【完結】陰キャなΩは義弟αに嫌われるほど好きになる

grotta

文字の大きさ
12 / 48

12.蒼司の知人(1)

しおりを挟む
プラネタリウムを見た後はまた車に乗って移動した。

「大丈夫だったか?」
「え? 何が?」
「人が多い場所は苦手なんだろ?」
「あ、うん。暗くて、思ってたよりひと目が気にならなかった。みんな星を見るのに夢中だしね。薬も効いてるみたいだし、怖くなかったよ。ありがとう」
「ならいい。具合でも悪くなられたら困るからな」
「父さんの手前?」
「――そうだ」

(……それでも、心配してくれてるんだから意外と優しいとこあるよね)

車に乗って約10分程で次の目的地に到着した。今度の訪問先はカフェだった。
白い木造平屋の建物がぱっと目を引く。敷地内にはヤシの木が植えてあり、南国のリゾート地を訪れたかのような雰囲気だ。奥に進んで行くと、白い砂を敷き詰めた、まるでビーチのようなテラス席まであって驚いた。この日は天気がよく、本当に海外にでも来たみたいだった。あちこちで写真を撮っている客が楽しそうにしている。

「すごいねえ。僕が若かった頃とはなんか違うなぁ」

そもそも高校の途中で引きこもりになってしまったので、当時のカフェ事情も詳しくはないのだが。

店内は若い女の子たちやカップル、子連れ客で賑わっている。テラス席はペット同伴可能らしい。
絵になりそうな場所がたくさんあって、あちこちで写真を撮ることができた。さっきとは違ってここではすごく明るい写真が撮れた。
注文した料理とドリンクも含めて一通り撮影をし、僕たちはランチを食べ始めた。

「このクレープ、見た目もおしゃれだし味も美味しいね」
「そうだな」

さっきのプラネタリウムで蒼司は二人の女性に声を掛けられていた。ものすごく人気のモデルっていうわけじゃないけれど、知ってる人は知ってるっているというところだ。彼のことを知らない人でも、そのルックスとアルファのオーラに惹き付けられてチラチラと視線を送られているのがわかる。
こうして皆の視線が彼に行くので、思った通り僕は誰からも見られることなく食事ができた。
「たまには日の光を浴びろ」と言う蒼司くんがテラス席を選んだので、砂浜風の庭を見渡しながらクレープを食べた。

「お前、本当に昼飯がそんな甘いのでいいのか?」
「うん。僕、パンケーキをお昼に食べたりするし。朝ごはんがショートケーキってこともあるからなんともないよ」
「どんだけ甘党なんだよ……」

蒼司は食事系のクレープ(サーモンとレタスがたっぷりでこれも美味しそうだ)を注文したけど、僕は苺とチョコレートのクレープを選んでいた。彼は甘党の僕のことを不思議そうに見ているけど、そんなにおかしいだろうか。食通の従兄弟にも呆れられてはいるのだが、自分としてはこれが普通になってしまっていた。

(オメガって、ホルモンの関係で妙に甘い物食べたくなったりするんだよね)

そうしてどうでもいいことを話しながら食事していると、二人組の女性客がテラス席に姿を現した。そして、こちらに向かって声を掛けてきた。

「あれ、Aoじゃない?」

すごく華やでスタイルの良い女の子だ。髪の毛は根本がダークブラウンで、毛先にかけてシルバーベージュのグラデーションカラーになっている。花柄の服は大胆なオフショルダーで、耳や指には派手なアクセサリー。

(あれ……なんだか見覚えが……)

「こんなところで会うなんて運命感じる~♡」などと親しげに蒼司に笑いかける彼女を僕はどこかで見たことがある気がして記憶を辿る。

(あ! わかった。Aoと一緒に雑誌に出てたモデルさんだ……名前はなんだっけな)


しおりを挟む
感想 70

あなたにおすすめの小説

【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。

きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。 自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。 食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。

寡黙なオオカミαにストーカー気質のネコΩが嫁いだ話

かとらり。
BL
 誰もがケモミミとバース性を持つ世界。  澪は猫種のΩだった。  引っ込み思案の澪は半ばストーカーのように密かに追いかけている憧れの人がいる。  狼種のαの慶斗だ。  そんな慶斗にいきなり嫁ぐことが決定した澪。話しかけるのも無理なのに結婚なんてできるの?  しかも慶斗は事情があるらしくー…

【完結済】キズモノオメガの幸せの見つけ方~番のいる俺がアイツを愛することなんて許されない~

つきよの
BL
●ハッピーエンド● 「勇利先輩……?」  俺、勇利渉は、真冬に照明と暖房も消されたオフィスで、コートを着たままノートパソコンに向かっていた。  だが、突然背後から名前を呼ばれて後ろを振り向くと、声の主である人物の存在に思わず驚き、心臓が跳ね上がった。 (どうして……)  声が出ないほど驚いたのは、今日はまだ、そこにいるはずのない人物が立っていたからだった。 「東谷……」  俺の目に映し出されたのは、俺が初めて新人研修を担当した後輩、東谷晧だった。  背が高く、ネイビーより少し明るい色の細身スーツ。  落ち着いたブラウンカラーの髪色は、目鼻立ちの整った顔を引き立たせる。  誰もが目を惹くルックスは、最後に会った三年前となんら変わっていなかった。  そう、最後に過ごしたあの夜から、空白の三年間なんてなかったかのように。 番になればラット化を抑えられる そんな一方的な理由で番にさせられたオメガ しかし、アルファだと偽って生きていくには 関係を続けることが必要で…… そんな中、心から愛する人と出会うも 自分には噛み痕が…… 愛したいのに愛することは許されない 社会人オメガバース あの日から三年ぶりに会うアイツは… 敬語後輩α × 首元に噛み痕が残るΩ

変異型Ωは鉄壁の貞操

田中 乃那加
BL
 変異型――それは初めての性行為相手によってバースが決まってしまう突然変異種のこと。  男子大学生の金城 奏汰(かなしろ かなた)は変異型。  もしαに抱かれたら【Ω】に、βやΩを抱けば【β】に定着する。  奏汰はαが大嫌い、そして絶対にΩにはなりたくない。夢はもちろん、βの可愛いカノジョをつくり幸せな家庭を築くこと。  だから護身術を身につけ、さらに防犯グッズを持ち歩いていた。  ある日の歓楽街にて、β女性にからんでいたタチの悪い酔っ払いを次から次へとやっつける。  それを見た高校生、名張 龍也(なばり たつや)に一目惚れされることに。    当然突っぱねる奏汰と引かない龍也。  抱かれたくない男は貞操を守りきり、βのカノジョが出来るのか!?                

【完結】Ωになりたくない僕には運命なんて必要ない!

なつか
BL
≪登場人物≫ 七海 千歳(ななみ ちとせ):高校三年生。二次性、未確定。新聞部所属。 佐久間 累(さくま るい):高校一年生。二次性、α。バスケットボール部所属。 田辺 湊(たなべ みなと):千歳の同級生。二次性、α。新聞部所属。 ≪あらすじ≫ α、β、Ωという二次性が存在する世界。通常10歳で確定する二次性が、千歳は高校三年生になった今でも未確定のまま。 そのことを隠してβとして高校生活を送っていた千歳の前に現れたαの累。彼は千歳の運命の番だった。 運命の番である累がそばにいると、千歳はΩになってしまうかもしれない。だから、近づかないようにしようと思ってるのに、そんな千歳にかまうことなく累はぐいぐいと迫ってくる。しかも、βだと思っていた友人の湊も実はαだったことが判明。 二人にのαに挟まれ、果たして千歳はβとして生きていくことができるのか。

胎児の頃から執着されていたらしい

夜鳥すぱり
BL
好きでも嫌いでもない幼馴染みの鉄堅(てっけん)は、葉月(はづき)と結婚してツガイになりたいらしい。しかし、どうしても鉄堅のねばつくような想いを受け入れられない葉月は、しつこく求愛してくる鉄堅から逃げる事にした。オメガバース執着です。 ◆完結済みです。いつもながら読んで下さった皆様に感謝です。 ◆表紙絵を、花々緒さんが描いて下さいました(*^^*)。葉月を常に守りたい一途な鉄堅と、ひたすら逃げたい意地っぱりな葉月。

ずっと二人で。ー俺と大好きな幼なじみとの20年間の恋の物語ー

紗々
BL
俺は小さな頃からずっとずっと、そうちゃんのことが大好きだった───。 立本樹と滝宮颯太は、物心ついた頃からの幼なじみ。いつも一緒で、だけど離れて、傷付けあって、すれ違って、また近づいて。泣いたり笑ったりしながら、お互いをずっと想い合い大人になっていく二人の物語です。 ※攻めと女性との絡みが何度かあります。 ※展開かなり遅いと思います。

【完結】おじさんはΩである

藤吉とわ
BL
隠れ執着嫉妬激強年下α×αと誤診を受けていたおじさんΩ 門村雄大(かどむらゆうだい)34歳。とある朝母親から「小学生の頃バース検査をした病院があんたと連絡を取りたがっている」という電話を貰う。 何の用件か分からぬまま、折り返しの連絡をしてみると「至急お知らせしたいことがある。自宅に伺いたい」と言われ、招いたところ三人の男がやってきて部屋の中で突然土下座をされた。よくよく話を聞けば23年前のバース検査で告知ミスをしていたと告げられる。 今更Ωと言われても――と戸惑うものの、αだと思い込んでいた期間も自分のバース性にしっくり来ていなかった雄大は悩みながらも正しいバース性を受け入れていく。 治療のため、まずはΩ性の発情期であるヒートを起こさなければならず、謝罪に来た三人の男の内の一人・研修医でαの戸賀井 圭(とがいけい)と同居を開始することにーー。

処理中です...