わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います

あきた

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第七章

46・麒麟館へ

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「この位の事で幸福だなんて。あなたはもっと幸せにならなきゃ」

 すると藍銅らんどう伯爵が、指を鳴らした。

「そうだ、そういえば今日、麒麟きりん館で催しがあったね。おぼろ、招待状が来ていただろう?」
「ええ。でもわたしは」
「丁度いい。今日ならそこまで客層も悪くない。わたしも行くつもりは無かったが、どうせなら娘を見せてやりたいね」

 朧は一瞬考えたが、「そうですね」と頷く。

「確かに今日なら、身内くらいしかいませんね」
「そうだとも。どうせ青白君の仕事だろう?なんならこのままちょっと顔を出してみようじゃないか」

 楽しそうな藍銅伯爵に、朧は暫く考えて、「ええ」と頷く。

「われも!われもいくのじゃ!」
「勿論です。一緒に行きましょう」
「そうじゃ!」

 朧の言葉に、外に出たのがよっぽど楽しいのかりんが言った。
 朧は一瞬、言いかけたが、藍銅伯爵が目配せして、頷いてなにも言わなかった。

「麒麟館ってあの麒麟館ですか?」

 梅花が聞くので藍銅伯爵は笑った。

「麒麟館はひとつしか知らないね」
「麒麟館……」

 キイロも聞いたことはある。
 政府が帝の威光の為に立てたという迎賓館だ。

(学年が上のお姉さまが呼ばれたことはあったっけ)

 外国からのお客様の為に、ダンスを習ったお姉さまがたが呼ばれたり、良家の子女の方が行くのは知っていたが。

(え、そんなに気楽に行けるものなの?)

「幸い、今日は身内だけのパーティーのはず。そんなに肩肘張る必要もない。わたしと朧の連れなら問題もない」

 朧は頷く。

「そうでしょうね。わたしも是非、あなたを皆に紹介したい」
「え、でも」

 いきなりそんな事を言われても、と思ったが梅果が言った。

「凄い!私も一度、お父様のお仕事に無理やりついていった時しか入ったことはないわ!」
「そんなに素敵なの?」
「勿論よ!ね、キイロ、行きましょう!」

 目を輝かせる梅花に、キイロは勢いに飲まれてつい、頷いてしまった。

 それから皆で車を使い、麒麟館へと到着した。
 次々に麒麟館の敷地内へ人々が入っていく。
 車から降りる人はみんな良い家の出身らしく、上品な格好をしていた。

「本当に今日は質素なのね。私、ちょっと心配したけどそうでもなかったわ」
「質素?」

 だれも皆綺麗な格好をしていて、このままデパートや観劇に出かけてもちっとも見劣りしないくらいなのに。
 すると梅花が言った。

「麒麟館は舞踏会が開かれるのよ。その時は殿方は燕尾服、女性はドレスが基本だもの。それに比べたら全然」
「ドレス……」

 自分には関係のない世界の話だなあ、と思っていると朧が言った。

「あなたのドレスも、時期を見て作りましょうね」
「え?」
「いずれ正式に紹介する時には必要になるでしょうけど、急ぎではありませんし」
「ドレス?紹介?」

「ええ。でも急ぎではありませんよ。いろんな場所で、いろんなドレスを見て、それから探したら良いのですから」
 ぽかんとキイロは驚いて口を開けてしまう。

(ドレス、舞踏会、って私が?)

 自分が出るのは全く想像できないが、朧が出るのは安易に想像できた。

(ということは、妻が私なら私も、ってことになるのかな?)

 うーん、とキイロは考えて首を傾げる。
 朧がキイロの肩を抱いた。

「今日は正式なお披露目ではありませんので、名乗る必要はありませんよ。静かに頷いていれば結構です」
「は、はい」

 初めて来る場所なので、その対応で良いのはありがたい。

「わしは名乗るぞ!」

 ふんす!といばるりんに朧は「どうぞ」と笑った。

「ただし、おうりゅうなどと言ってはいけませんよ。薄氷うすらい、とお名乗り下さい」
「うすらい、りん、か」
「ええ。今だけで構いませんから。お願いできますか」
「しかたない、なっとくする」

 うなづくりんに、キイロはちょっと笑った。


「さあ、中へ入りましょう。あの店が気に入ったのならきっとここも気に入ると思います」

 朧に手を引かれ、キイロは麒麟館の中へ案内された。
 両脇に立つ給仕の男性が頭を下げ、大きな両開きの扉を通り過ぎたその時、目に飛び込んできたのは大理石で作られた美しいホールだった。
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