【完結】陰キャなΩは義弟αに嫌われるほど好きになる

grotta

文字の大きさ
27 / 48

27.アンジュの脅し

しおりを挟む
いきなり現れたアンジュに「出てって」と言われて僕は面食らってしまった。

「え、出てくって……ごめん、ここ僕の部屋だから、無理なんだけど……」
「じゃあ、あんたの部屋にAoが転がり込んでるって言いたいの?」
「いや、そうじゃなくて――」

(どういうこと? 僕たちの関係を蒼司くんから聞いて来たんじゃないのかな)

「とにかく、前にも言ったよね? あんたみたいなのがAoのそばをウロウロしてるのが耐えられないの」
「そうは言っても、僕たち義理の兄弟だからしょうがないんだ」

もしかして蒼司はこのことを周囲に知られたくないのかもしれない。だけど、はっきり言わないとアンジュは納得しなそうなので勝手に話してしまった。

「義理の……兄弟?」

どうやらアンジュは知らなかったようで、目を泳がせている。

「本当なの?」
「本当だよ。僕の父と、彼のお母さんが結婚したんだ。このマンションは僕の父の所有物」

アンジュは出鼻をくじかれた様子で、口をぱくぱくさせた。

「で、でも! お互い大人なんだから一緒に住むことないじゃない。あんたみたいないやらしいオメガが近くに居るなんて、彼にとっても迷惑だわ」

迷惑と言われても、僕にはどうしようもない。僕だって一人で暮らすつもりでここに来たのだ。父が勝手に僕のことを心配して蒼司を同居させると決めてしまった。しかし、こんなことを話しても怒り心頭な彼女はわかってくれないだろう。
さすがに、会ったばかりの彼女に僕の抱えているトラウマのことまで話す気はない。

「ごめんね、君にとって僕が目障りなのはわかるよ。だけど、蒼司くんとは家族だから仕方ないんだ」
「それで私が引き下がるとでも思ってるの?」
「え……」

アンジュは一口紅茶を飲んだ。

「Aoの様子が変なのはあんたのせいでしょ」
「様子が変……?」
「いつもカメラを担当してた菜々から聞いてるんだから。最近、あんたが菜々の役目を代わりにやってるって」
「それは――そうだけど……」
「あんたみたいなド素人がやるより菜々が撮った方がいいに決まってるのに。なんで義兄弟だからって出しゃばるのよ」

社会復帰のための訓練の一環だとは言えない。彼女にそんなことを打ち明けたくはなかった。
僕が黙っていると彼女は更に言う。

「あんたみたいのと一緒にいると、Aoの格が下がるのよ。それに、あんたがそのフェロモンで彼のこと誘惑してるのはわかってるんだからね」

アンジュは僕を睨んだまま、バッグの中からスマホを取り出した。

「ここまで言ってもAoのそばを離れないって言うなら、この写真をネットにばらまく」
「写真?」

アンジュが画面をこちらに向けた。そこには僕と蒼司がマンションから出てくるところが写っていた。しかし、これをばらまかれたとしても特に不都合はないのだが。

(これが何だって言うんだ?)

「別に構わないよ。蒼司くんと僕は兄弟なんだから」
「そう? でも、私ってバカだから間違えて『Aoの恋人はオメガの男だ』って書いて拡散しちゃうかも?」
「え……?」
「しかも、手が滑って『フェロモンで誘惑されてAoがオメガ男の家に連れ込まれてる』ってのも付け加えちゃうかも?」

彼女は数枚の写真をスライドして見せてきた。一体いつの間に撮られていたのか、マンション前だけじゃなくて一緒に近所のスーパーで買物している時の写真まである。自分で見る分には兄弟の日常風景に見える。しかし、そのようなキャプションが付けばたしかに恋人同士に見えなくもない。
前回のヒート期間のことが頭をよぎる。ただの兄弟としてやましいことが何も無いとも言えない僕は、少しだけ焦りを感じた。

「で、でもそんなの嘘だってすぐにわかるだろう。実際僕たちは兄弟なんだし」
「ゴシップ好きにとって真実かどうかなんて関係ないのよ。より面白そうなネタに食いつくだけ。芸能人が占い師に騙されてる~とかそういうネタって格好の餌食でしょ」

(一体何が目的なんだ? 蒼司くんのことが好きだからって、こんなことまでするものなの?)

「これだとAoは変な注目集めたとしてもすぐに同情されて復帰できるわ。でも、あんたは悪者としSNS上でファンからずっと叩かれ続ける」
「そ、そんな……!」

それでなくても人目につくようなことは嫌なのに。蒼司はトップモデルほどの知名度は無いが、一定のファンが付いている。その界隈で話題になるだけでも僕にとっては恐ろしいことだ。

(ようやく外に出ることに慣れてきたのに……)

そんな好奇の目で見られるとしたら、僕はもう二度と外界に出られなくなるだろう。

「まあどっちにしろAoも迷惑を被るわね。変なイメージ付いたら、広告系の仕事が減るかも」

僕はそれを聞いてぞっとした。

「酷いよ。アンジュちゃんは蒼司くんのことが好きなんじゃないの? どうしてそんなことするんだよ」
「Aoのことが好きだからに決まってる。ちょっと迷惑かかったとしても、あんたみたいなのがそばにいる方がずっと彼にとってマイナスなのよ!」
「だけど……そんな……」

(いちファンだった僕が、調子に乗って蒼司くんと親しくしていたのが悪いのか……?)

急にここを出て行けと言われても、実家に戻れば父に怪しまれる。蒼司との不仲を疑われるだろう。
蒼司にアンジュから言われたことを相談したら、彼女と話し合ってなんとかしてくれるだろうか?

「変なこと考えないでよ? このことをAoに話したらその時点でこの写真をおもしろ解説付きでばらまくから」

理屈や倫理観で説得しようとしても、嫉妬に狂った彼女に対しては無駄だった。結局、よくわからない彼女の脅しに僕は屈するしかなかった。

「出ていくにしても、時間を貰わないと無理だよ」
「ふーん、じゃあ一週間あげる」
「短かすぎる! せめて一ヶ月くらい貰わないと、こっちにも事情があるんだ」
「じゃあ二週間。それ以上経ってもここに居るのがわかったら写真を拡散するから」

彼女は「私が来たこと、Aoには内緒だからね」と言い捨てて去っていった。

父にも蒼司にも怪しまれることなくここを出るとしたら、僕が結婚相手を見つけて一人で出ていくしか手がない。しかし、そんなことすぐには無理だ。

「二週間……? 間に合わなくて一時的に実家に帰るにしても一体どうしたら……」

しおりを挟む
感想 70

あなたにおすすめの小説

【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。

きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。 自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。 食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。

寡黙なオオカミαにストーカー気質のネコΩが嫁いだ話

かとらり。
BL
 誰もがケモミミとバース性を持つ世界。  澪は猫種のΩだった。  引っ込み思案の澪は半ばストーカーのように密かに追いかけている憧れの人がいる。  狼種のαの慶斗だ。  そんな慶斗にいきなり嫁ぐことが決定した澪。話しかけるのも無理なのに結婚なんてできるの?  しかも慶斗は事情があるらしくー…

【完結済】キズモノオメガの幸せの見つけ方~番のいる俺がアイツを愛することなんて許されない~

つきよの
BL
●ハッピーエンド● 「勇利先輩……?」  俺、勇利渉は、真冬に照明と暖房も消されたオフィスで、コートを着たままノートパソコンに向かっていた。  だが、突然背後から名前を呼ばれて後ろを振り向くと、声の主である人物の存在に思わず驚き、心臓が跳ね上がった。 (どうして……)  声が出ないほど驚いたのは、今日はまだ、そこにいるはずのない人物が立っていたからだった。 「東谷……」  俺の目に映し出されたのは、俺が初めて新人研修を担当した後輩、東谷晧だった。  背が高く、ネイビーより少し明るい色の細身スーツ。  落ち着いたブラウンカラーの髪色は、目鼻立ちの整った顔を引き立たせる。  誰もが目を惹くルックスは、最後に会った三年前となんら変わっていなかった。  そう、最後に過ごしたあの夜から、空白の三年間なんてなかったかのように。 番になればラット化を抑えられる そんな一方的な理由で番にさせられたオメガ しかし、アルファだと偽って生きていくには 関係を続けることが必要で…… そんな中、心から愛する人と出会うも 自分には噛み痕が…… 愛したいのに愛することは許されない 社会人オメガバース あの日から三年ぶりに会うアイツは… 敬語後輩α × 首元に噛み痕が残るΩ

変異型Ωは鉄壁の貞操

田中 乃那加
BL
 変異型――それは初めての性行為相手によってバースが決まってしまう突然変異種のこと。  男子大学生の金城 奏汰(かなしろ かなた)は変異型。  もしαに抱かれたら【Ω】に、βやΩを抱けば【β】に定着する。  奏汰はαが大嫌い、そして絶対にΩにはなりたくない。夢はもちろん、βの可愛いカノジョをつくり幸せな家庭を築くこと。  だから護身術を身につけ、さらに防犯グッズを持ち歩いていた。  ある日の歓楽街にて、β女性にからんでいたタチの悪い酔っ払いを次から次へとやっつける。  それを見た高校生、名張 龍也(なばり たつや)に一目惚れされることに。    当然突っぱねる奏汰と引かない龍也。  抱かれたくない男は貞操を守りきり、βのカノジョが出来るのか!?                

【完結】Ωになりたくない僕には運命なんて必要ない!

なつか
BL
≪登場人物≫ 七海 千歳(ななみ ちとせ):高校三年生。二次性、未確定。新聞部所属。 佐久間 累(さくま るい):高校一年生。二次性、α。バスケットボール部所属。 田辺 湊(たなべ みなと):千歳の同級生。二次性、α。新聞部所属。 ≪あらすじ≫ α、β、Ωという二次性が存在する世界。通常10歳で確定する二次性が、千歳は高校三年生になった今でも未確定のまま。 そのことを隠してβとして高校生活を送っていた千歳の前に現れたαの累。彼は千歳の運命の番だった。 運命の番である累がそばにいると、千歳はΩになってしまうかもしれない。だから、近づかないようにしようと思ってるのに、そんな千歳にかまうことなく累はぐいぐいと迫ってくる。しかも、βだと思っていた友人の湊も実はαだったことが判明。 二人にのαに挟まれ、果たして千歳はβとして生きていくことができるのか。

胎児の頃から執着されていたらしい

夜鳥すぱり
BL
好きでも嫌いでもない幼馴染みの鉄堅(てっけん)は、葉月(はづき)と結婚してツガイになりたいらしい。しかし、どうしても鉄堅のねばつくような想いを受け入れられない葉月は、しつこく求愛してくる鉄堅から逃げる事にした。オメガバース執着です。 ◆完結済みです。いつもながら読んで下さった皆様に感謝です。 ◆表紙絵を、花々緒さんが描いて下さいました(*^^*)。葉月を常に守りたい一途な鉄堅と、ひたすら逃げたい意地っぱりな葉月。

ずっと二人で。ー俺と大好きな幼なじみとの20年間の恋の物語ー

紗々
BL
俺は小さな頃からずっとずっと、そうちゃんのことが大好きだった───。 立本樹と滝宮颯太は、物心ついた頃からの幼なじみ。いつも一緒で、だけど離れて、傷付けあって、すれ違って、また近づいて。泣いたり笑ったりしながら、お互いをずっと想い合い大人になっていく二人の物語です。 ※攻めと女性との絡みが何度かあります。 ※展開かなり遅いと思います。

【完結】おじさんはΩである

藤吉とわ
BL
隠れ執着嫉妬激強年下α×αと誤診を受けていたおじさんΩ 門村雄大(かどむらゆうだい)34歳。とある朝母親から「小学生の頃バース検査をした病院があんたと連絡を取りたがっている」という電話を貰う。 何の用件か分からぬまま、折り返しの連絡をしてみると「至急お知らせしたいことがある。自宅に伺いたい」と言われ、招いたところ三人の男がやってきて部屋の中で突然土下座をされた。よくよく話を聞けば23年前のバース検査で告知ミスをしていたと告げられる。 今更Ωと言われても――と戸惑うものの、αだと思い込んでいた期間も自分のバース性にしっくり来ていなかった雄大は悩みながらも正しいバース性を受け入れていく。 治療のため、まずはΩ性の発情期であるヒートを起こさなければならず、謝罪に来た三人の男の内の一人・研修医でαの戸賀井 圭(とがいけい)と同居を開始することにーー。

処理中です...