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第十一章
72・潤朱のたくらみ
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「ええ、なに?」
「ほら、いま私、朧様のおかげで商売をはじめたところじゃない?」
梅花の家は没落してしまっていたが、元々商才のある家だった。
薄氷家からの支援をうけて早速商売を立ち上げたのだが。
「ええ。だからあなたも忙しくしているのよね?」
「そう!そうなんだけど、つい昨日、兄からよくない噂を聞いたの!」
「よくない噂?」
「そう。ほら、うちって朧様のおかげで再興のチャンスを頂いたから、家族みんなものすごく、キイロと朧様に感謝しなくってるの」
「朧様はとにかく、私はそこまで」
「なにいってるの!あなたと親友ってところで朧様も信用して下さったんだから!とにかく、うちは朧様になにがなんでも恩返しする気まんまんなのね。だから商売の準備をしながらも情報を集めているんだけど、どうやら薄氷家、というか内容からしてまちがいなく朧様のことなんだけど、どうもきなくさい動きがあるらしいのよ」
「きなくさい?」
「ええ。元幕僚のかたのことはなんとなく、商売人の間でも情報が出回っているんだけど、どうもうまく行ってないらしくて、支払いが滞っているおうちも多いんですって」
「……」
支払いと聞いて、そうかもしれないな、とキイロも思う。
元々、苦労なく過ごして来た人々が急に商売をするか、もしくはどうにか政府での立場を手に入れるかしなければならないご時世で、いまの政府は無能には厳しいと聞いている。
「これまで、家のおかげでなんとか体裁を保って来た人のなかにも、いきなり夜逃げするくらい追い詰められているおうちもあるそうで」
「なんだか気が重いわ」
ずっと貧乏暮らしをしていたキイロからしたら、他人事とは思えない。
「そのなかでも、絶対そんな立場になさそうな方が夜逃げしそうって噂があるの」
「絶対にそんな立場にない?」
「そう。っていうか夜逃げって言うより海外逃亡ね。こんど大きな船が入るんだけど、それで海外に逃れるつもりなんじゃって噂が流れてるの」
「噂……」
「それで、そのお方と同じように、さる家のご令嬢もその船に乗って海外へ行くと」
「ふーん、なんだか夜逃げっていう感じじゃないわね」
てっきり貧乏が辛くて逃げるのかとおもいきや、それではただの豪華旅行にしか思えない。
「でね、ここからが気になるんだけど、そのご令嬢っていうのがどうも潤朱のかたらしいって」
「潤朱の?」
潤朱といえば、朧の幼馴染で片思いしていたという、あの髪の赤い女性の事では。
(でも、そんな夜逃げするようには見えなかったけど)
「潤朱の次期当主は朧様の友人で、しかも名君といわれているので心配ないそうだけど、あの潤朱のオモイとかいう女!は我儘で有名らしいわよ」
でね、と梅花は続けた。
「まだわからないけど、その船、豪華客船らしいんだけど、どうもそこで結婚式をあげる準備をしているっぽいの」
「結婚式!船で?」
「そう。どうもそういった準備をひっそりやっているっぽいっていうのを兄が探って来たの」
「どうやってそんなのわかるの?」
「だって荷受けの連中と仲良くしていたら、なにを摘んだのか筒抜けだもの。商売は情報戦なんだから!」
えへんといばる梅花に、なるほどなあ、とキイロは思うのだが。
「ということは、あの方が結婚されるという事なの?それとも潤朱のどなたかが結婚とか?」
「そこがおかしいのよ。潤朱に結婚しそうな人なんて予定はなにも入ってないし、噂も出ていないそうなの。あれほどの家での婚約があれば表に出ないはずがないのよ」
「じゃあ、極秘に?」
「それもおかしいのよね。大きな家の結婚ともなれば、それだけでお披露目の価値がある。大げさにすることはあっても悪い事でもしない限り、極秘なんてするわけもないし」
「―――――ということは」
極秘、船上、海外逃亡、結婚式。
「間違いなく、『あの女』が関わっていると私の女の勘が告げてるのよ!」
「ほら、いま私、朧様のおかげで商売をはじめたところじゃない?」
梅花の家は没落してしまっていたが、元々商才のある家だった。
薄氷家からの支援をうけて早速商売を立ち上げたのだが。
「ええ。だからあなたも忙しくしているのよね?」
「そう!そうなんだけど、つい昨日、兄からよくない噂を聞いたの!」
「よくない噂?」
「そう。ほら、うちって朧様のおかげで再興のチャンスを頂いたから、家族みんなものすごく、キイロと朧様に感謝しなくってるの」
「朧様はとにかく、私はそこまで」
「なにいってるの!あなたと親友ってところで朧様も信用して下さったんだから!とにかく、うちは朧様になにがなんでも恩返しする気まんまんなのね。だから商売の準備をしながらも情報を集めているんだけど、どうやら薄氷家、というか内容からしてまちがいなく朧様のことなんだけど、どうもきなくさい動きがあるらしいのよ」
「きなくさい?」
「ええ。元幕僚のかたのことはなんとなく、商売人の間でも情報が出回っているんだけど、どうもうまく行ってないらしくて、支払いが滞っているおうちも多いんですって」
「……」
支払いと聞いて、そうかもしれないな、とキイロも思う。
元々、苦労なく過ごして来た人々が急に商売をするか、もしくはどうにか政府での立場を手に入れるかしなければならないご時世で、いまの政府は無能には厳しいと聞いている。
「これまで、家のおかげでなんとか体裁を保って来た人のなかにも、いきなり夜逃げするくらい追い詰められているおうちもあるそうで」
「なんだか気が重いわ」
ずっと貧乏暮らしをしていたキイロからしたら、他人事とは思えない。
「そのなかでも、絶対そんな立場になさそうな方が夜逃げしそうって噂があるの」
「絶対にそんな立場にない?」
「そう。っていうか夜逃げって言うより海外逃亡ね。こんど大きな船が入るんだけど、それで海外に逃れるつもりなんじゃって噂が流れてるの」
「噂……」
「それで、そのお方と同じように、さる家のご令嬢もその船に乗って海外へ行くと」
「ふーん、なんだか夜逃げっていう感じじゃないわね」
てっきり貧乏が辛くて逃げるのかとおもいきや、それではただの豪華旅行にしか思えない。
「でね、ここからが気になるんだけど、そのご令嬢っていうのがどうも潤朱のかたらしいって」
「潤朱の?」
潤朱といえば、朧の幼馴染で片思いしていたという、あの髪の赤い女性の事では。
(でも、そんな夜逃げするようには見えなかったけど)
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でね、と梅花は続けた。
「まだわからないけど、その船、豪華客船らしいんだけど、どうもそこで結婚式をあげる準備をしているっぽいの」
「結婚式!船で?」
「そう。どうもそういった準備をひっそりやっているっぽいっていうのを兄が探って来たの」
「どうやってそんなのわかるの?」
「だって荷受けの連中と仲良くしていたら、なにを摘んだのか筒抜けだもの。商売は情報戦なんだから!」
えへんといばる梅花に、なるほどなあ、とキイロは思うのだが。
「ということは、あの方が結婚されるという事なの?それとも潤朱のどなたかが結婚とか?」
「そこがおかしいのよ。潤朱に結婚しそうな人なんて予定はなにも入ってないし、噂も出ていないそうなの。あれほどの家での婚約があれば表に出ないはずがないのよ」
「じゃあ、極秘に?」
「それもおかしいのよね。大きな家の結婚ともなれば、それだけでお披露目の価値がある。大げさにすることはあっても悪い事でもしない限り、極秘なんてするわけもないし」
「―――――ということは」
極秘、船上、海外逃亡、結婚式。
「間違いなく、『あの女』が関わっていると私の女の勘が告げてるのよ!」
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