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第十章
68・義兄の証言
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「それは本当か?」
驚く朧に、朽葉は頷いた。
「ああ。俺の親父って事はないからそこは安心しろ。随分と若い頃に、橡とデキてたらしい。そういう商売女だったからな」
キイロの義母、そして朽葉の母親である女のことは朧も調べていた。
元々が軍に関わる体を売る女だった。
「しかし、そんな記録は」
「どこにもありゃしねえよ。何回も名前を変えてうまく逃げ回っている。いまの親父と結婚したのも、元々は払い下げの払い下げみたいなもんだ」
それで蘇芳は出世できたのかと、朧は理解した。
「少なくとも蘇芳家の繋がりの結果かと思っていたよ」
「ハハ、そんな力はもうとっくにねえよ。あの女のせいでとっくに蘇芳家は財をなくしてる。妹をイビリ倒したのも結局は橡のやつあたりのせいさ」
「やつあたり?」
元幕軍の頂点近くに居た人がどうしてキイロみたいな小娘にやつあたりをする必要があるのか。
「俺は知らんが、そいつは本来『良いとこ』の娘だろ?母親が相当良い家の娘だったとか。その家のせいで橡は失脚したそうだな」
「そんな話は聞いたことがない」
驚く朧に、朽葉は「そうだろうな」と苦笑した。
「俺も酔っぱらった母親に一度聞かされただけだ。本来、妹は実の母親の家に引き取られるのをどうしても避けたかった。なぜなら薄氷が必死に探していると知っていたからな。幸い、橡の手のうちに戸籍をいじれる奴がいた。さすがに死亡はできないが、何度も戸籍を渡らせればやがて判らなくなるとふんでのことだ。実際、見つけられなかったんだろ?」
「それでか」
なんとか潤朱との縁を繋ごうとしたのも、やがては橡が力を取り戻すためにやったのだろう。
「なにがあっても薄氷とその娘を結婚させたくなかったんだろうな。子供相手に随分と用心したもんだと俺は呆れたけどな」
「いや。よく話してくれた」
「どうせあの女がいずれこうなるのは判っていたが、それにしても敵が悪すぎる。俺は降りる。一生軍で働ければ文句はない。ひもじい思いはしたくないんでな」
「暫くはお前の言う事を信じよう」
「そうしてくれ。見張ってくれたほうが俺も動きづらくて助かる」
その言葉で、朽葉にも面倒なことが降りかかっていると朧は理解した。
「余計に海外へ行ったほうがよさそうだな」
「このまま連行よろしく連れてってくれて構わないぜ。そのほうが楽で良い」
「そうさせてもらおう」
朽葉は大人しく出て行った。
「ちょっと驚きました。今更知らない事があるなんて」
「ええ、本当に」
キイロにしてみたら、義母はたんに化物みたいなキイロの力が気に入らなかっただけでいじめていたと思っていたが、話はもっと複雑らしい。
「私の知らないところで、難しい話があったんですね」
少しずつ、記憶は取り戻しつつある。
夢か現実かの区別はつかないが、幼い頃、朧とあったような記憶もわずかだがある。
「あなたは、栴檀家の流れの方です。全ての魔をよけ、そういったものに嫌われる。義母というあの女があなたを嫌ったのもそのせいでしょう」
「魔を避ける?」
「ええ。魔に嫌われる、とも。体の中に魔性が入り込むことすらありません。お守りのようなものです」
だから、と朧は言った。
「橡はあなたの兄を使ったのでしょう。この屋敷で、あなたの傍で呪いを放つには橡でもそのくらい手を使わないと近づけない」
「そんな力が私に?」
にわかにキイロ自身には信じられなかったが、朧はキイロの肩を抱く。
「ですから、わたしにも銃を使うしかなかったのです、そしてわたしの場合は、ありがたくもりん様が居た。おかげで呪いの傷はほとんど影響ありません」
「われのおかげだ!」
ふんとふんぞり返るりんに、キイロは頷いた。
「本当。りんちゃんは凄いわ!あなたのおかげよ!」
喜ぶと、りんは「おう」と笑顔を見せる。
そんなところはまだ幼いんだな、とキイロは笑った。
驚く朧に、朽葉は頷いた。
「ああ。俺の親父って事はないからそこは安心しろ。随分と若い頃に、橡とデキてたらしい。そういう商売女だったからな」
キイロの義母、そして朽葉の母親である女のことは朧も調べていた。
元々が軍に関わる体を売る女だった。
「しかし、そんな記録は」
「どこにもありゃしねえよ。何回も名前を変えてうまく逃げ回っている。いまの親父と結婚したのも、元々は払い下げの払い下げみたいなもんだ」
それで蘇芳は出世できたのかと、朧は理解した。
「少なくとも蘇芳家の繋がりの結果かと思っていたよ」
「ハハ、そんな力はもうとっくにねえよ。あの女のせいでとっくに蘇芳家は財をなくしてる。妹をイビリ倒したのも結局は橡のやつあたりのせいさ」
「やつあたり?」
元幕軍の頂点近くに居た人がどうしてキイロみたいな小娘にやつあたりをする必要があるのか。
「俺は知らんが、そいつは本来『良いとこ』の娘だろ?母親が相当良い家の娘だったとか。その家のせいで橡は失脚したそうだな」
「そんな話は聞いたことがない」
驚く朧に、朽葉は「そうだろうな」と苦笑した。
「俺も酔っぱらった母親に一度聞かされただけだ。本来、妹は実の母親の家に引き取られるのをどうしても避けたかった。なぜなら薄氷が必死に探していると知っていたからな。幸い、橡の手のうちに戸籍をいじれる奴がいた。さすがに死亡はできないが、何度も戸籍を渡らせればやがて判らなくなるとふんでのことだ。実際、見つけられなかったんだろ?」
「それでか」
なんとか潤朱との縁を繋ごうとしたのも、やがては橡が力を取り戻すためにやったのだろう。
「なにがあっても薄氷とその娘を結婚させたくなかったんだろうな。子供相手に随分と用心したもんだと俺は呆れたけどな」
「いや。よく話してくれた」
「どうせあの女がいずれこうなるのは判っていたが、それにしても敵が悪すぎる。俺は降りる。一生軍で働ければ文句はない。ひもじい思いはしたくないんでな」
「暫くはお前の言う事を信じよう」
「そうしてくれ。見張ってくれたほうが俺も動きづらくて助かる」
その言葉で、朽葉にも面倒なことが降りかかっていると朧は理解した。
「余計に海外へ行ったほうがよさそうだな」
「このまま連行よろしく連れてってくれて構わないぜ。そのほうが楽で良い」
「そうさせてもらおう」
朽葉は大人しく出て行った。
「ちょっと驚きました。今更知らない事があるなんて」
「ええ、本当に」
キイロにしてみたら、義母はたんに化物みたいなキイロの力が気に入らなかっただけでいじめていたと思っていたが、話はもっと複雑らしい。
「私の知らないところで、難しい話があったんですね」
少しずつ、記憶は取り戻しつつある。
夢か現実かの区別はつかないが、幼い頃、朧とあったような記憶もわずかだがある。
「あなたは、栴檀家の流れの方です。全ての魔をよけ、そういったものに嫌われる。義母というあの女があなたを嫌ったのもそのせいでしょう」
「魔を避ける?」
「ええ。魔に嫌われる、とも。体の中に魔性が入り込むことすらありません。お守りのようなものです」
だから、と朧は言った。
「橡はあなたの兄を使ったのでしょう。この屋敷で、あなたの傍で呪いを放つには橡でもそのくらい手を使わないと近づけない」
「そんな力が私に?」
にわかにキイロ自身には信じられなかったが、朧はキイロの肩を抱く。
「ですから、わたしにも銃を使うしかなかったのです、そしてわたしの場合は、ありがたくもりん様が居た。おかげで呪いの傷はほとんど影響ありません」
「われのおかげだ!」
ふんとふんぞり返るりんに、キイロは頷いた。
「本当。りんちゃんは凄いわ!あなたのおかげよ!」
喜ぶと、りんは「おう」と笑顔を見せる。
そんなところはまだ幼いんだな、とキイロは笑った。
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