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24.浮かれて中西に報告する
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蒼司と住んで初めて迎えた発情期で、僕は自宅に帰ることなく一週間を過ごした。
はっきり言って、今まで33年間生きてきた中で最高に気持ち良いヒートだった。
自分の推しにあんなことをさせたという罪悪感はある。しかし、蒼司は僕を嫌いだと言いながらも見捨てずにそばにいてくれたのだ。
(優しいよな……。僕が嫌がることは全然しないし)
アルファに対する拒否感は、いまだに完全に克服出来ていない。だけど、オメガとしてアルファを求める本能が消えたわけではない。
男として性的な興味は勿論あるし、怖くないと思える相手となら本当はセックスだってしてみたい。
だけど、この厄介なフェロモンのせいでそんな相手に巡り合えたことがなかった。
(血は繋がってないけど、彼と最後までするわけにはいかない。そういうのも全部わかってくれるし……蒼司くんはまさに僕の理想のアルファなんだよな)
僕の好みのど真ん中で、しかも僕のことを好きにならなくて、エッチなことに付き合ってくれるなんて最高すぎる。
人前であんなふうに自分を解放出来たことなんて今まで無かった。
(人に触れられるのがあんなに気持ちいいなんて、知らなかった……)
僕はヒート中に蒼司と触れ合ったことを思い出して頬が熱くなった。
(世の中の人たちは、恋人同士で当たり前のようにああいうことを楽しんでるんだよね)
今はまだ、自分から誰かを好きになるとか、相手に強く求められるのはちょっと怖い。だけど、頑張って人前に出るようにもなったし……いつか僕にも両想いの恋人が出来たりするだろうか。
少し前までなら、こんなこと考えもしなかった。
蒼司と一緒に住むようになり、彼が外に出るのをサポートしてくれているお陰だ。
◇◇◇
「――というわけで、一緒にヒート中も彼と過ごせたんです。気持ちよくて、夢みたいでした」
僕は月に一度訪れているサロンでまた中西に報告していた。
「へえ~! 最後までやらなかったにせよ、蓉平くんにしては進歩じゃない」
「ですよね。あんなの初めてで……蒼司くん、いい人過ぎて本当に感謝してもしきれないです」
「えーっと……その辺は俺的には疑問があるけど~」
中西が複雑そうな顔をして言った。
「え?」
「いやぁ、だって、絶対下心あるでしょそれ」
「そんなことないです! だって、そんなのあったら僕、匂いでわかりますもん」
(蒼司くんからは、フェロモンに惑わされて僕に惚れてしまった人特有の不快な匂いもしないし、目付きも正常だったんだ)
「うーん、そうだねえ。ま、俺的には楽しいからそのまま二人が仲良くしてくれたらそれでいいや」
中西はニコニコと笑いながら言う。
「でもさ、蓉平くんは蒼司くんのこと好きなんだよね」
「え? それはもちろん好きですよ。ずっと前から――」
「いやいや、そうじゃなくて。恋してるって意味で」
「え……と、それは……」
そう言われると困ってしまう。
「そういう意味で好きかは、わかんないです……」
「そうなの? でも以前と見る目が変わったことって無い?」
そう言われれば僕には心当たりがあった。
「たしかに……それはあります。僕、前は蒼司くんのカップル企画の写真見るのが好きだったんです」
「へー」
「だけど、最近蒼司くんが誰か他の子と絡んでるのを見ると、前みたいに純粋に楽しめないっていうか……」
「ほうほう」
中西が急に目を輝かせた。
「胸がなんていうか、モヤモヤするんです。……おかしいですよね」
「なるほどねえ、やっぱり好きになってるんだと思うよ。それ」
「――そうなんですか?」
中西は頷いた。
「うん。それもお互いの距離が近づいたからこそ起きた感情の変化だよね」
「そうでしょうか……」
「今までは遠くから見つめるだけの対象だったわけじゃん?」
「はい」
「それが、手の届く所に生身の蒼司くんが現れて。しかもエッチ寸前の所まできて~でしょ?」
「ええ、まぁ……はい」
(手が届くなんて恐れ多いって今も思ってるんだけどな)
しかし中西の言うように、リアルな蒼司を知って好きな気持ちが強くなっているのはたしかだ。彼が僕に「嫌い」と言ってくれればくれるほど、こちらは益々彼への想いが強くなっていく。
彼が誰と付き合っていようと、僕が何かを言える立場でも無い。それはわかっているのに、架空の恋人との写真にすら嫉妬している。
「それでそんなふうに気持ちが満たされてるなら、それは好きってことでしょう」
僕は、頷くしかなかった。
「そういう自分の恥ずかしい姿をさらけ出していいと思える相手って、なかなか見つからないと思うな」
「そう……ですよね」
中西は僕の毛先を整えながら深くため息をついた。
「はぁ……いいなぁ、俺にもそんな時があったんだよ昔は。相手に全て見せるなんて恥ずかしくて、でもそう出来た時の何とも言えない充足感……。ああ! 俺も甘酸っぱい恋がしたい~♡」
中西は最近、彼にしてはまあまあ長く(と言っても二年くらいだけど)付き合った彼氏と別れていた。僕が知る限り、恋人は途切れないタイプで恋愛経験も豊富だ。
その彼が、僕が恋していると言うならそうなのだろう。
だけど、彼が僕と付き合ったりするなんてことはありえない。彼はあくまでも、父に頼まれて僕の面倒を見てくれているだけだ。その彼と、僕なんかが付き合えるなんてやっぱり考えられなかった。
(んー、蒼司くんは理想ではあるけど現実に付き合える相手ではないんだよねぇ)
はっきり言って、今まで33年間生きてきた中で最高に気持ち良いヒートだった。
自分の推しにあんなことをさせたという罪悪感はある。しかし、蒼司は僕を嫌いだと言いながらも見捨てずにそばにいてくれたのだ。
(優しいよな……。僕が嫌がることは全然しないし)
アルファに対する拒否感は、いまだに完全に克服出来ていない。だけど、オメガとしてアルファを求める本能が消えたわけではない。
男として性的な興味は勿論あるし、怖くないと思える相手となら本当はセックスだってしてみたい。
だけど、この厄介なフェロモンのせいでそんな相手に巡り合えたことがなかった。
(血は繋がってないけど、彼と最後までするわけにはいかない。そういうのも全部わかってくれるし……蒼司くんはまさに僕の理想のアルファなんだよな)
僕の好みのど真ん中で、しかも僕のことを好きにならなくて、エッチなことに付き合ってくれるなんて最高すぎる。
人前であんなふうに自分を解放出来たことなんて今まで無かった。
(人に触れられるのがあんなに気持ちいいなんて、知らなかった……)
僕はヒート中に蒼司と触れ合ったことを思い出して頬が熱くなった。
(世の中の人たちは、恋人同士で当たり前のようにああいうことを楽しんでるんだよね)
今はまだ、自分から誰かを好きになるとか、相手に強く求められるのはちょっと怖い。だけど、頑張って人前に出るようにもなったし……いつか僕にも両想いの恋人が出来たりするだろうか。
少し前までなら、こんなこと考えもしなかった。
蒼司と一緒に住むようになり、彼が外に出るのをサポートしてくれているお陰だ。
◇◇◇
「――というわけで、一緒にヒート中も彼と過ごせたんです。気持ちよくて、夢みたいでした」
僕は月に一度訪れているサロンでまた中西に報告していた。
「へえ~! 最後までやらなかったにせよ、蓉平くんにしては進歩じゃない」
「ですよね。あんなの初めてで……蒼司くん、いい人過ぎて本当に感謝してもしきれないです」
「えーっと……その辺は俺的には疑問があるけど~」
中西が複雑そうな顔をして言った。
「え?」
「いやぁ、だって、絶対下心あるでしょそれ」
「そんなことないです! だって、そんなのあったら僕、匂いでわかりますもん」
(蒼司くんからは、フェロモンに惑わされて僕に惚れてしまった人特有の不快な匂いもしないし、目付きも正常だったんだ)
「うーん、そうだねえ。ま、俺的には楽しいからそのまま二人が仲良くしてくれたらそれでいいや」
中西はニコニコと笑いながら言う。
「でもさ、蓉平くんは蒼司くんのこと好きなんだよね」
「え? それはもちろん好きですよ。ずっと前から――」
「いやいや、そうじゃなくて。恋してるって意味で」
「え……と、それは……」
そう言われると困ってしまう。
「そういう意味で好きかは、わかんないです……」
「そうなの? でも以前と見る目が変わったことって無い?」
そう言われれば僕には心当たりがあった。
「たしかに……それはあります。僕、前は蒼司くんのカップル企画の写真見るのが好きだったんです」
「へー」
「だけど、最近蒼司くんが誰か他の子と絡んでるのを見ると、前みたいに純粋に楽しめないっていうか……」
「ほうほう」
中西が急に目を輝かせた。
「胸がなんていうか、モヤモヤするんです。……おかしいですよね」
「なるほどねえ、やっぱり好きになってるんだと思うよ。それ」
「――そうなんですか?」
中西は頷いた。
「うん。それもお互いの距離が近づいたからこそ起きた感情の変化だよね」
「そうでしょうか……」
「今までは遠くから見つめるだけの対象だったわけじゃん?」
「はい」
「それが、手の届く所に生身の蒼司くんが現れて。しかもエッチ寸前の所まできて~でしょ?」
「ええ、まぁ……はい」
(手が届くなんて恐れ多いって今も思ってるんだけどな)
しかし中西の言うように、リアルな蒼司を知って好きな気持ちが強くなっているのはたしかだ。彼が僕に「嫌い」と言ってくれればくれるほど、こちらは益々彼への想いが強くなっていく。
彼が誰と付き合っていようと、僕が何かを言える立場でも無い。それはわかっているのに、架空の恋人との写真にすら嫉妬している。
「それでそんなふうに気持ちが満たされてるなら、それは好きってことでしょう」
僕は、頷くしかなかった。
「そういう自分の恥ずかしい姿をさらけ出していいと思える相手って、なかなか見つからないと思うな」
「そう……ですよね」
中西は僕の毛先を整えながら深くため息をついた。
「はぁ……いいなぁ、俺にもそんな時があったんだよ昔は。相手に全て見せるなんて恥ずかしくて、でもそう出来た時の何とも言えない充足感……。ああ! 俺も甘酸っぱい恋がしたい~♡」
中西は最近、彼にしてはまあまあ長く(と言っても二年くらいだけど)付き合った彼氏と別れていた。僕が知る限り、恋人は途切れないタイプで恋愛経験も豊富だ。
その彼が、僕が恋していると言うならそうなのだろう。
だけど、彼が僕と付き合ったりするなんてことはありえない。彼はあくまでも、父に頼まれて僕の面倒を見てくれているだけだ。その彼と、僕なんかが付き合えるなんてやっぱり考えられなかった。
(んー、蒼司くんは理想ではあるけど現実に付き合える相手ではないんだよねぇ)
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