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39.義父からの連絡(1)(蒼司視点)
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アンジュのマンションを出た後、俺は大学の事務局を訪れた。
要件を伝えて、必要な書類を受け取る。
その後自宅へ帰る途中で義父から電話がかかってきた。
もしかして、蓉平は昨日のことを義父に全て話したのでは――と胸が騒いだ。
しかし予想に反して義父の声はのんびりしていた。
『蒼司くん。今いいかな?』
「ええ、はい」
『実は私と聖美さんの結婚式で君に着てもらうスーツのことなんだが――……』
想像していたようなこととは何の関係も無い話を始められて安堵する。
義父の用件は、俺と蓉平の二人で一緒にスーツ選びをして欲しいということだった。
そこまではまあ良いとして、その後の発言に俺は耳を疑った。
『それでね、蓉平に電話したら今中西くんという、蓉平担当の美容師の所に泊まってるんだってね』
「え――?」
『しかも風邪ひいて熱出してるって言うんだ。彼は強がって熱が下がったらタクシーでマンションに帰るなんて言うんだが……蒼司くん、もしよければ迎えに行ってやってくれないか』
俺は電話が切れた後も呆然とスマホの画面を眺めていた。
(どういうことだ。蓉平は実家に居るんじゃないのか……?)
中西という美容師の連絡先と住所を聞いたので、そちらに電話してみる。すると彼は俺のことを蓉平から聞いてると言って気さくに挨拶してくれた。しかし、彼はまた思わぬことを言った。
『うちには蓉平くん、来ていないよ。お父さんから電話が来たら口裏合わせてほしいってさっき頼まれたんだけど、君にも嘘をつけとは言われてないから……いいんだよね? あれ、もしかして蒼司くんにもナイショだったのかな?』
(ここにもいないだと――? 一体あいつは今どこにいるんだ?)
てっきり実家に帰ったものと思っていたので油断した。昨夜雨の中出掛けて行ったのは、実家でも中西の自宅でもない。
(――まさかあの桂木という男の家に行ったのか……?)
俺は急いでマンションに帰った。義兄の部屋に勝手に入り、何か桂木に関する手掛かりがないかとデスクを漁る。
昨日帰ってきた時に持っていた嫌な匂いのする図面ケースを開けると、ペーパークラフトの型紙が入っていた。
(こんなのは関係ない――)
他にはペーパークラフトの本や、義兄の受注している仕事関係の書類がほとんどだった。
(これも違う、これも……何か他にないか?)
そして、引き出し式の書類ケースの中に見覚えのあるファイルが紛れているのに気付いた。
「これ、この前の――」
そのファイルのロゴは、母が俺に見せてきたオメガ・アルファ専門の結婚相談所のものだった。
(あいつが受け取った、俺のデータか……)
俺はそれが自分のデータだと信じて疑わず、何気なく中身を開いた。
「え!? なんで桂木の名が……?」
蓉平がデスクに置いていた結婚相談所の遺伝子分析結果。それは俺ではなく、桂木に関するデータだった。
そこで俺ははっとした。
(蓉平は、アンジュに出て行けと言われる前から俺とは結婚しない気だったのか――……?)
蓉平はたまたまそこら辺で見つけたアルファ男と会ってたわけじゃない。俺のことを見限って、以前から別の相手を探していたんだ。
「ははっ……マジかよ。俺はとっくに用済みだったってことか……」
自分がフラれる可能性があるなんて思ってもみなかった。
勝手に決められた婚約者だからと蓉平のことを軽く見ていた罰だ。
(あいつのことを満足させられるのは俺だけだなんて思ってたのは勘違いだったんだ)
蓉平は相談所経由で遺伝子的に相性が良い別の婚約者候補に会っていた。そしてもう手放すつもりの男に無理矢理押し倒された。しかも彼にトラウマがあるのを知っていて、それまで親切ぶっていた男に――だ。
俺は椅子に座り込んだ。
「クソ……最低じゃないか」
要件を伝えて、必要な書類を受け取る。
その後自宅へ帰る途中で義父から電話がかかってきた。
もしかして、蓉平は昨日のことを義父に全て話したのでは――と胸が騒いだ。
しかし予想に反して義父の声はのんびりしていた。
『蒼司くん。今いいかな?』
「ええ、はい」
『実は私と聖美さんの結婚式で君に着てもらうスーツのことなんだが――……』
想像していたようなこととは何の関係も無い話を始められて安堵する。
義父の用件は、俺と蓉平の二人で一緒にスーツ選びをして欲しいということだった。
そこまではまあ良いとして、その後の発言に俺は耳を疑った。
『それでね、蓉平に電話したら今中西くんという、蓉平担当の美容師の所に泊まってるんだってね』
「え――?」
『しかも風邪ひいて熱出してるって言うんだ。彼は強がって熱が下がったらタクシーでマンションに帰るなんて言うんだが……蒼司くん、もしよければ迎えに行ってやってくれないか』
俺は電話が切れた後も呆然とスマホの画面を眺めていた。
(どういうことだ。蓉平は実家に居るんじゃないのか……?)
中西という美容師の連絡先と住所を聞いたので、そちらに電話してみる。すると彼は俺のことを蓉平から聞いてると言って気さくに挨拶してくれた。しかし、彼はまた思わぬことを言った。
『うちには蓉平くん、来ていないよ。お父さんから電話が来たら口裏合わせてほしいってさっき頼まれたんだけど、君にも嘘をつけとは言われてないから……いいんだよね? あれ、もしかして蒼司くんにもナイショだったのかな?』
(ここにもいないだと――? 一体あいつは今どこにいるんだ?)
てっきり実家に帰ったものと思っていたので油断した。昨夜雨の中出掛けて行ったのは、実家でも中西の自宅でもない。
(――まさかあの桂木という男の家に行ったのか……?)
俺は急いでマンションに帰った。義兄の部屋に勝手に入り、何か桂木に関する手掛かりがないかとデスクを漁る。
昨日帰ってきた時に持っていた嫌な匂いのする図面ケースを開けると、ペーパークラフトの型紙が入っていた。
(こんなのは関係ない――)
他にはペーパークラフトの本や、義兄の受注している仕事関係の書類がほとんどだった。
(これも違う、これも……何か他にないか?)
そして、引き出し式の書類ケースの中に見覚えのあるファイルが紛れているのに気付いた。
「これ、この前の――」
そのファイルのロゴは、母が俺に見せてきたオメガ・アルファ専門の結婚相談所のものだった。
(あいつが受け取った、俺のデータか……)
俺はそれが自分のデータだと信じて疑わず、何気なく中身を開いた。
「え!? なんで桂木の名が……?」
蓉平がデスクに置いていた結婚相談所の遺伝子分析結果。それは俺ではなく、桂木に関するデータだった。
そこで俺ははっとした。
(蓉平は、アンジュに出て行けと言われる前から俺とは結婚しない気だったのか――……?)
蓉平はたまたまそこら辺で見つけたアルファ男と会ってたわけじゃない。俺のことを見限って、以前から別の相手を探していたんだ。
「ははっ……マジかよ。俺はとっくに用済みだったってことか……」
自分がフラれる可能性があるなんて思ってもみなかった。
勝手に決められた婚約者だからと蓉平のことを軽く見ていた罰だ。
(あいつのことを満足させられるのは俺だけだなんて思ってたのは勘違いだったんだ)
蓉平は相談所経由で遺伝子的に相性が良い別の婚約者候補に会っていた。そしてもう手放すつもりの男に無理矢理押し倒された。しかも彼にトラウマがあるのを知っていて、それまで親切ぶっていた男に――だ。
俺は椅子に座り込んだ。
「クソ……最低じゃないか」
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