わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います

あきた

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第十章

70・子供さえ

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「とにかく、あの若造だけでもどうにかせんと気が済まん」
「陛下には何と」
「なんと?なんとでも言え!今更何を言ってもこっちの立場は変わらん。わずかでもまだ望みがあるなら、連なる連中も出てくるだろう」
「そうでしょうか」
「そうでなければ困る」

 これまでさんざん金をばらまいてきた。
 口先だけなら勇ましい事を言う連中も存在する。
 だが、実際に薄氷うすらいを敵に回すだろうか。

(いや、考えまい)

 なにを考えてもうまくいかなければ、自分の立場が危うくなるだけだ。
 しかしこのまま、過去の栄光すら取り戻せないのは癪に触り過ぎる。

「大人しく潤朱うるしゅの娘を娶っておけばよかったものを!」

 忌々し気に橡は言ったが、今更どうにならない事だった。

 浅黄あさぎは屋敷に帰る事はしなかった。
 多分、もう自分の行動は甥にバレているだろうし、そもそも。

「ぐっ、」

 おぼろに与えたはずの呪いがそのままこちらへ戻って来た、その傷が酷かった。
 隠し立てするのも限界がある。
 浅黄のいくつかの隠れ家のうちの一つで傷の手当てをしていると、来客があった。

「誰だ」
おもいお嬢様です」
「思が?」
 なぜここがバレたのか、浅黄が驚くと、思は勝手にどんどん屋敷の中へ入り、浅黄の部屋のドアを開けた。
「おじさま!」
 怪我の手当てをしていた叔父を見て、思は「やっぱりね」と呆れた。
「叔父様、朧に呪いをかけたのって本当だったのね」
「だったらどうした」
「どうして私に言ってくれなかったの?」
 浅黄は驚いて思を見た。
 思はずっと朧に恋をしていたはずだ。

「叔父様の言いたいことはわかるわよ。朧を好きなくせにって考えているんでしょう?私もそうだったわ、この前のパーティーまではね」

 軍人が愛人をもつのはよくあることだ。
 妻とは子供を作り、家を守り、それ以外のことは愛人とすませるのは珍しくない。
 だから、朧もきっとそうだと思っていた。
 結婚すると聞いても、愛人の我儘に付き合ってやるのだろうと。
 だが、そうではなかった。
 まさか、あの古い家柄の栴檀家の娘が相手で、ずっと言っていた幼馴染だなんて。

「バカにしてるわ。最初から栴檀の娘だと知っていたら」
「知っていたら?」
「もっと酷い事をしてやったのに」

 栴檀家にあるものなんて、名前と肩書くらいのものだ。
 でも、誰もがあの家なら、と納得する。
 思がどんなに望んでも叶わないのもをあの娘は持っている。

「貴族のしきたりもろくに知らない、甘ちゃんな娘に朧は似合わないわ」

 貴族としてのふるいまいを、思はずっと習って来た。
 自由もないし、行動も制限ばかり。
 でもそれでも、いずれは朧の正妻の座があると思ったからこなしてきた。
 朧は常に、幼い頃の恋を語っていたけれど、それは思を断る方便でしかない、と思っていた。
 だが、そうじゃなかった。

「でも、朧もバカなのよね。あんな女と結婚するなんて正気じゃない。正気じゃない朧の目を覚ましてあげないと」

 そういって思は小さなカバンを開く。

「お前、それは潤朱の当主しか……!」
「ええ、一時とは言え、洗脳できる秘薬よ。おじさまにあげる」
「あげるって……お前、それをどうして」
「お兄様のお部屋にあったんだもの。いいでしょ、わたしがもらったって」
「すぐに」
「バレやしないわ。似たようなカバンを置いといたの。お兄様も滅多に確認しないし」

 ざまあみろ、と思は笑った。

「必ず朧を正気に戻すの。だったら、ちょっとくらい強引な手を使ってもいいわよね。なんなら私が朧の子供を孕めばいいわけだし」

 ふふっと笑う思に、浅黄は「正気か?」と返したが、思は笑った。

「正気だからこそ、ちゃんとこういう方法を考えるのよ」
「しかし、朧に呪いをかけたうえにその秘薬を使えば、朧だって無事では済まない」
「いいじゃないの。子供さえ孕んでしまえばこっちのものだもの」

 どんな手を使っても。

「朧には、わたしと子供をつくって貰うわ」

 思は憎々し気にそう言い放った。
 浅黄はなにも言えなかった。
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