【完結】陰キャなΩは義弟αに嫌われるほど好きになる

grotta

文字の大きさ
28 / 48

28.プランBと思わぬ事実

しおりを挟む
アンジュが去ってから、僕はしばし呆然とソファに座っていた。

「どうしよう……二週間で、父にも蒼司くんにも怪しまれずにここを出るだなんて」

(従兄弟の隼一にもう一度ルームシェアを打診してみようか)

久々に電話してみると、隼一は憔悴しきった様子だった。どうやら彼にしては珍しく恋人に逃げられたらしい。そんな時期にこちらの頼み事をするのは気が引けて、僕は用件を話すこと無く励ましの言葉を掛けて電話を切った。

こうなったらもう、本気で婚活をやって相手を探すしかない。もしどうしても二週間以内に相手が見つからなかったら(どう考えても見つからないだろうが)、せめて婚約者の振りをしてくれる相手を探し出してとりあえず一人暮らしの許可だけ得ることにしよう。

「よし、そうだ! これでなんとかなる」

これまで蒼司に協力してもらっていた独り立ち作戦。これをプランBに変更するのだ。
長らく引きこもり生活をしていたコミュ障の僕に婚活なんてハードルが高すぎるけど、あんなデマを流されてはたまらない。蒼司にも迷惑をかけることになる。

僕は仕事そっちのけで結婚相談所を調べ始めた。
父としては、由緒正しい家柄のアルファとの結婚を望んでいる。となると、アルファとオメガ専門の相談所に絞って探せばいいだろう。検索したところ、どうやらアルファとオメガを遺伝子データでマッチングする相談所が現在最も有名で実績があるようだ。
遺伝子レベルでマッチングしてくれるなら、僕のフェロモンに耐性のある人を選んで貰えるかもしれない。

僕はその相談所のホームページから会員登録の手続きをした。しかし、全ての項目に基本情報を入力して送信した所、思ってもみない回答がメールで返ってきた。

「え、会員登録ができませんでした――?」

(なんでだよ。ここのシステムおかしいんじゃないの?)

メールを読むと、直接相談所に電話で問い合わせるように案内されていた。面倒だけど、急いでいるので僕はすぐに担当者へ電話を掛けた。
メールの件で電話したと名乗ると、柔らかい声の女性が名前と生年月日で調べてくれるという。

『鷲尾様、大変お待たせいたしました。お調べしましたところ、鷲尾様は既に弊社サービスに会員登録がお済みのようです。それで新たにご登録手続きをされたので、エラーが出たようですね』
「えっ!?」

(既に登録って、どういうこと――?)

「あの、僕は登録した覚えがないのですが?」
『左様でございましたか。ええと……それですと、詳しいお話しにつきましては電話口ではいたしかねますので、大変お手数なのですが弊社まで直接お越しいただけますしょうか』

どういうわけか、結婚相談所に僕の名前が既に登録されているという。とにかく期限まで時間がない僕は、その日のうちに相談所に予約をして直接訪問することになった。


◇◇◇


僕は時間通りに相談所の入っているビルを訪れた。

「鷲尾様、ご足労いただき大変申し訳ございませんでした。御本人確認をさせていただきませんと、詳しくお話しできない決まりでございまして」
「いえ、それはいいんですけど……一体どういうことなんでしょうか」
「はい。先程の件なのですが、ご契約されたのは鷲尾浩一様のお名前になっております。お父様でいらっしゃいますよね」
「あー……はい……」

(そういうことか。父が勝手に……)

「こういうトラブルが無いように弊社としましても努めておりまして、こちらに蓉平様御本人の署名も頂いているのですが……」
「あ、本当ですね」

見せてくれた契約書にはたしかに僕の筆跡でサインされていた。何のことかもわからずただサインを求められて書いたんだろう。
担当者の40代くらいの女性が申し訳なさそうに特殊な事情について説明してくれた。

「アルファとオメガの方に関しては特例として、成人済のお子様に対してもご両親が大きな権限を持ち続けるように法が整備されておりまして……」

つまり、アルファはアルファの血筋を重視する。由緒ある家ほど、アルファの当主は次世代にもアルファの血を残そうとするのだ。そのため、なるべく婚姻関係を結ぶ相手にはアルファかオメガを望む事が多い。確率的に、ベータよりもアルファかオメガが相手の方がアルファの子が産まれやすいからだ。
もちろん最近の風潮として自由恋愛も重視されてはいる。しかし、親としてはアルファとオメガの縁組を望んでいる。
政治家には当然ながら優秀なアルファが多いので、世の中の法律はアルファに都合の良いようになっているのだ。

「……というわけで、ご両親がお子様の幸せを願って弊社とご契約頂くということは多いんです。もし、不都合がございましたら私の方からお父様にご連絡することもできますが」
「いえ、結構です。今日は僕自身、こちらに入会を希望して手続きしようとしていたところですから」
「ご理解いただきありがとうございます。ところで、データによりますと既にこちらからお一人ご紹介済みとなっているのですが……」
「え?」

(会員登録どころか、もう紹介してもらっていたの? 全然聞いてない!)

父には後から文句を言わなければ、と僕は思った。

「お相手のお名前が山内蒼司さまという、21歳のアルファ男性ですね」
「はい!? や、山内蒼司……?」

僕が少し大きな声を出したので、彼女は戸惑って目の前のディスプレイを見て確認している。

「あ、はい。二月にデータをお渡しして、既にお会いになったということでお父様からご報告も頂いておりますね」

(蒼司くんを相談所から紹介されているって……? え、どういうことなの?)

「鷲尾様? あの、まだお会いになられていないんでしょうか?」

彼女が心配そうに聞いてくる。

「あ、いえ。会いました。会ったんですが……」
「今回はまた他の方のご紹介を希望される、ということでしょうか?」
「……はい……ええ、そう……ですね」

しおりを挟む
感想 70

あなたにおすすめの小説

【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。

きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。 自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。 食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。

寡黙なオオカミαにストーカー気質のネコΩが嫁いだ話

かとらり。
BL
 誰もがケモミミとバース性を持つ世界。  澪は猫種のΩだった。  引っ込み思案の澪は半ばストーカーのように密かに追いかけている憧れの人がいる。  狼種のαの慶斗だ。  そんな慶斗にいきなり嫁ぐことが決定した澪。話しかけるのも無理なのに結婚なんてできるの?  しかも慶斗は事情があるらしくー…

【完結済】キズモノオメガの幸せの見つけ方~番のいる俺がアイツを愛することなんて許されない~

つきよの
BL
●ハッピーエンド● 「勇利先輩……?」  俺、勇利渉は、真冬に照明と暖房も消されたオフィスで、コートを着たままノートパソコンに向かっていた。  だが、突然背後から名前を呼ばれて後ろを振り向くと、声の主である人物の存在に思わず驚き、心臓が跳ね上がった。 (どうして……)  声が出ないほど驚いたのは、今日はまだ、そこにいるはずのない人物が立っていたからだった。 「東谷……」  俺の目に映し出されたのは、俺が初めて新人研修を担当した後輩、東谷晧だった。  背が高く、ネイビーより少し明るい色の細身スーツ。  落ち着いたブラウンカラーの髪色は、目鼻立ちの整った顔を引き立たせる。  誰もが目を惹くルックスは、最後に会った三年前となんら変わっていなかった。  そう、最後に過ごしたあの夜から、空白の三年間なんてなかったかのように。 番になればラット化を抑えられる そんな一方的な理由で番にさせられたオメガ しかし、アルファだと偽って生きていくには 関係を続けることが必要で…… そんな中、心から愛する人と出会うも 自分には噛み痕が…… 愛したいのに愛することは許されない 社会人オメガバース あの日から三年ぶりに会うアイツは… 敬語後輩α × 首元に噛み痕が残るΩ

変異型Ωは鉄壁の貞操

田中 乃那加
BL
 変異型――それは初めての性行為相手によってバースが決まってしまう突然変異種のこと。  男子大学生の金城 奏汰(かなしろ かなた)は変異型。  もしαに抱かれたら【Ω】に、βやΩを抱けば【β】に定着する。  奏汰はαが大嫌い、そして絶対にΩにはなりたくない。夢はもちろん、βの可愛いカノジョをつくり幸せな家庭を築くこと。  だから護身術を身につけ、さらに防犯グッズを持ち歩いていた。  ある日の歓楽街にて、β女性にからんでいたタチの悪い酔っ払いを次から次へとやっつける。  それを見た高校生、名張 龍也(なばり たつや)に一目惚れされることに。    当然突っぱねる奏汰と引かない龍也。  抱かれたくない男は貞操を守りきり、βのカノジョが出来るのか!?                

【完結】Ωになりたくない僕には運命なんて必要ない!

なつか
BL
≪登場人物≫ 七海 千歳(ななみ ちとせ):高校三年生。二次性、未確定。新聞部所属。 佐久間 累(さくま るい):高校一年生。二次性、α。バスケットボール部所属。 田辺 湊(たなべ みなと):千歳の同級生。二次性、α。新聞部所属。 ≪あらすじ≫ α、β、Ωという二次性が存在する世界。通常10歳で確定する二次性が、千歳は高校三年生になった今でも未確定のまま。 そのことを隠してβとして高校生活を送っていた千歳の前に現れたαの累。彼は千歳の運命の番だった。 運命の番である累がそばにいると、千歳はΩになってしまうかもしれない。だから、近づかないようにしようと思ってるのに、そんな千歳にかまうことなく累はぐいぐいと迫ってくる。しかも、βだと思っていた友人の湊も実はαだったことが判明。 二人にのαに挟まれ、果たして千歳はβとして生きていくことができるのか。

胎児の頃から執着されていたらしい

夜鳥すぱり
BL
好きでも嫌いでもない幼馴染みの鉄堅(てっけん)は、葉月(はづき)と結婚してツガイになりたいらしい。しかし、どうしても鉄堅のねばつくような想いを受け入れられない葉月は、しつこく求愛してくる鉄堅から逃げる事にした。オメガバース執着です。 ◆完結済みです。いつもながら読んで下さった皆様に感謝です。 ◆表紙絵を、花々緒さんが描いて下さいました(*^^*)。葉月を常に守りたい一途な鉄堅と、ひたすら逃げたい意地っぱりな葉月。

ずっと二人で。ー俺と大好きな幼なじみとの20年間の恋の物語ー

紗々
BL
俺は小さな頃からずっとずっと、そうちゃんのことが大好きだった───。 立本樹と滝宮颯太は、物心ついた頃からの幼なじみ。いつも一緒で、だけど離れて、傷付けあって、すれ違って、また近づいて。泣いたり笑ったりしながら、お互いをずっと想い合い大人になっていく二人の物語です。 ※攻めと女性との絡みが何度かあります。 ※展開かなり遅いと思います。

【完結】おじさんはΩである

藤吉とわ
BL
隠れ執着嫉妬激強年下α×αと誤診を受けていたおじさんΩ 門村雄大(かどむらゆうだい)34歳。とある朝母親から「小学生の頃バース検査をした病院があんたと連絡を取りたがっている」という電話を貰う。 何の用件か分からぬまま、折り返しの連絡をしてみると「至急お知らせしたいことがある。自宅に伺いたい」と言われ、招いたところ三人の男がやってきて部屋の中で突然土下座をされた。よくよく話を聞けば23年前のバース検査で告知ミスをしていたと告げられる。 今更Ωと言われても――と戸惑うものの、αだと思い込んでいた期間も自分のバース性にしっくり来ていなかった雄大は悩みながらも正しいバース性を受け入れていく。 治療のため、まずはΩ性の発情期であるヒートを起こさなければならず、謝罪に来た三人の男の内の一人・研修医でαの戸賀井 圭(とがいけい)と同居を開始することにーー。

処理中です...