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15.人をダメにする義弟
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それ以来、蒼司は以前よりも刺々しくなくなった気がする。相変わらずぶっきらぼうだし、素っ気ないところはある。だけど、家に居る時はよくリビングに顔を出して一緒にテレビを見たりもするし、向こうから話し掛けられるようにもなった。
(えー、待って待って。冷たいのと優しいのどっちか迷う……)
僕は自分が悩んでもなんの意味もない究極の二択について思いを巡らせた。
(僕を虫けらのように見るあの視線も良かった。間違いなく良かった! だけど、たまにふっと微笑みかけられたときの胸がギュッとなる感じもやばいんだよね)
ソファに座ってバカなことを考えていたら、蒼司がお風呂から上がってきた。
「なんだ、まだ起きてたのか?」
「あ、このドラマの続きが気になって……」
僕は咄嗟に嘘をついた。本当はドラマの内容なんて全然頭に入って来ていなかった。
「ふーん、面白いの?」
「え? あ……面白い、よ」
僕がついた嘘を真に受けて、蒼司が隣に腰掛けた。ソファはL字型で、僕はテレビの正面に座っていた。つい今しがた彼についてバカみたいなことを考えていたし、いきなり隣に座られてなんとなく気まずかった。
「あ、正面で見たいよね。僕はこっちで見るからどうぞ広く使って……」
僕は彼から離れた位置に座ろうと思い立ち上がり、蒼司の前を通った。すると手首を掴まれて、ぐいっと引っ張られる。そして彼の膝の間に座らされてしまった。
(ええっ――? なんだ、この体勢……)
後ろから抱きかかえられるみたいな姿勢で座らされて動揺する。
「ちょ、ちょっと、どうしたの?」
「黙ってろ」
「あ、蒼司くん……?」
「うるせーな。ちょっと今日イラつくことあったんだよ。すこし匂い嗅がせろ」
蒼司はそう言って僕の首筋に鼻をくっつけた。こんなに密着したことがなく、僕は心臓が破裂しそうなくらいドキドキした。
(そういえば今日はちょっと疲れてる様子ではあったけど……)
大学か、モデルの仕事で何か嫌なことでもあったのだろうか。帰ってからもずっと不機嫌そうにはしていた。
こういうときは一人にしてあげた方が良いのかもしれない。だけど、湯上がりの彼の体温に包まれたら頭がぼんやりしてきて身動きができなくなってしまった。僕は先にお風呂に入っていたが、エアコンで涼しく保たれた部屋でくだらない妄想をしていたお陰で、体がすっかり冷えていたのだ。
(蒼司くんあったかいな)
「はー……くそ、やっぱ効くな」
「え?」
「なんでもねーよ」
疲れた様子で僕の肩におでこを乗せている彼をなるべく意識しないよう努力する。僕はさっきよりも一層頭に入ってこないドラマを必死で見続けた。
蒼司くんからは、お風呂上がりでもとても心地良いシダーウッドの香りがする。同じシャンプーとボディソープを使っててもするってことはこれが蒼司のフェロモンの一種なのかもしれない。
(うう、良い匂い過ぎてつら……変な気を起こさないように、ドラマに集中! でも誰だっけこのおじさん? 主人公の女の子の父親……? ああ、良い匂い……抱きついて思いっきり吸いたい――だめだめ! あの女の子が悪い男に騙されてたんだよね。そうそう――それでこのまま蒼司くんに押し倒されたら僕どうなっちゃうかな……うなじ、匂い嗅ぐだけじゃなくて舐めてほしい……じゃない、何考えてるんだ!)
蒼司と同居して約一ヶ月。僕は彼の行動に完全に振り回されるようになっていた。
彼は僕のことを嫌いだと言いながら、度々こうやって触れてくる。そして僕は、自分のことを好きにならない相手に触られる心地よさを知ってしまった。
(これって最高では……?)
僕だけが彼に好意を抱いていて、彼は僕に素っ気ない。なのに、たまに何の気なしにスキンシップしてくれる。
そこにいやらしさは無くて……こっちはちょっと興奮しちゃいそうになるんだけど、彼の方にその気は無い。
僕が「冷たい蒼司か優しい蒼司か」なんてキモい妄想をしてるのがバレさえしなければ、いい感じに兄弟としてやっていけそうだ。
(だけど、僕もう頭がショートしそうなんだよね……不機嫌そうだと思ったらいきなりぬいぐるみみたいに抱きしめられる僕の身にもなってほしいよ)
その身勝手な感じがまた良いんだけど――と僕は相変わらずくだらないことを考え続けていた。
(えー、待って待って。冷たいのと優しいのどっちか迷う……)
僕は自分が悩んでもなんの意味もない究極の二択について思いを巡らせた。
(僕を虫けらのように見るあの視線も良かった。間違いなく良かった! だけど、たまにふっと微笑みかけられたときの胸がギュッとなる感じもやばいんだよね)
ソファに座ってバカなことを考えていたら、蒼司がお風呂から上がってきた。
「なんだ、まだ起きてたのか?」
「あ、このドラマの続きが気になって……」
僕は咄嗟に嘘をついた。本当はドラマの内容なんて全然頭に入って来ていなかった。
「ふーん、面白いの?」
「え? あ……面白い、よ」
僕がついた嘘を真に受けて、蒼司が隣に腰掛けた。ソファはL字型で、僕はテレビの正面に座っていた。つい今しがた彼についてバカみたいなことを考えていたし、いきなり隣に座られてなんとなく気まずかった。
「あ、正面で見たいよね。僕はこっちで見るからどうぞ広く使って……」
僕は彼から離れた位置に座ろうと思い立ち上がり、蒼司の前を通った。すると手首を掴まれて、ぐいっと引っ張られる。そして彼の膝の間に座らされてしまった。
(ええっ――? なんだ、この体勢……)
後ろから抱きかかえられるみたいな姿勢で座らされて動揺する。
「ちょ、ちょっと、どうしたの?」
「黙ってろ」
「あ、蒼司くん……?」
「うるせーな。ちょっと今日イラつくことあったんだよ。すこし匂い嗅がせろ」
蒼司はそう言って僕の首筋に鼻をくっつけた。こんなに密着したことがなく、僕は心臓が破裂しそうなくらいドキドキした。
(そういえば今日はちょっと疲れてる様子ではあったけど……)
大学か、モデルの仕事で何か嫌なことでもあったのだろうか。帰ってからもずっと不機嫌そうにはしていた。
こういうときは一人にしてあげた方が良いのかもしれない。だけど、湯上がりの彼の体温に包まれたら頭がぼんやりしてきて身動きができなくなってしまった。僕は先にお風呂に入っていたが、エアコンで涼しく保たれた部屋でくだらない妄想をしていたお陰で、体がすっかり冷えていたのだ。
(蒼司くんあったかいな)
「はー……くそ、やっぱ効くな」
「え?」
「なんでもねーよ」
疲れた様子で僕の肩におでこを乗せている彼をなるべく意識しないよう努力する。僕はさっきよりも一層頭に入ってこないドラマを必死で見続けた。
蒼司くんからは、お風呂上がりでもとても心地良いシダーウッドの香りがする。同じシャンプーとボディソープを使っててもするってことはこれが蒼司のフェロモンの一種なのかもしれない。
(うう、良い匂い過ぎてつら……変な気を起こさないように、ドラマに集中! でも誰だっけこのおじさん? 主人公の女の子の父親……? ああ、良い匂い……抱きついて思いっきり吸いたい――だめだめ! あの女の子が悪い男に騙されてたんだよね。そうそう――それでこのまま蒼司くんに押し倒されたら僕どうなっちゃうかな……うなじ、匂い嗅ぐだけじゃなくて舐めてほしい……じゃない、何考えてるんだ!)
蒼司と同居して約一ヶ月。僕は彼の行動に完全に振り回されるようになっていた。
彼は僕のことを嫌いだと言いながら、度々こうやって触れてくる。そして僕は、自分のことを好きにならない相手に触られる心地よさを知ってしまった。
(これって最高では……?)
僕だけが彼に好意を抱いていて、彼は僕に素っ気ない。なのに、たまに何の気なしにスキンシップしてくれる。
そこにいやらしさは無くて……こっちはちょっと興奮しちゃいそうになるんだけど、彼の方にその気は無い。
僕が「冷たい蒼司か優しい蒼司か」なんてキモい妄想をしてるのがバレさえしなければ、いい感じに兄弟としてやっていけそうだ。
(だけど、僕もう頭がショートしそうなんだよね……不機嫌そうだと思ったらいきなりぬいぐるみみたいに抱きしめられる僕の身にもなってほしいよ)
その身勝手な感じがまた良いんだけど――と僕は相変わらずくだらないことを考え続けていた。
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