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第十章
66・呪いを持って来た兄
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キイロの兄、朽葉は上司の上司である橡に命令され、薄氷家へやってきた。
(ったく、なんで俺がこんな場所に)
正直居心地が悪すぎる。
他に誰かいたら良かったのに、なぜ自分がこんな場所にやられたのか。
理由はたったひとつ。
義妹の嫁ぎ先が、まさかの薄氷家だからだった。
実の母とキイロの父が再婚したことで、キイロの兄、朽葉は出世の糸口がつかめたのだが、あろうことが実の母がキイロを痛めつけた。
いや、元々昔からいびり倒していた。
こっちはそんな事、どうでもよかったし、面倒でしかなかった。
なんとか学校に入れてもらい、軍へ入り、立場も手に入れたというのに、その出世の殆どが、薄氷家の指図だった。
ところが、蘇芳家のしうちが薄氷家にバレた。
当然、なにもかも立場はなくなった。
これまで順調だと思って来た出世街道は、義弟の実家の後ろ盾あってのものでしかなく、その怒りをかってしまったのなら、当然今後はありはしない。
そんな時、橡局長からの打診だ。
なんでもやる、と当然いうに決まってる。
(どうせ、薄氷家との関りなんか、もたせてはもらえないだろう)
あれから薄氷家のものがやってきて、本来ならキイロの嫁入り道具である数々の調度品を全て持ち去った。
あたしのよぉお、と叫ぶ母に対し、薄氷のものはみな呆れていたことだろう。
実際、説明しかうけていない朽葉ですら、話だけで穴に埋まってしまいたいほど恥ずかしかった。
昔は母の行動を、立派なものだと思っていたがいざ自分が大人になると、どんなに醜悪な手段を使って来たのか想像するだけでおぞましい。
だが、いまや手段は選べない。
いまの朽葉に出来るのは、橡局長の命令を素直に実行することだけだ。
(なんとか軍には居なければ)
いまのままでは義父の出世どころか、所属も難しいだろうし自分だって立場がない。
(……くそう)
とにかく、言われたことだけを無事実行しなければ。
朽葉は決心して、朧が出てくるのを待った。
「待ったか?」
そういって音もなく朧が入って来た。
「あ、いえ、あの」
「余計な挨拶はいらん。座れ」
「あ、はい」
朽葉はややあっけにとられた。
確かに朧は薄氷の一族で立場も朽葉とは比べ物にならないが、こんなに尊大な態度をとるような男ではなかった気がするが。
(多分、キイロにいろいろ聞いているのだろう)
少なくとも、よい噂を聞いていないのならこの態度もわかる。
だが、いまはそのほうが良いのかもしれない。
「まずなぜここに来た?」
「それは、その」
やばい、多分なにか朧は怒っているように見える。
なにかした覚えはないが、これまでの事を考えると、義妹に対しての怒りだろう。
「なにかわれに用事があるん……では?」
「あ、ええ、そうです、あの」
そういって朽葉は持って来た風呂敷包みをほどく。
「こちらをお届けするように、橡局長から預かってまいりました」
「ほう、」
そういって黒塗りの箱を開ける。
すると、なかからいきなりなにからどっと出て来た。
「えっ」
ぶわっと溢れたのは黒い蛇で、にゅるにゅると何十匹もの塊が箱からはみ出た。
(なんで蛇が?)
驚き後ずさる。
箱の中に入っていたにしてはやけに多すぎる蛇に、朽葉はなにがおこっているのかわからず慌てた。
「え?どうして、なぜ蛇が?」
これは嫌がらせで押し付けられたのだろうか、くそう、俺をこの際とことん貶める気なのか!
朽葉が動揺していると、蛇は次々に朧へ牙をむき、とびかかろうとした。
「うっとおしい」
そういって朧が手で蛇を払いのけると、ばちっと床に蛇が叩きつけられる。
「ああもう、しょうもない呪いじゃのう」
そう言うと、朽葉の目の前の朧は、ふっと息を吐いた。
すると、蛇は次々に倒れ、足元にどろどろに溶けていく。
「これは一体……?!」
驚く朽葉に、朧はため息をつく。
「おい、呪いが壊れたぞ。もう出てきてええ」
そう言うと、奥からもう一人の朧が現れ、朽葉は目を丸くした。
(ったく、なんで俺がこんな場所に)
正直居心地が悪すぎる。
他に誰かいたら良かったのに、なぜ自分がこんな場所にやられたのか。
理由はたったひとつ。
義妹の嫁ぎ先が、まさかの薄氷家だからだった。
実の母とキイロの父が再婚したことで、キイロの兄、朽葉は出世の糸口がつかめたのだが、あろうことが実の母がキイロを痛めつけた。
いや、元々昔からいびり倒していた。
こっちはそんな事、どうでもよかったし、面倒でしかなかった。
なんとか学校に入れてもらい、軍へ入り、立場も手に入れたというのに、その出世の殆どが、薄氷家の指図だった。
ところが、蘇芳家のしうちが薄氷家にバレた。
当然、なにもかも立場はなくなった。
これまで順調だと思って来た出世街道は、義弟の実家の後ろ盾あってのものでしかなく、その怒りをかってしまったのなら、当然今後はありはしない。
そんな時、橡局長からの打診だ。
なんでもやる、と当然いうに決まってる。
(どうせ、薄氷家との関りなんか、もたせてはもらえないだろう)
あれから薄氷家のものがやってきて、本来ならキイロの嫁入り道具である数々の調度品を全て持ち去った。
あたしのよぉお、と叫ぶ母に対し、薄氷のものはみな呆れていたことだろう。
実際、説明しかうけていない朽葉ですら、話だけで穴に埋まってしまいたいほど恥ずかしかった。
昔は母の行動を、立派なものだと思っていたがいざ自分が大人になると、どんなに醜悪な手段を使って来たのか想像するだけでおぞましい。
だが、いまや手段は選べない。
いまの朽葉に出来るのは、橡局長の命令を素直に実行することだけだ。
(なんとか軍には居なければ)
いまのままでは義父の出世どころか、所属も難しいだろうし自分だって立場がない。
(……くそう)
とにかく、言われたことだけを無事実行しなければ。
朽葉は決心して、朧が出てくるのを待った。
「待ったか?」
そういって音もなく朧が入って来た。
「あ、いえ、あの」
「余計な挨拶はいらん。座れ」
「あ、はい」
朽葉はややあっけにとられた。
確かに朧は薄氷の一族で立場も朽葉とは比べ物にならないが、こんなに尊大な態度をとるような男ではなかった気がするが。
(多分、キイロにいろいろ聞いているのだろう)
少なくとも、よい噂を聞いていないのならこの態度もわかる。
だが、いまはそのほうが良いのかもしれない。
「まずなぜここに来た?」
「それは、その」
やばい、多分なにか朧は怒っているように見える。
なにかした覚えはないが、これまでの事を考えると、義妹に対しての怒りだろう。
「なにかわれに用事があるん……では?」
「あ、ええ、そうです、あの」
そういって朽葉は持って来た風呂敷包みをほどく。
「こちらをお届けするように、橡局長から預かってまいりました」
「ほう、」
そういって黒塗りの箱を開ける。
すると、なかからいきなりなにからどっと出て来た。
「えっ」
ぶわっと溢れたのは黒い蛇で、にゅるにゅると何十匹もの塊が箱からはみ出た。
(なんで蛇が?)
驚き後ずさる。
箱の中に入っていたにしてはやけに多すぎる蛇に、朽葉はなにがおこっているのかわからず慌てた。
「え?どうして、なぜ蛇が?」
これは嫌がらせで押し付けられたのだろうか、くそう、俺をこの際とことん貶める気なのか!
朽葉が動揺していると、蛇は次々に朧へ牙をむき、とびかかろうとした。
「うっとおしい」
そういって朧が手で蛇を払いのけると、ばちっと床に蛇が叩きつけられる。
「ああもう、しょうもない呪いじゃのう」
そう言うと、朽葉の目の前の朧は、ふっと息を吐いた。
すると、蛇は次々に倒れ、足元にどろどろに溶けていく。
「これは一体……?!」
驚く朽葉に、朧はため息をつく。
「おい、呪いが壊れたぞ。もう出てきてええ」
そう言うと、奥からもう一人の朧が現れ、朽葉は目を丸くした。
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