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第十三章
91・白い薔薇の花ことば
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「これは?」
「本当は結婚式でお渡しするつもりでした。でも、あんなことになってしまって……」
「大変なことでしたから」
キイロは苦笑して頷く。
食事が出来ればいい、布団で眠れればいい、その程度しか考えていなかったのに、思いもしないことが毎日起こった。
いま思えば、必死で、滑稽かもしれない。
でも、朧に見つけて貰えて良かったとキイロは思う。
「知っていますか?白い薔薇の花ことばを」
「いいえ、全然」
朧は微笑んでキイロに告げた。
「白い薔薇の花ことばは、本数で違うんです。その指輪には、あなたから貰った白い薔薇をイメージした刻印を入れて貰いました」
「とっても素敵です」
「それは私からの、あなたへの答えです」
「答え?」
「ええ。一本だけの白い薔薇の花ことばは、『一目ぼれ』なんですよ。あまりにその通りでしょう?」
朧は楽しそうに微笑んでいた。
「あなたが私に薔薇をくれた、その瞬間に、わたしは花言葉の通り、あなたの『やさしさ』に一目ぼれしたんです。いえ、可愛らしい女の子でしたけどね」
そういって朧はペンダントをキイロに見せた。
「この中に写真を一枚増やしたいんです。これまでは、このあなたですが、この先は常にいまのあなたを」
「……はい」
ずっと想ってくれていたのだと、いまならキイロにも判る。
幼い頃の感情がそんなにも続くのかと思っていたけれど、そうじゃない。
朧はきっと、もう決めたのだ。
(だから、彼女はそれが判らなかった)
潤朱思は、いまは病院で治療を受けている。
どうなったかは詳しくは聞いていない。
だけど、彼女にとっては理解できなかったのだろう、ということがわかる。
「私も少しずつ、朧様の事を思い出してきました」
夢の中で、時々、りんによく似た少年と遊んでいることがある。
それは最初はりんの姿で、やがて銀色の髪の少年に変わる。
「きっと、そのうち全部思い出すのか、それとも忘れてしまうのか、わかりませんけど」
「だったら、傍で確かめさせてください」
朧が言った。
「あなたの傍で、最初にあなたに言葉を聞きたいんです」
「ええ、必ず」
キイロは頷く。
「必ず、お約束を守ります」
キイロはふと顔をあげた。
「そういえば朧様、この指輪、結婚指輪、とおっしゃいましたよね」
「ええ、そうですが」
「でしたら、朧様のは?」
「ありますよ、ここに」
無造作に差し出された指輪を、キイロは受け取った。
「では、これは私から朧様に」
すると朧は急に目を丸くして驚く。
「え?私に?ですか?」
「当たり前じゃないですか。他に誰が」
「え、ちょっと待ってください、心の準備が」
なぜかあたふたしはじめて、キイロはちょっと呆れた。
「どうして慌てているんですか?」
「慌てますよ!だって、そんな、想像もしていなかったですし」
「結婚指輪ならお互いにはめるのでは?」
「そうですけど」
急にあたふたしはじめた朧に、キイロはおかしくなってしまった。
「往生際が悪いです」
「だって、その。あなたから、指輪をはめてもらうなんて」
「もらうなんて?」
「その……夢みたいで」
「朧様が用意されたのでは?」
「そうですけど!」
朧はなぜか焦っていた。
「だってずっと、あなたを見つけるまで、本当にあなたがいるのかどうかすら、僕は不安で仕方なくて」
「不安?」
「ええ。見つけたあなたは、昔と変わらないだろうか。僕と結婚するのが嫌じゃないだろうか。嫌だとしても、必ず好きになってもらおうとか。諦めるつもりはなかったので」
指輪も、と朧は頬を染めて言った。
「作る時に、こんな風に、とずっと考えていて。注文して。あなたの指にはめたらどんな風に見えるかなとかいろいろ考えていたのですが」
「ですが?」
「―――――自分があなたにつけて貰うのは、全く想像していなくて、その」
キイロは驚いて目を丸くした。
この人は、照れているのだ。
「本当は結婚式でお渡しするつもりでした。でも、あんなことになってしまって……」
「大変なことでしたから」
キイロは苦笑して頷く。
食事が出来ればいい、布団で眠れればいい、その程度しか考えていなかったのに、思いもしないことが毎日起こった。
いま思えば、必死で、滑稽かもしれない。
でも、朧に見つけて貰えて良かったとキイロは思う。
「知っていますか?白い薔薇の花ことばを」
「いいえ、全然」
朧は微笑んでキイロに告げた。
「白い薔薇の花ことばは、本数で違うんです。その指輪には、あなたから貰った白い薔薇をイメージした刻印を入れて貰いました」
「とっても素敵です」
「それは私からの、あなたへの答えです」
「答え?」
「ええ。一本だけの白い薔薇の花ことばは、『一目ぼれ』なんですよ。あまりにその通りでしょう?」
朧は楽しそうに微笑んでいた。
「あなたが私に薔薇をくれた、その瞬間に、わたしは花言葉の通り、あなたの『やさしさ』に一目ぼれしたんです。いえ、可愛らしい女の子でしたけどね」
そういって朧はペンダントをキイロに見せた。
「この中に写真を一枚増やしたいんです。これまでは、このあなたですが、この先は常にいまのあなたを」
「……はい」
ずっと想ってくれていたのだと、いまならキイロにも判る。
幼い頃の感情がそんなにも続くのかと思っていたけれど、そうじゃない。
朧はきっと、もう決めたのだ。
(だから、彼女はそれが判らなかった)
潤朱思は、いまは病院で治療を受けている。
どうなったかは詳しくは聞いていない。
だけど、彼女にとっては理解できなかったのだろう、ということがわかる。
「私も少しずつ、朧様の事を思い出してきました」
夢の中で、時々、りんによく似た少年と遊んでいることがある。
それは最初はりんの姿で、やがて銀色の髪の少年に変わる。
「きっと、そのうち全部思い出すのか、それとも忘れてしまうのか、わかりませんけど」
「だったら、傍で確かめさせてください」
朧が言った。
「あなたの傍で、最初にあなたに言葉を聞きたいんです」
「ええ、必ず」
キイロは頷く。
「必ず、お約束を守ります」
キイロはふと顔をあげた。
「そういえば朧様、この指輪、結婚指輪、とおっしゃいましたよね」
「ええ、そうですが」
「でしたら、朧様のは?」
「ありますよ、ここに」
無造作に差し出された指輪を、キイロは受け取った。
「では、これは私から朧様に」
すると朧は急に目を丸くして驚く。
「え?私に?ですか?」
「当たり前じゃないですか。他に誰が」
「え、ちょっと待ってください、心の準備が」
なぜかあたふたしはじめて、キイロはちょっと呆れた。
「どうして慌てているんですか?」
「慌てますよ!だって、そんな、想像もしていなかったですし」
「結婚指輪ならお互いにはめるのでは?」
「そうですけど」
急にあたふたしはじめた朧に、キイロはおかしくなってしまった。
「往生際が悪いです」
「だって、その。あなたから、指輪をはめてもらうなんて」
「もらうなんて?」
「その……夢みたいで」
「朧様が用意されたのでは?」
「そうですけど!」
朧はなぜか焦っていた。
「だってずっと、あなたを見つけるまで、本当にあなたがいるのかどうかすら、僕は不安で仕方なくて」
「不安?」
「ええ。見つけたあなたは、昔と変わらないだろうか。僕と結婚するのが嫌じゃないだろうか。嫌だとしても、必ず好きになってもらおうとか。諦めるつもりはなかったので」
指輪も、と朧は頬を染めて言った。
「作る時に、こんな風に、とずっと考えていて。注文して。あなたの指にはめたらどんな風に見えるかなとかいろいろ考えていたのですが」
「ですが?」
「―――――自分があなたにつけて貰うのは、全く想像していなくて、その」
キイロは驚いて目を丸くした。
この人は、照れているのだ。
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