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第十章
65・キイロの兄と呪い
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「はあ、驚きました。朧様は双子だったのかと」
「そんなはずありませんよ」
言いながら不機嫌そうなのは、キイロの膝枕でりんがごろごろと寝転んでいるからだ。
なにせ自分と変わらない外見で、愛妻の膝に寝転んでいるのは見ていて腹立たしい。
だが、相手は薄氷の守護神でもある龍神で、もしかするとこれまでで最高位の神を授かったかもしれない、のだが。
目の前の朧そっくりのりんは、子供の姿のころと変わらず、キイロにデレデレ甘えているばかりで、キイロもあまりにおおきくなったりんに困惑していた。
「あのう、りんちゃん」
「なんじゃ?」
「あんまり大きいと、疲れるんだけど」
「じゃが、暫くはこれでおらんとわれが疲れる」
どうも姿をころころ変えてしまうわけにはいかないようで、りんはずっと大人の姿のままだ。
「とくにこの屋敷の中は水の気が多い。居心地は悪くないが、腹いっぱいにさせられているようでの。調子がやや狂う」
「それは、たしかにそうかもしれません」
「そうなんですか?」
「ええ。ここは薄氷の一族で立ち上げた時に、水脈や風水を考えて常に龍神の泉を守って、なおかつ屋敷に居るだけで能力が増える様にできる場所でもあるので」
「われには少々、はらにもたれる」
元より能力の高いりんにしてみたら、全身から大量の気を貰っているみたいなもので、逆につかれるらしい。
「おかげでわたしは怪我の治りも早いのですけどね」
「朧様、そういえば随分と顔色も良さそうです」
「呪いが消えましたから」
朧に入り込んだ呪いは元の場所へ戻った。
そうなるとただの怪我でしかないので、あまり気にする事もない。
「軍人ですから、この程度はもう怪我とは言えませんね」
「朧様……」
朧は元気にさせようと思ってそう言ったが、キイロにしたら逆に気になってしまった。
「気にしないでください。こうみえても私はけっこう強いんですよ」
そうふざけると、キイロが笑ったので、朧もほっとした。
ごろごろとキイロの膝で甘えていたりんが、突然がばっと起き上った。
「へんなのが来たぞ」
「へんなの?」
「ずいぶんと気持ちのわるいものをまとわりつかせているな」
そういって朧を見た。
「うん、いまのお前が行かないほうがいいな。ちょうどいい、われがまいろう」
何のことだ?とみな首を傾げていると、舛花がやってきた。
「朧様、橡の使いのものが来ました」
「誰だ?」
「それが……」
「どうした」
朧に舛花がぼそぼそっと囁く。
「本当か?」
「嘘は言いません」
どうする、と悩む朧だが、キイロはなぜか勘が働いた。
「わたしに関係のあること、なんですね?」
キイロはなんとなく、自分のせいではないかと思ったが、実際にその通りらしい。
朧は頷いた。
「―――――あなたの兄が、来たそうです。我々の敵の使いとして」
それだけでキイロは青ざめた。
(本当にあの人たちは)
なにもかもキイロの幸せやおだやかな毎日を奪おうとするのだ。
「心配はいりません。この屋敷で妙なことをしたらしたで、陛下のお怒りを買うだけです」
「でも」
「ああ、ちょっと待て。さっきも言ったろう。気持ちの悪いやつ、ちょっといまのお前は関わらんほうがいい」
にょきっとりんが首を突っ込む。
「なぜですか?」
「お前も見たらわかるかのう。全身から、真っ黒い呪いを巻き付けておる。当人はよっぽど鈍いんか、強いんか、気が付いているかどうかは知らんがの。折角呪いが解けたんなら、お前が行く必要はない」
そして朧に言った。
「面白そうじゃしわれが出る」
「われがって……りん様が?」
「なに、いまのわれとおまえを見抜けるものなどそうそうおらんじゃろう。しかもそいつ、親しくはなかろう?」
「ええ」
キイロの兄については、朧は名前と顔の認識はしているが、仕事の関りは全くない。
「わしが呪いを見て来てやる」
そういってりんは立ち上がった。
「そんなはずありませんよ」
言いながら不機嫌そうなのは、キイロの膝枕でりんがごろごろと寝転んでいるからだ。
なにせ自分と変わらない外見で、愛妻の膝に寝転んでいるのは見ていて腹立たしい。
だが、相手は薄氷の守護神でもある龍神で、もしかするとこれまでで最高位の神を授かったかもしれない、のだが。
目の前の朧そっくりのりんは、子供の姿のころと変わらず、キイロにデレデレ甘えているばかりで、キイロもあまりにおおきくなったりんに困惑していた。
「あのう、りんちゃん」
「なんじゃ?」
「あんまり大きいと、疲れるんだけど」
「じゃが、暫くはこれでおらんとわれが疲れる」
どうも姿をころころ変えてしまうわけにはいかないようで、りんはずっと大人の姿のままだ。
「とくにこの屋敷の中は水の気が多い。居心地は悪くないが、腹いっぱいにさせられているようでの。調子がやや狂う」
「それは、たしかにそうかもしれません」
「そうなんですか?」
「ええ。ここは薄氷の一族で立ち上げた時に、水脈や風水を考えて常に龍神の泉を守って、なおかつ屋敷に居るだけで能力が増える様にできる場所でもあるので」
「われには少々、はらにもたれる」
元より能力の高いりんにしてみたら、全身から大量の気を貰っているみたいなもので、逆につかれるらしい。
「おかげでわたしは怪我の治りも早いのですけどね」
「朧様、そういえば随分と顔色も良さそうです」
「呪いが消えましたから」
朧に入り込んだ呪いは元の場所へ戻った。
そうなるとただの怪我でしかないので、あまり気にする事もない。
「軍人ですから、この程度はもう怪我とは言えませんね」
「朧様……」
朧は元気にさせようと思ってそう言ったが、キイロにしたら逆に気になってしまった。
「気にしないでください。こうみえても私はけっこう強いんですよ」
そうふざけると、キイロが笑ったので、朧もほっとした。
ごろごろとキイロの膝で甘えていたりんが、突然がばっと起き上った。
「へんなのが来たぞ」
「へんなの?」
「ずいぶんと気持ちのわるいものをまとわりつかせているな」
そういって朧を見た。
「うん、いまのお前が行かないほうがいいな。ちょうどいい、われがまいろう」
何のことだ?とみな首を傾げていると、舛花がやってきた。
「朧様、橡の使いのものが来ました」
「誰だ?」
「それが……」
「どうした」
朧に舛花がぼそぼそっと囁く。
「本当か?」
「嘘は言いません」
どうする、と悩む朧だが、キイロはなぜか勘が働いた。
「わたしに関係のあること、なんですね?」
キイロはなんとなく、自分のせいではないかと思ったが、実際にその通りらしい。
朧は頷いた。
「―――――あなたの兄が、来たそうです。我々の敵の使いとして」
それだけでキイロは青ざめた。
(本当にあの人たちは)
なにもかもキイロの幸せやおだやかな毎日を奪おうとするのだ。
「心配はいりません。この屋敷で妙なことをしたらしたで、陛下のお怒りを買うだけです」
「でも」
「ああ、ちょっと待て。さっきも言ったろう。気持ちの悪いやつ、ちょっといまのお前は関わらんほうがいい」
にょきっとりんが首を突っ込む。
「なぜですか?」
「お前も見たらわかるかのう。全身から、真っ黒い呪いを巻き付けておる。当人はよっぽど鈍いんか、強いんか、気が付いているかどうかは知らんがの。折角呪いが解けたんなら、お前が行く必要はない」
そして朧に言った。
「面白そうじゃしわれが出る」
「われがって……りん様が?」
「なに、いまのわれとおまえを見抜けるものなどそうそうおらんじゃろう。しかもそいつ、親しくはなかろう?」
「ええ」
キイロの兄については、朧は名前と顔の認識はしているが、仕事の関りは全くない。
「わしが呪いを見て来てやる」
そういってりんは立ち上がった。
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