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第四章
28・その笑顔
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「しかし、あなたが戸惑うのも無理はありません。私たちはお互いを知らなさすぎますから」
「は、い」
そこはキイロも思い切り頷ける所だった。
なにせ自分たちは、というよりキイロは目の前の夫の事をなにひとつ知らない。
「ですから、あなたが私に対して疑問に思う事はなんでもお答えします」
「では、お尋ねしてもよろしいでしょうか」
「どうぞ」
にこにこと朧は頷いた。
「この子を狙っているのは一体誰なんでしょうか」
キイロはずっと甘えているこの子供の事が気になって仕方がなかった。
「屋敷が火事になったのも、さっきなぜかこの子を奪いにきたのも」
「判りやすく言うなら、我々の敵、というか、敵対している連中、とでも説明しましょう。あちらは警察組織に顔が聞く。ですから、警察を使ったんでしょう」
「でも警察が敵なんて」
「あってはならない事なんですがね。あちらのほうが組織が強い。そして残念な事に、我々の一族でも、あちらに迎合する連中もいる。多分今回はそういった誰かの手引きでしょう。いま、誰がやってのか調べさせています。今後は二度とふざけた真似はさせません」
「そうですか……ならば良いのですが」
「不安ですか?」
「だって、警察が人さらいなんてするとは思わないので」
「そうですね、普通は逆です。だが、連中は手段を選ばないので」
「これからは大丈夫でしょうか」
「その為の手段をいくつも取っていますよ」
そんな風に話していると、誰かが近づく気配がした。
「朧様」
「どうした」
「伯爵家から使いのものが」
「ああ、やっと許可が通ったか」
そうして朧は包みを受け取り、中を開けた。
「よし、これであなたの身の安全は担保されます」
「え?」
「失礼ながら、あなたはいまから、蘇芳家の娘ではなく、一旦、藍銅家の娘になります」
「え?え?え?」
「といっても形式だけのものですから、近いうちに名字はまた変わりますが」
「どういうことですか?」
戸惑うキイロに朧は机の上に書類を並べた。
美しい透かしの入った、豪華な書類でキイロは目を奪われた。
「これはあなたの身を、蘇芳家から藍銅家へ養子に出すという書類です。そしてこっちが、その願いが通ったという証明です。あなたはすでに、藍銅家の保護下に入りました」
「保護下……」
「藍銅伯爵家の名前は、聞いたことはありませんか?」
「なんとなく、名前は存じております」
宮家の中でもかなり大きな、陛下のお近くにも寄れるという家だったはずだ。
「そこがあなたを養子として認めてくれました」
「―――――えぇええ?」
「あなたを守るにはこれが一番手っ取り早いし、あの方なら大丈夫と思いましたが、大丈夫でした。あとは他の許可がありましたので時間がかかりましたが、おかげで無事、あなたは藍銅の娘です。二度と、元の家族に関わる必要もありません」
「は、あ」
「でもすぐに私の苗字に変わりますよ。ですからあちらも許可してくれましたが、あの方は一度でも自分の身内に入れたものを、決して見捨てはしませんから」
よくわからないが、キイロの味方になってくれたらしい。
「なんだかご迷惑ばかりおかけして」
「何を言うんです。全て私の不甲斐なさです。全てこんな事、起こる前に止めておくべきでした。見立てが甘かったのです」
朧はそう言うが、いきなり放火?されてそれを予測するのは不可能じゃないのかな、とキイロは思った。
「なんだかとんでもない、結婚式でしたね」
苦笑するキイロに朧は初めて、子供っぽい顔で言った。
「何を言うんです。こうなったら絶対に、もっと素晴らしい式にしないと気が済まない!なにがあっても長期休暇をもぎ取ります」
むくれる朧が、ちょっと可愛いな、と思ったキイロだった。
「その笑顔です」
「え?」
「その笑顔を、私は好きになったんです」
笑ってたかな?と困って首を傾げると、朧はなぜかにこにこと微笑んだ。
「この先ずっと、あなたをその笑顔にしてみせますね」
朧が言って、キイロはまるで夢のようだ、と思った。
「は、い」
そこはキイロも思い切り頷ける所だった。
なにせ自分たちは、というよりキイロは目の前の夫の事をなにひとつ知らない。
「ですから、あなたが私に対して疑問に思う事はなんでもお答えします」
「では、お尋ねしてもよろしいでしょうか」
「どうぞ」
にこにこと朧は頷いた。
「この子を狙っているのは一体誰なんでしょうか」
キイロはずっと甘えているこの子供の事が気になって仕方がなかった。
「屋敷が火事になったのも、さっきなぜかこの子を奪いにきたのも」
「判りやすく言うなら、我々の敵、というか、敵対している連中、とでも説明しましょう。あちらは警察組織に顔が聞く。ですから、警察を使ったんでしょう」
「でも警察が敵なんて」
「あってはならない事なんですがね。あちらのほうが組織が強い。そして残念な事に、我々の一族でも、あちらに迎合する連中もいる。多分今回はそういった誰かの手引きでしょう。いま、誰がやってのか調べさせています。今後は二度とふざけた真似はさせません」
「そうですか……ならば良いのですが」
「不安ですか?」
「だって、警察が人さらいなんてするとは思わないので」
「そうですね、普通は逆です。だが、連中は手段を選ばないので」
「これからは大丈夫でしょうか」
「その為の手段をいくつも取っていますよ」
そんな風に話していると、誰かが近づく気配がした。
「朧様」
「どうした」
「伯爵家から使いのものが」
「ああ、やっと許可が通ったか」
そうして朧は包みを受け取り、中を開けた。
「よし、これであなたの身の安全は担保されます」
「え?」
「失礼ながら、あなたはいまから、蘇芳家の娘ではなく、一旦、藍銅家の娘になります」
「え?え?え?」
「といっても形式だけのものですから、近いうちに名字はまた変わりますが」
「どういうことですか?」
戸惑うキイロに朧は机の上に書類を並べた。
美しい透かしの入った、豪華な書類でキイロは目を奪われた。
「これはあなたの身を、蘇芳家から藍銅家へ養子に出すという書類です。そしてこっちが、その願いが通ったという証明です。あなたはすでに、藍銅家の保護下に入りました」
「保護下……」
「藍銅伯爵家の名前は、聞いたことはありませんか?」
「なんとなく、名前は存じております」
宮家の中でもかなり大きな、陛下のお近くにも寄れるという家だったはずだ。
「そこがあなたを養子として認めてくれました」
「―――――えぇええ?」
「あなたを守るにはこれが一番手っ取り早いし、あの方なら大丈夫と思いましたが、大丈夫でした。あとは他の許可がありましたので時間がかかりましたが、おかげで無事、あなたは藍銅の娘です。二度と、元の家族に関わる必要もありません」
「は、あ」
「でもすぐに私の苗字に変わりますよ。ですからあちらも許可してくれましたが、あの方は一度でも自分の身内に入れたものを、決して見捨てはしませんから」
よくわからないが、キイロの味方になってくれたらしい。
「なんだかご迷惑ばかりおかけして」
「何を言うんです。全て私の不甲斐なさです。全てこんな事、起こる前に止めておくべきでした。見立てが甘かったのです」
朧はそう言うが、いきなり放火?されてそれを予測するのは不可能じゃないのかな、とキイロは思った。
「なんだかとんでもない、結婚式でしたね」
苦笑するキイロに朧は初めて、子供っぽい顔で言った。
「何を言うんです。こうなったら絶対に、もっと素晴らしい式にしないと気が済まない!なにがあっても長期休暇をもぎ取ります」
むくれる朧が、ちょっと可愛いな、と思ったキイロだった。
「その笑顔です」
「え?」
「その笑顔を、私は好きになったんです」
笑ってたかな?と困って首を傾げると、朧はなぜかにこにこと微笑んだ。
「この先ずっと、あなたをその笑顔にしてみせますね」
朧が言って、キイロはまるで夢のようだ、と思った。
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