わたしにしか懐かない龍神の子供(?)を拾いました~可愛いんで育てたいと思います

あきた

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第十五章

99・孵化

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 薄氷うすらいの屋敷はやたら広く、そこに勤めているものですら、わからない場所がある。
 屋敷内ですらそうなのだから、敷地内ともなるととんでもなく広く、結局白磁はくじは迷ってしまった。

「わっかんねえなあ。どこだよここ」

 うんざりしながら森のような木々の間をかきわけていくと、頭上から「コラ!」と声がした。

「まったくもう!なんでそう勝手にどっか行っちゃうの!」

 怒鳴ったのは幼馴染で、なおかつこの屋敷の娘、小蘭しゃおらんだ。

「わりぃって。いけるとおもったんだもん」
「無理に決まってるでしょ!お父様に叱られるわよ」
「小蘭のトーチャン優しいじゃん。こわくなんかないぞー、おれんちなんか、とーちゃんもかーちゃんも滅茶苦茶こわいんだからな!」
「でもあんたんちのおとーさん、お料理が上手じゃないの。うらやましい!」
「それはそうだ!コックだもんな!」

 えへんと白磁は胸を張る。
 やっと森を抜け、抜けようとすると目の前に美しい泉が現れた。

「うわ、なんだここ!すげーきれい!」

 小蘭はそこではっと気づく。

「あ、ここ近づいちゃ駄目って怒られるところ!」
「なんで?」
「えらいりゅーじんさまが眠ってるんですって」
「えらいりゅーじん?おまえんちのトーチャンより?」
「お父様は龍神じゃないの。あくまで龍神さまの……ちょっと、なに勝手に行ってるの!」

 白磁は泉の中の社に続く橋を見つけ、駆け抜けた。

(あれ?これまで橋なんかあったっけ?)

 小蘭は首をかしげたが、ここににはあまり近づかないように言われていたから思い出せない、というより覚えていない。

「こらー!白磁!本当に怒られるわよ!」

 そう言って追いかけると、白磁は社の扉を開けて中へ入って行った。

「すっげえ!でっけえ卵がある!」

 そこには大きな、輝く卵があった。
 小蘭も話には聞いていたが、目にするのは初めてだ。

「龍神様の卵だ……」
「まじで?これが?うわあ。だからでけえのか」

 触ろうとした白磁だったが、指先がばちんと弾かれた。

「いってぇ!」
「ほら、神様が怒ってるのよ!やめなさい」
「ちぇ。なんかスゲー痛かった」
「そりゃ勝手に触ったら怒られるわよ。龍神様、ごめんなさい。こいつバカなんです」
「なんだと小蘭!もうソーダ飲ましてやんねーぞ!」
「別にあんたのお父様か梅花に貰うからいいもん」
「うちのカーチャン呼び捨てにすんな!」
「わたしたちお友達だし、お母様もそう呼んでるからいいって言われたもん」

 つーんと小蘭がそっぽを向いた、その時だった。

『……ダ、』

 うん?と二人は顔を見合わせた。

「いま、なんか言った?」
「ううん?お前じゃないのか?」
「違うわよ。なんか……声、が」

 そういってお互い顔を見合わせ、もう一度声の主を探した。

『―――――たい、のう、』

「だから、いま声が」
「したけど、でもどこから」

 二人が社の中を見渡す。
 でも人の気配はなく、一体誰が喋っているのか、ときょろきょろとしたその時だ。
 ぴしっ。
 小さな音が響いた。

「なに?」
「いま、なんか音がしたような」

 ぴしっ、みしっ。
 なにかが裂けるような音が響く。

「え、なにこわい。まさか社が壊れたり」

 二人が同時に上を見上げ、再び目を戻すと、大きな卵は、ヒビがどんどん広がっていた。

「えっ、なにこれ!ひょっとしていまさっきからしている音って」

 ぴしっ、ぴしっ、めりめり、という音が響き。

「まさか、本当に神様が生まれるのか?」
「わ、わかんない」

 小蘭は白磁にしがみつき、動けず、しかし目の前の卵のヒビが入り、割れていくのをじっと見つめていた。

 突然、にょきっと細い腕が出てきて、二人は同時に「うわー!!!」と叫んでしまった。


「さわがしいのう……まったく、目が覚めてしまった」
 そういって卵の中から、白磁、小蘭と年が変わらないくらいの少年が出て来た。
「うわ!」
「きゃあ!」
 少年は全裸で、白磁は慌てて着ていた羽織を脱いで少年の腰に巻いた。
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