わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います

あきた

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第十四章

98・夫婦一緒に

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 式の間、社殿がおろそかになるとまたなにか起こってはいけないということで、卵は常に近くにあった。
 常に担当をつけていたので、式の間もなにもおこらなかったのだが。

「なにがあった?」

 一度、奪われた事を思い出し、おぼろは焦るが女中は首を横に振った。

「いえ、なにかがあった、というよりも」

 そういって係のものが卵の所へ案内した。
 すると、皆が驚きの表情で卵を見ていた。

「朧様!」

 キイロが驚き声をあげる。
 りんの入っている、龍神の卵にひびが入っていた。

「りんちゃん!聞こえる?」

 キイロが近づき声をかけると、一瞬卵はぐらっと揺れた。
 だが、それからは動きを止めて、また動かなくなった。

「さっき、急にひびが入ったのですが」
「もうすぐ孵るのかしら?」

 キイロはそっと卵に触れた。
 やっぱり卵はずっと暖かいし、心音のような鳴動をくっつけたキイロの手のひらに伝えてくる。

「どうでしょうか。前の卵も随分と時間がかかったようですし」

 無理に卵をはがす訳にもいかず、キイロはしゅんとなった。

「すぐに生まれてくると思ったのに」
「―――――様子を見ましょう。どうせあなたはずっとここに居るんですから」
「ええ、そうですね」

 卵のまま、孵ってくるのを待つだけなのは残念だが、それでも孵りそうな雰囲気が見れたのは良いことだとキイロは思う。

「りんちゃんも、結婚式に出たかったのかな」
「そうかもしれませんね。案外、好物を用意したらすぐに出てくるかも」

 朧の言葉に、キイロは笑った。

「ええ、本当に」

 早く孵ってくれたらいい。
 そうしたら、また一緒に遊ぶことができるのにな、とキイロは思った。

「りんちゃんが帰ってきたら」
「その時は夫婦で一緒に育てましょう」

 朧がキイロの肩を抱き、キイロも頷いた。

 薄氷の屋敷は、後継者と、その結婚式、そして龍神の卵が孵りそうだ、との事で更に盛り上がりを見せ、暫くその幸福な空気は屋敷全体を包むのだった。


 結婚式を終え、暫く薄氷の屋敷で過ごしていたキイロと朧だが、徐々に朧の屋敷に居を移すことになった。

「私の独身時代の屋敷で申し訳ありませんが、あちらのほうがあなたも気楽でしょう。私も仕事が忙しくなりますし」
「どうせ敷地内ですから、お気になさらず」

 本来なら継承者となった朧がこの屋敷の主になるのだが、堂々と外部にお披露目したわけではないので気づかれていない。

「私としてはあなたを母に取られるのは少々癪なんですよ」
「朧様ったら。お母さまなのに」
「だからですよ。母も私も、あなたが好きなんです」
「もう」

 仕方ないな、と笑い、キイロは頷いた。

「でしたら、梅花にお願いして素敵な家にしておきます」
「いいですね。あなたの作った部屋なら私も帰るのが楽しみです」

 梅花は薄氷家専門の商人になっている。
 デパートからの仕入れや営業、キイロが朧の妻として表にでるときに必要なもの、全てを担ってくれている。

「いまは梅花に勉強を教わっているんです。西洋では、壁紙のセンスまで奥様の仕事になるんですって」
「ええ、屋敷を支配するのはその家の妻ですね。それも貴族の話ではありますが、あなたは気にせず。この家に友人以外を招くつもりはありませんから」
「そう言われてほっとしました。では、私の好みにさせていただきます」

 なにもしなくて良いと言われてもやっぱり動いていないと自分が落ち着かない。

「では、家の事はよろしく頼みます」
「はい、行ってらっしゃいませ」

 キイロは朧に頭を下げた。
 暫くの休暇を終えた朧は、仕事に戻る日が来たのだ。

「必ず、帰ってきます」
「ええ。約束ですよ」

 朧とキイロの二人は互いに見つめ合い、口づけ、抱きしめあった。


 この言葉はそれから朧が軍を退役するまで、欠けることが一度もなかった。
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