかと守りも強い」

 そういってなぜか、キイロの抱えている子供に目をやると、朧は少し驚いたようだった。

「これは」
「うちの影響じゃの」
「そうですか。やはり間違いではなかったのか」

 はあ、と肩を落とす朧に、キイロはなにがおこっているのか判らなかった。

「すみません、一体昨日から、なにがおこっていて、なにに巻き込まれているのでしょうか」

 キイロが尋ねると、当主はなぜか楽し気に笑った。

「むしろ巻き込んでおるのは主のほうじゃの。しかし、それも致し方なきこと」

 巻き込んでいるのが私?とキイロは首を傾げた。

「そうじゃの。まずは、そこのお嬢さんの事から安心させたほうが良いじゃろう。八塩のお嬢さん」
「は、はい」
「八塩のお家は、いまからすぐ再興の手続きに入る。薄氷のはからいである」

 当主の言葉に、梅花とキイロは顔を見合わせた。
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