わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います

あきた

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第九章

61・薄氷家と潤朱家

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 舛花ますはなが部屋に入って来て、頭を下げた。

潤朱うるしゅ家の方々にはご機嫌麗しく」
「面倒だからそういうのは良い。何があった」
「はい。先ほどこちらの屋敷に、おぼろ様から抜け出した『呪い』が入り込みました」

 舛花の言葉に、思の兄は、目を見開いた。

「それは……本当か?」
「はい。朧様を撃った呪いが治療で引き出され、蛇の形となって逃げました」

 呪いが目的を果たせなかった場合、その呪いは主のもとへ戻る。

「わが家へ戻った、ということは」
「はい。潤朱のどなたかと」
「……参ったな」

 思の兄は頭を抱えた。
 多分に妹がやってしまった可能性が高い。

「ちょっと待ってくれ。さっき、蛇、と言ったな?」
「ええ、そうですが。真っ黒な蛇に変わったものを追いかけてこちらの屋敷へ」

 おかしい、と思の兄は考える。
 妹ならそんな危険な呪いは作るはずがない。
 なにせ、どんなに意地を張っても朧を好きな事に変わりはないはずだ。
 だとしたら犯人は。

(叔父上、か)

 黒い蛇、なんて禍々しいものを使うのはあの人しかいない。

(絶対に見つからない自信があったな。自信家のあのかたらしい)

「なにか思い当たる節は」
「ありすぎて迷っている所だな。ひょっとして橡局長は問題を起こしたか?」

 舛花の顔色がさっと変わり、なるほど、と納得した。

「わかった。先に言っておくがわたし自身は、朧をというより龍の一族を敵にまわすつもりはない。命が大事なんでね」
「しかし、叔父上はそうではない」

 なんだ、あたりはつけたのか、と舛花を見て頬を緩ませた。

「朧の部下は優秀だ。うちの身内が全員そうなら、こっちも気楽でいられるんだが」

 さあ、と思の兄は腕を伸ばした。

「一緒に父上に対策を練って貰おう。早くしないと我々の一族も巻き込まれる。叔父上の野心はわからんでもないが、だからといって一族を滅ぼすわけにはいかないからな」
「わかりました」

 潤朱の兄弟と言えば、なかなかに優秀と聞いていたが、これは確かに安泰だろう。

「舛花、わたしも朧とはずっと友人でいたいんだ。少なくとも、友人としてできることは協力するよ」
「はっつ」

 これで潤朱のほうは足止めができる。
 朧の身の安全は、とりあえずわずかでも確保できて舛花はほっとした。




 薄氷うすらいの屋敷に戻ったキイロたちは、やっと落ち着いて食事をとることになった。
 しかし、朧は体調が戻らないので部屋でキイロと一緒にとることになった。

「朧様、おかげんはいかがですか?」
「ああ、問題ないよ」

 そういってキイロが運んで来た食事を、朧はおいしそうに食べていた。

「それよりあなたこそ、大丈夫ですか?」
「全然平気です!このくらいなんてことありません!」

 朧が目を覚ますまで、殆ど寝ていなかったはずなのだが、キイロはそう言って笑う。

「朧様が心配でしたから。おかげんが良いのをみると安心して元気が出ます!」
「それは良かった」

 そう笑うが、やっぱりちょっと疲れは出ているように見える。

「キイロ、あなたちょっと休んだほうがいいわ。お世話は……」

 梅花の言葉に、朧が頷く。

「世話はいくらでも家のものがいますから」
「でも」
「あなたがゆっくり休むことが、一番安心するのです。この屋敷は母もいますし、なにか起こる事があったとしても、万全ですから」

 何度か心配げに朧を見つめたが、キイロは頷いた。

「わかりました。では、お休みさせていただきます」
「ええ。あなたもゆっくり休んで。わたしももう、薬を飲んだら寝ますから」
「わかりました。梅花、りんちゃんをよろしくね」
「うん、心配しないで。それにどうせ、すぐそっちに戻るから」

 梅花とキイロは同じ部屋で過ごしていたので、そう言われてやっとキイロは安心して頷いた。

「では朧様、おさきに失礼いたします」
「うん。どうもありがとう」

 キイロが部屋を出ると、すぐに朧のおつきがやってきて、あれこれ世話を焼き始めた。
 まだ慣れないキイロが、大丈夫です、とか、自分で、とか言っている声が聞こえて、朧はつい笑った。
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