【完結】陰キャなΩは義弟αに嫌われるほど好きになる

grotta

文字の大きさ
21 / 48

21.義兄弟のヒートの過ごし方(3)(蒼司視点)

しおりを挟む
大学から帰ってきて玄関のドアを開けた。俺は先日提出したレポートの結果がかんばしくなく、むしゃくしゃしていた。それがいきなり良い匂いに出迎えられてすっと気分が安らいだ。

「あー、マジであいつのフェロモンは効果絶大だな」

しかし考えてみたらなんでこんなとこまで匂いがしてるんだ?
俺はちょっと胸騒ぎがして急いでリビングに入る。普段ならあいつが部屋にいれば「おかえりなさい」と出迎えてくれるのに、姿が見えない。

「蓉平? いないのか?」

こんな濃い匂いがするのに、不在なんてことは無いだろう。

「蓉平?」

キッチンにいるかと思って覗くとそこにもいない。床にはガラスの破片と、水が飛び散っていた。よく見ると点々と血が垂れた跡まである。俺はいよいよ焦りを感じて大声で義兄を呼ぶ。

「おい! どこだよ、蓉平?」

バスルームを見ると、床には大量のタオルや衣類が散らばっていた。そしてそこに蓉平がうつ伏せに倒れている。どこか怪我をしているのか、彼の周囲の衣類が血に染まっていた。

(何があったんだよ!?)

俺はぞっとして彼の傍に膝をつく。体を仰向けにし、肩を揺する。

「蓉平! おい、しっかりしろ、蓉平! おい、聞こえてるか?」

すると義兄は目を開け、「あ~……蒼司くん」と言って薄く笑みを浮かべた。しかも、息を荒げながら俺の太腿に鼻先をくっつけて匂いを嗅ぎ出した。

(――んだよ、心配かけやがって! こいつ、死んだみたいに寝るのが癖なのか?)

どうやらガラスで指を切っただけらしい。血まみれの手をまじまじと見たが、1センチくらいの切り傷で、既に血は止まっていた。洗濯物に派手に血が染みていたから、大怪我でもしたのかと焦った。
怪我が大したことないとわかってほっとしたら、急に義兄のフェロモンが気になり始めた。

(そうか、ヒートが始まって……)

「抑制剤飲もうとしてこうなったのか?」
「あ……うん」
「飲んだのか?」
「えと……飲んでない、かな?」

(こいつ、いつもながらどんくさいな。薬飲もうとしてグラス割ったのか)

このままフェロモンを巻き散らされたんじゃあまちがいなく襲ってしまう。俺はなるべく息を止めながら急いで彼に抑制剤を飲ませ、ベッドに運んだ。部屋にこもっていてもらおう。

(――それとも、抱いてやるべきなのか? こいつがしてくれって言うならまぁ、くしゃみも出ないし……やってもいいが)

そう思ったが、義兄は真っ赤な顔でハァハァ言いながらも俺に抱いてくれとは言わずただ「服を一枚貸して」と言った。

(こんなもんでいいのか? 俺と結婚する気なら、もっと積極的に誘って来るかと思ったが……やはり昔のトラウマでアルファに抱かれるのは怖いのか?)

とりあえず、こっちもラットを起こしては困る。オメガの発情フェロモンに過剰に反応すると、アルファはラットという発情状態に陥る。ラットになれば理性はふっとんでオメガを無理やりにでも抱きたくなる。こうなって義兄を怖がらせてしまえば、彼の独り立ち作戦は水の泡だ。

(俺もアルファ用の抑制剤を飲んでおこう。しかし、ヒートのオメガを間近で見るのは初めてだな)

フェロモンアレルギーがあるので、ヒートじゃないオメガでもちょっと誘惑的な匂いが出るだけで一緒にいられない。だから、完全に発情したオメガのフェロモンを浴びたのは初めてだった。

(この世のものとは思えないくらい良い匂いだな……癖になる奴がいるのも無理はない)

さっきは義兄が怪我をしたと思ってそっちに意識を奪われていた。だからフェロモンの誘惑をまともに受けずに済んだのだ。だけど、普通のときだったら無理やり押し倒していたかもしれない。
薬を服用し、ガラスを始末する。床を拭いて、バスルームも片付け始める。

「ったく、あっちもこっちも散らかしやがって……」

俺の服からあいつの残り香がする。倒れていた彼が握りしめていたグレーのTシャツは、特に血が染み付いておりもう使い物にならない。

(ヒートが来て、本来なら目の前にアルファがいれば抱かれたいと思うだろうに……)

アンジュみたいなガツガツしたオメガと違って、発情してさえも慎み深い義兄の行動に俺は少し心を動かされていた。

「ちょっとはこっちから歩み寄ってやるか」

俺的には、あいつが外で誰か恋人でも見つければいいと思っている。だが、その前に、「オメガと見れば襲いかかるようなアルファばかりじゃない」と教えてやるのも悪くない。


◇◇◇


全て片付け終えて、俺はシャワーを浴びた。

(そういや、あいつ晩飯どころか昼飯も食わずに倒れてたんじゃ……?)

ヒートのときは性欲以外の欲求が減少するとは聞いたことがあるが、何も口にせずいて良いのだろうか。アレルギーのおかげでオメガと付き合ってもヒートが来れば別れてしまっていた。なので、ヒート中のオメガをどう扱えばいいのか俺はわからなかった。

(とりあえず、飯食うかどうか聞いてみるか)

もういい加減薬も効いているだろう。義兄の部屋へ行きドアをノックする。

「おい、蓉平。晩飯どうする? 食えるか?」

しかし返事はなかった。その代わりに「うぅ……」という、くぐもったうめき声が聞こえた。

(まさか、薬の副作用で具合悪くなってるんじゃ――)

俺は返事を待たずに焦ってドアを開けた。すると、さっきより強いフェロモンが部屋に充満していた。

「うっ……なんだ、これ」

思わず口元を覆う。こちらも抑制剤を服用しているが、それでも理性を保つのが難しいほど甘い香りがする。

「あっ……ん、はぁ、はぁ……ううぅっ」

義兄がベッドの上で下半身をむき出しにし、白い尻の間に指を入れて喘いでいた。

(なんで――。いや、ヒートってこういうものか……?)

てっきり薬が効いているものと思っていた俺は、普段と違う義兄の淫らな姿をいきなり見せられて面食らった。彼はこちらに気づかず、腰を揺らめかせながらつぶやいた。

「んっ、きもちいっ……蒼司くん……あおしく……っん」

(なんだ。……こいつやっぱり俺としたいんじゃねーか)

さっき貸した俺のTシャツの匂いを嗅ぎながら自慰にふける義兄を見て、下半身に血液が集中する。
「蓉平」と名を呼ぶと義兄はこちらにようやく気づいて体を起こした。

「えっ――!? あ、蒼司くん、な、なんで……」
「セックスしたいなら素直に言えよ」
「ち、ちがう……ちがうんだ! あの、薬が効かなくて、っていうか……蒼司くんの匂い嗅いでたらなんかすごく体が熱くなってきて……ごめんなさいこんな気持ち悪いことして……」

義兄は恥じらって顔を背け、両足を閉じて下半身を隠そうとした。

「言い訳すんなよ。俺としたいんだろ?」

彼は顔を首を横に振る。

「だ、だめだよそんなの。僕ら兄弟なんだし。つ、つ、付き合ってもいないのに、そういうことしちゃだめなんだから……」
「ふーん、付き合ってればいいのか?」

(何が言いたいんだ? 結婚前提に同居させられてるのに。俺が付き合おうって言うの待ってんのか?)

「ちがう、そんなんじゃなくて……だって蒼司くんは僕と関わるの嫌でしょ」
「まあ、嫌だな」
「んっ……あ……っ!」

(え……?)

義兄は体をビクビク痙攣させ、触ってもいないペニスから白濁液を溢した。

「おい、今イッたのか?」
「はぁ……はぁ……あん、だ、だって僕……蒼司くんに嫌いって言われるの……気持ちいい、んだもん……」

俺は目の前のいやらしい生き物が何を言っているのか理解できず思考停止した。

「――何?」
「あ……ぼく、蒼司くんに嫌われるの……好きなの……」

どうやらこいつは思っていたより厄介そうだ。

(世の中に出して大丈夫なのか、こいつの本性を俺が見極めないとな)
しおりを挟む
感想 70

あなたにおすすめの小説

【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。

きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。 自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。 食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。

寡黙なオオカミαにストーカー気質のネコΩが嫁いだ話

かとらり。
BL
 誰もがケモミミとバース性を持つ世界。  澪は猫種のΩだった。  引っ込み思案の澪は半ばストーカーのように密かに追いかけている憧れの人がいる。  狼種のαの慶斗だ。  そんな慶斗にいきなり嫁ぐことが決定した澪。話しかけるのも無理なのに結婚なんてできるの?  しかも慶斗は事情があるらしくー…

【完結済】キズモノオメガの幸せの見つけ方~番のいる俺がアイツを愛することなんて許されない~

つきよの
BL
●ハッピーエンド● 「勇利先輩……?」  俺、勇利渉は、真冬に照明と暖房も消されたオフィスで、コートを着たままノートパソコンに向かっていた。  だが、突然背後から名前を呼ばれて後ろを振り向くと、声の主である人物の存在に思わず驚き、心臓が跳ね上がった。 (どうして……)  声が出ないほど驚いたのは、今日はまだ、そこにいるはずのない人物が立っていたからだった。 「東谷……」  俺の目に映し出されたのは、俺が初めて新人研修を担当した後輩、東谷晧だった。  背が高く、ネイビーより少し明るい色の細身スーツ。  落ち着いたブラウンカラーの髪色は、目鼻立ちの整った顔を引き立たせる。  誰もが目を惹くルックスは、最後に会った三年前となんら変わっていなかった。  そう、最後に過ごしたあの夜から、空白の三年間なんてなかったかのように。 番になればラット化を抑えられる そんな一方的な理由で番にさせられたオメガ しかし、アルファだと偽って生きていくには 関係を続けることが必要で…… そんな中、心から愛する人と出会うも 自分には噛み痕が…… 愛したいのに愛することは許されない 社会人オメガバース あの日から三年ぶりに会うアイツは… 敬語後輩α × 首元に噛み痕が残るΩ

変異型Ωは鉄壁の貞操

田中 乃那加
BL
 変異型――それは初めての性行為相手によってバースが決まってしまう突然変異種のこと。  男子大学生の金城 奏汰(かなしろ かなた)は変異型。  もしαに抱かれたら【Ω】に、βやΩを抱けば【β】に定着する。  奏汰はαが大嫌い、そして絶対にΩにはなりたくない。夢はもちろん、βの可愛いカノジョをつくり幸せな家庭を築くこと。  だから護身術を身につけ、さらに防犯グッズを持ち歩いていた。  ある日の歓楽街にて、β女性にからんでいたタチの悪い酔っ払いを次から次へとやっつける。  それを見た高校生、名張 龍也(なばり たつや)に一目惚れされることに。    当然突っぱねる奏汰と引かない龍也。  抱かれたくない男は貞操を守りきり、βのカノジョが出来るのか!?                

【完結】Ωになりたくない僕には運命なんて必要ない!

なつか
BL
≪登場人物≫ 七海 千歳(ななみ ちとせ):高校三年生。二次性、未確定。新聞部所属。 佐久間 累(さくま るい):高校一年生。二次性、α。バスケットボール部所属。 田辺 湊(たなべ みなと):千歳の同級生。二次性、α。新聞部所属。 ≪あらすじ≫ α、β、Ωという二次性が存在する世界。通常10歳で確定する二次性が、千歳は高校三年生になった今でも未確定のまま。 そのことを隠してβとして高校生活を送っていた千歳の前に現れたαの累。彼は千歳の運命の番だった。 運命の番である累がそばにいると、千歳はΩになってしまうかもしれない。だから、近づかないようにしようと思ってるのに、そんな千歳にかまうことなく累はぐいぐいと迫ってくる。しかも、βだと思っていた友人の湊も実はαだったことが判明。 二人にのαに挟まれ、果たして千歳はβとして生きていくことができるのか。

胎児の頃から執着されていたらしい

夜鳥すぱり
BL
好きでも嫌いでもない幼馴染みの鉄堅(てっけん)は、葉月(はづき)と結婚してツガイになりたいらしい。しかし、どうしても鉄堅のねばつくような想いを受け入れられない葉月は、しつこく求愛してくる鉄堅から逃げる事にした。オメガバース執着です。 ◆完結済みです。いつもながら読んで下さった皆様に感謝です。 ◆表紙絵を、花々緒さんが描いて下さいました(*^^*)。葉月を常に守りたい一途な鉄堅と、ひたすら逃げたい意地っぱりな葉月。

ずっと二人で。ー俺と大好きな幼なじみとの20年間の恋の物語ー

紗々
BL
俺は小さな頃からずっとずっと、そうちゃんのことが大好きだった───。 立本樹と滝宮颯太は、物心ついた頃からの幼なじみ。いつも一緒で、だけど離れて、傷付けあって、すれ違って、また近づいて。泣いたり笑ったりしながら、お互いをずっと想い合い大人になっていく二人の物語です。 ※攻めと女性との絡みが何度かあります。 ※展開かなり遅いと思います。

【完結】おじさんはΩである

藤吉とわ
BL
隠れ執着嫉妬激強年下α×αと誤診を受けていたおじさんΩ 門村雄大(かどむらゆうだい)34歳。とある朝母親から「小学生の頃バース検査をした病院があんたと連絡を取りたがっている」という電話を貰う。 何の用件か分からぬまま、折り返しの連絡をしてみると「至急お知らせしたいことがある。自宅に伺いたい」と言われ、招いたところ三人の男がやってきて部屋の中で突然土下座をされた。よくよく話を聞けば23年前のバース検査で告知ミスをしていたと告げられる。 今更Ωと言われても――と戸惑うものの、αだと思い込んでいた期間も自分のバース性にしっくり来ていなかった雄大は悩みながらも正しいバース性を受け入れていく。 治療のため、まずはΩ性の発情期であるヒートを起こさなければならず、謝罪に来た三人の男の内の一人・研修医でαの戸賀井 圭(とがいけい)と同居を開始することにーー。

処理中です...