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第十章
67・朧の静かな怒り
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「薄氷さまが二人?双子?」
驚く朽葉に、後から現れた朧が呟く。
「一応とはいえ、義兄のあなたが、呪いを持ってくるとは」
「ま、待ってくれ!私はなにが入っているのか知らなかった!」
「よく、のうのうと入れたの」
感心するのは朧そっくりのりんだ。
「多分、このせいです。この風呂敷を見て下さい」
つまんで引っ張ると、なかからことんとなにかが落ちて来た。
「薄氷の守りです。どこで手に入れたのか、このおかげで影響が最小限だったのでしょう」
「それでもわれの嗅覚は隠せんけどの!」
なぜかりんは偉そうに腕をくんでふふんといばる。
「兄さま……いくら私を嫌っているからといって朧様になんてことを」
わなわなとキイロは怒りに震えた。
「ま、待ってくれ!本当になにも知らない!そもそも、上司の上司に押し付けられただけであって」
「ムーラン、それは本当だと思うよ。彼の事は調べはついてる。君の義兄なら、素直に屋敷に入れると思ったのだろう」
「そ、その通りだ。俺はとっくに、立場なんかなにもない」
そういって朽葉は肩を落とす。
「軍での出世も、もとはといえば薄氷のはからいだったといまは知っている。母のやらかしのせいでいまはその立場すらない。なんとか軍にしがみついている状態だ」
朧は冷たく言う。
「そうでしょうね。少なくとも、義妹をまもっておれば、今頃安泰だったでしょうに」
「はは、そうだな。所詮俺も母とかわらん。他人のことはどうでもいいクズなんだよ」
苦笑する義兄に、キイロは少し、心がすっとした。
決して影で暴行することはなかったが、それでも助けてくれることも、親に馬鹿にされるキイロを鼻で笑うばかりだった。
「朧様、義兄が申し訳ありません」
キイロがそういって深々と頭を下げる。
決して自分のせいではない、のは判っている。
それでも立場上、頭を下げなければならないとキイロは思った。
「どうです、見下していた相手があなたの為に頭を下げるのは」
朧の言葉に、朽葉は口ごもる。
「あなたがた母子のせいで、どれだけ彼女が酷い目にあってきたか」
朧はまだなにか言いたげだったが、それでも朽葉をじっと睨むと、ため息をつく。
「―――――とはいえ、あなたの言う事を信じるのなら」
「し、信じてくれ!本当になにも」
「いますぐこの国を出て、軍の命令に従って頂きましょう。そうすれば橡の影響もないでしょう」
「朧様」
「海外なら私の部下がいます。どうせ船も出る手はずもあります。助かりたければ」
「そ、そうしてくれ!もう母にも上司にも振り回されるのはうんざりだ!」
必死に言う朽葉の言葉に嘘はないのだろう。
(演技かと思ったが)
本当にただ、厄介事を押し付けられただけなのだろう。
「わかりました。ではあなたはもう軍に帰らず、すぐにこのまま私の司令部の方へ向かってください。舛花!」
「はい」
「頼む」
「はっ」
早々に動いた方が良いと判断した朧は、舛花に命令した。
朽葉は顔をあげ、妹を見つめた。
「お前の本当の名は、ムーラン、というのか」
「そう、です」
「私の母が押し付けた名前よりよっぽど、似合っているな」
「―――――?待って?!それって、本当ですか?」
驚くキイロに、朽葉が逆に驚く。
「なんだ、知らなかったのか?お前の名前を『キイロ』に変えたのは、俺の母だよ」
キイロは驚いた。
てっきり、実の母がそうしたのだと思い込んでいたからだ。
「お前はまだ幼かったからだろうか、気に入らなかったのか、強引に呼び名を変えていた。お前はその度に混乱していたからな。ま、助けなかった俺も俺だが」
はっと義兄は笑い、朧を見た。
「あいつ、俺の母親の事はどうにでもしてくれ。俺だってアイツが好きな訳じゃない。なにをされてもあなたを恨むことはない」
「そのつもりだ。恨まれても返り討ちにしてやる」
「ハハ、そうだろうな」
そうだ、と朽葉は顔をあげた。
「お詫びにひとつ、アイツも、俺の母も俺に内緒にしていることを教えてやるよ。あのクソババアは、橡の元愛人だぜ」
驚く朽葉に、後から現れた朧が呟く。
「一応とはいえ、義兄のあなたが、呪いを持ってくるとは」
「ま、待ってくれ!私はなにが入っているのか知らなかった!」
「よく、のうのうと入れたの」
感心するのは朧そっくりのりんだ。
「多分、このせいです。この風呂敷を見て下さい」
つまんで引っ張ると、なかからことんとなにかが落ちて来た。
「薄氷の守りです。どこで手に入れたのか、このおかげで影響が最小限だったのでしょう」
「それでもわれの嗅覚は隠せんけどの!」
なぜかりんは偉そうに腕をくんでふふんといばる。
「兄さま……いくら私を嫌っているからといって朧様になんてことを」
わなわなとキイロは怒りに震えた。
「ま、待ってくれ!本当になにも知らない!そもそも、上司の上司に押し付けられただけであって」
「ムーラン、それは本当だと思うよ。彼の事は調べはついてる。君の義兄なら、素直に屋敷に入れると思ったのだろう」
「そ、その通りだ。俺はとっくに、立場なんかなにもない」
そういって朽葉は肩を落とす。
「軍での出世も、もとはといえば薄氷のはからいだったといまは知っている。母のやらかしのせいでいまはその立場すらない。なんとか軍にしがみついている状態だ」
朧は冷たく言う。
「そうでしょうね。少なくとも、義妹をまもっておれば、今頃安泰だったでしょうに」
「はは、そうだな。所詮俺も母とかわらん。他人のことはどうでもいいクズなんだよ」
苦笑する義兄に、キイロは少し、心がすっとした。
決して影で暴行することはなかったが、それでも助けてくれることも、親に馬鹿にされるキイロを鼻で笑うばかりだった。
「朧様、義兄が申し訳ありません」
キイロがそういって深々と頭を下げる。
決して自分のせいではない、のは判っている。
それでも立場上、頭を下げなければならないとキイロは思った。
「どうです、見下していた相手があなたの為に頭を下げるのは」
朧の言葉に、朽葉は口ごもる。
「あなたがた母子のせいで、どれだけ彼女が酷い目にあってきたか」
朧はまだなにか言いたげだったが、それでも朽葉をじっと睨むと、ため息をつく。
「―――――とはいえ、あなたの言う事を信じるのなら」
「し、信じてくれ!本当になにも」
「いますぐこの国を出て、軍の命令に従って頂きましょう。そうすれば橡の影響もないでしょう」
「朧様」
「海外なら私の部下がいます。どうせ船も出る手はずもあります。助かりたければ」
「そ、そうしてくれ!もう母にも上司にも振り回されるのはうんざりだ!」
必死に言う朽葉の言葉に嘘はないのだろう。
(演技かと思ったが)
本当にただ、厄介事を押し付けられただけなのだろう。
「わかりました。ではあなたはもう軍に帰らず、すぐにこのまま私の司令部の方へ向かってください。舛花!」
「はい」
「頼む」
「はっ」
早々に動いた方が良いと判断した朧は、舛花に命令した。
朽葉は顔をあげ、妹を見つめた。
「お前の本当の名は、ムーラン、というのか」
「そう、です」
「私の母が押し付けた名前よりよっぽど、似合っているな」
「―――――?待って?!それって、本当ですか?」
驚くキイロに、朽葉が逆に驚く。
「なんだ、知らなかったのか?お前の名前を『キイロ』に変えたのは、俺の母だよ」
キイロは驚いた。
てっきり、実の母がそうしたのだと思い込んでいたからだ。
「お前はまだ幼かったからだろうか、気に入らなかったのか、強引に呼び名を変えていた。お前はその度に混乱していたからな。ま、助けなかった俺も俺だが」
はっと義兄は笑い、朧を見た。
「あいつ、俺の母親の事はどうにでもしてくれ。俺だってアイツが好きな訳じゃない。なにをされてもあなたを恨むことはない」
「そのつもりだ。恨まれても返り討ちにしてやる」
「ハハ、そうだろうな」
そうだ、と朽葉は顔をあげた。
「お詫びにひとつ、アイツも、俺の母も俺に内緒にしていることを教えてやるよ。あのクソババアは、橡の元愛人だぜ」
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