18 / 48
18.蓉平のフェロモン効果(蒼司視点)
しおりを挟む
しかしそれで引き下がるアンジュではない。なんだかんだカフェを出るまで一緒に座っていた。
蓉平はずっと黙って座っていたが、トイレへ行って戻ってきてからちょっとだけいつもと違う匂いがしていることに気がついた。
(いよいよストレスが限界に達したか。今日はここまでだな)
アンジュが絡んでこなければ予定通り公園まで行けただろうが、初日から無理をすることはないと判断して帰宅することにした。
帰り道、蓉平から申し訳なさそうに謝られた。どうやら自分のせいで撮影の予定をこなせなかったと心配しているようだった。
撮影は第二の目的に過ぎなかったので、俺的にはこいつを外に連れ出すという一番の目的は達成できていた。だから蓉平が気に病むことはないのだが、それを正直に言うわけにもいかない。
気まずくてつい不機嫌な態度を取ってしまい、お互い無言でマンションに帰った。車に乗っている間中、蓉平はなんとなくいつもより元気がなさそうだった。
その後部屋に戻ってから、顔を赤くしているあいつを見て、てっきり熱が出て具合が悪くなったのだと思いすごく焦った。おかしなことに、蓉平の体調が悪いということが俺にとって妙に不快なのだ。「不快」――というと違うかもしれない。どちらかというと「不安」と言ったほうがいいだろうか。
結局熱はなくてただの日焼けだったのだが、俺のせいでもあったのであいつの顔に薬を塗ってやった。元々白くて透き通るような肌だ。皮膚を傷めないようにそっと薬を塗っていると、彼は次第にリラックスした表情を見せた。それと同時に俺の不安な気持も落ち着いてきた。
体調を崩すようなことをさせて申し訳ないという気持ちはあったが、こちらから謝るようなことでもないと思っていた。しかしあいつが「きもちいい……」とこぼしたのを聞いて急に胸を締め付けられ手が止まった。こいつは、なぜか知らないが俺のことを信用している。連れ回されて嫌な思いをしたのに、こうして無防備に目を閉じてされるがままになっているのだ。
「さっきはごめんな」と柄にもなく素直な謝罪の言葉が口をついて出た。
身体を楽にして休んだほうが良いだろうと彼の身体を横たわらせると、蓉平は目を丸くした。
彼の顔が更に赤くなり、フェロモンの香りがふわふわと漂ってきた。それがいつものいい香りだったので俺はほっとした。
(よかった――さっきまでの異様な香りじゃない)
「いつもの匂いに戻ったな。そこで寝てろ」
◇◇◇
今度から一緒に出掛けるときはもっと注意してやらないといけない。大体にして、アンジュみたいな人間が来るような店を選ぶのは避けよう。もっと人が少ない場所からやり直しだ。
今回の件と、その後にあいつと一緒に過ごすようになってわかったことがある。それは、あいつが気分良くにこにこしていると俺の体調も良いということだ。
どういうことかというと、俺が通常の体調のときにあいつのフェロモンを浴びるとつい「キスしたい」「押し倒したい」という欲求が湧いてくる。しかし俺の体調が悪い時や機嫌が悪いときにあいつの匂いを嗅ぐと、不思議とリラックスできるのだ。栄養ドリンクなんかよりよっぽど「効く」。
それに気づいてからは、嫌なことがあったり体調が優れないときはなるべくリビングに居るようにしている。
薬を塗った時に確信したが、あいつは俺に触れられるのを嫌がっていない。むしろ喜んでいる。それで、俺が疲れている時なんかにあいつのことを抱きしめると彼からフェロモンがぶわっと出てきてものすごく癒やされる。
彼の独り立ちのため協力しているのだから、これくらいのことは許されても良いはずだ。
なんならもっと先に進むことを彼は望んでいるのかもしれない。それは、また追い追い考えよう。
蓉平はずっと黙って座っていたが、トイレへ行って戻ってきてからちょっとだけいつもと違う匂いがしていることに気がついた。
(いよいよストレスが限界に達したか。今日はここまでだな)
アンジュが絡んでこなければ予定通り公園まで行けただろうが、初日から無理をすることはないと判断して帰宅することにした。
帰り道、蓉平から申し訳なさそうに謝られた。どうやら自分のせいで撮影の予定をこなせなかったと心配しているようだった。
撮影は第二の目的に過ぎなかったので、俺的にはこいつを外に連れ出すという一番の目的は達成できていた。だから蓉平が気に病むことはないのだが、それを正直に言うわけにもいかない。
気まずくてつい不機嫌な態度を取ってしまい、お互い無言でマンションに帰った。車に乗っている間中、蓉平はなんとなくいつもより元気がなさそうだった。
その後部屋に戻ってから、顔を赤くしているあいつを見て、てっきり熱が出て具合が悪くなったのだと思いすごく焦った。おかしなことに、蓉平の体調が悪いということが俺にとって妙に不快なのだ。「不快」――というと違うかもしれない。どちらかというと「不安」と言ったほうがいいだろうか。
結局熱はなくてただの日焼けだったのだが、俺のせいでもあったのであいつの顔に薬を塗ってやった。元々白くて透き通るような肌だ。皮膚を傷めないようにそっと薬を塗っていると、彼は次第にリラックスした表情を見せた。それと同時に俺の不安な気持も落ち着いてきた。
体調を崩すようなことをさせて申し訳ないという気持ちはあったが、こちらから謝るようなことでもないと思っていた。しかしあいつが「きもちいい……」とこぼしたのを聞いて急に胸を締め付けられ手が止まった。こいつは、なぜか知らないが俺のことを信用している。連れ回されて嫌な思いをしたのに、こうして無防備に目を閉じてされるがままになっているのだ。
「さっきはごめんな」と柄にもなく素直な謝罪の言葉が口をついて出た。
身体を楽にして休んだほうが良いだろうと彼の身体を横たわらせると、蓉平は目を丸くした。
彼の顔が更に赤くなり、フェロモンの香りがふわふわと漂ってきた。それがいつものいい香りだったので俺はほっとした。
(よかった――さっきまでの異様な香りじゃない)
「いつもの匂いに戻ったな。そこで寝てろ」
◇◇◇
今度から一緒に出掛けるときはもっと注意してやらないといけない。大体にして、アンジュみたいな人間が来るような店を選ぶのは避けよう。もっと人が少ない場所からやり直しだ。
今回の件と、その後にあいつと一緒に過ごすようになってわかったことがある。それは、あいつが気分良くにこにこしていると俺の体調も良いということだ。
どういうことかというと、俺が通常の体調のときにあいつのフェロモンを浴びるとつい「キスしたい」「押し倒したい」という欲求が湧いてくる。しかし俺の体調が悪い時や機嫌が悪いときにあいつの匂いを嗅ぐと、不思議とリラックスできるのだ。栄養ドリンクなんかよりよっぽど「効く」。
それに気づいてからは、嫌なことがあったり体調が優れないときはなるべくリビングに居るようにしている。
薬を塗った時に確信したが、あいつは俺に触れられるのを嫌がっていない。むしろ喜んでいる。それで、俺が疲れている時なんかにあいつのことを抱きしめると彼からフェロモンがぶわっと出てきてものすごく癒やされる。
彼の独り立ちのため協力しているのだから、これくらいのことは許されても良いはずだ。
なんならもっと先に進むことを彼は望んでいるのかもしれない。それは、また追い追い考えよう。
23
あなたにおすすめの小説
【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。
きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。
自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。
食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。
寡黙なオオカミαにストーカー気質のネコΩが嫁いだ話
かとらり。
BL
誰もがケモミミとバース性を持つ世界。
澪は猫種のΩだった。
引っ込み思案の澪は半ばストーカーのように密かに追いかけている憧れの人がいる。
狼種のαの慶斗だ。
そんな慶斗にいきなり嫁ぐことが決定した澪。話しかけるのも無理なのに結婚なんてできるの?
しかも慶斗は事情があるらしくー…
【完結済】キズモノオメガの幸せの見つけ方~番のいる俺がアイツを愛することなんて許されない~
つきよの
BL
●ハッピーエンド●
「勇利先輩……?」
俺、勇利渉は、真冬に照明と暖房も消されたオフィスで、コートを着たままノートパソコンに向かっていた。
だが、突然背後から名前を呼ばれて後ろを振り向くと、声の主である人物の存在に思わず驚き、心臓が跳ね上がった。
(どうして……)
声が出ないほど驚いたのは、今日はまだ、そこにいるはずのない人物が立っていたからだった。
「東谷……」
俺の目に映し出されたのは、俺が初めて新人研修を担当した後輩、東谷晧だった。
背が高く、ネイビーより少し明るい色の細身スーツ。
落ち着いたブラウンカラーの髪色は、目鼻立ちの整った顔を引き立たせる。
誰もが目を惹くルックスは、最後に会った三年前となんら変わっていなかった。
そう、最後に過ごしたあの夜から、空白の三年間なんてなかったかのように。
番になればラット化を抑えられる
そんな一方的な理由で番にさせられたオメガ
しかし、アルファだと偽って生きていくには
関係を続けることが必要で……
そんな中、心から愛する人と出会うも
自分には噛み痕が……
愛したいのに愛することは許されない
社会人オメガバース
あの日から三年ぶりに会うアイツは…
敬語後輩α × 首元に噛み痕が残るΩ
変異型Ωは鉄壁の貞操
田中 乃那加
BL
変異型――それは初めての性行為相手によってバースが決まってしまう突然変異種のこと。
男子大学生の金城 奏汰(かなしろ かなた)は変異型。
もしαに抱かれたら【Ω】に、βやΩを抱けば【β】に定着する。
奏汰はαが大嫌い、そして絶対にΩにはなりたくない。夢はもちろん、βの可愛いカノジョをつくり幸せな家庭を築くこと。
だから護身術を身につけ、さらに防犯グッズを持ち歩いていた。
ある日の歓楽街にて、β女性にからんでいたタチの悪い酔っ払いを次から次へとやっつける。
それを見た高校生、名張 龍也(なばり たつや)に一目惚れされることに。
当然突っぱねる奏汰と引かない龍也。
抱かれたくない男は貞操を守りきり、βのカノジョが出来るのか!?
【完結】Ωになりたくない僕には運命なんて必要ない!
なつか
BL
≪登場人物≫
七海 千歳(ななみ ちとせ):高校三年生。二次性、未確定。新聞部所属。
佐久間 累(さくま るい):高校一年生。二次性、α。バスケットボール部所属。
田辺 湊(たなべ みなと):千歳の同級生。二次性、α。新聞部所属。
≪あらすじ≫
α、β、Ωという二次性が存在する世界。通常10歳で確定する二次性が、千歳は高校三年生になった今でも未確定のまま。
そのことを隠してβとして高校生活を送っていた千歳の前に現れたαの累。彼は千歳の運命の番だった。
運命の番である累がそばにいると、千歳はΩになってしまうかもしれない。だから、近づかないようにしようと思ってるのに、そんな千歳にかまうことなく累はぐいぐいと迫ってくる。しかも、βだと思っていた友人の湊も実はαだったことが判明。
二人にのαに挟まれ、果たして千歳はβとして生きていくことができるのか。
胎児の頃から執着されていたらしい
夜鳥すぱり
BL
好きでも嫌いでもない幼馴染みの鉄堅(てっけん)は、葉月(はづき)と結婚してツガイになりたいらしい。しかし、どうしても鉄堅のねばつくような想いを受け入れられない葉月は、しつこく求愛してくる鉄堅から逃げる事にした。オメガバース執着です。
◆完結済みです。いつもながら読んで下さった皆様に感謝です。
◆表紙絵を、花々緒さんが描いて下さいました(*^^*)。葉月を常に守りたい一途な鉄堅と、ひたすら逃げたい意地っぱりな葉月。
ずっと二人で。ー俺と大好きな幼なじみとの20年間の恋の物語ー
紗々
BL
俺は小さな頃からずっとずっと、そうちゃんのことが大好きだった───。
立本樹と滝宮颯太は、物心ついた頃からの幼なじみ。いつも一緒で、だけど離れて、傷付けあって、すれ違って、また近づいて。泣いたり笑ったりしながら、お互いをずっと想い合い大人になっていく二人の物語です。
※攻めと女性との絡みが何度かあります。
※展開かなり遅いと思います。
【完結】おじさんはΩである
藤吉とわ
BL
隠れ執着嫉妬激強年下α×αと誤診を受けていたおじさんΩ
門村雄大(かどむらゆうだい)34歳。とある朝母親から「小学生の頃バース検査をした病院があんたと連絡を取りたがっている」という電話を貰う。
何の用件か分からぬまま、折り返しの連絡をしてみると「至急お知らせしたいことがある。自宅に伺いたい」と言われ、招いたところ三人の男がやってきて部屋の中で突然土下座をされた。よくよく話を聞けば23年前のバース検査で告知ミスをしていたと告げられる。
今更Ωと言われても――と戸惑うものの、αだと思い込んでいた期間も自分のバース性にしっくり来ていなかった雄大は悩みながらも正しいバース性を受け入れていく。
治療のため、まずはΩ性の発情期であるヒートを起こさなければならず、謝罪に来た三人の男の内の一人・研修医でαの戸賀井 圭(とがいけい)と同居を開始することにーー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる