世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記

颯野秋乃

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1938年春 ドイツ第三帝国 導火線に今火がともされた!

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ドイツ第三帝国軍部は現状に頭を抱えることしかできなかった。ど独仏国境に独波国境そして独洪国境…。そのどれもが手を抜くことが許されない重要作戦地域である。しかしその国境はイタリアとベネルクス地域を除けばほぼ全ての国境であった。

もし仮にポーランド、フランス、大ハンガリー王国の三正面戦争になれば、我々第三帝国が生き残ることなど不可能であった。

「敵を各個撃破するしかあるまい…」

軍部とヒトラーの考えが一致した。

「ならば考えるべきはどこから相手にするかだ。まぁこれは考えるまでもないだろう。」

「ええ、その通りです。」

「ならばあとはロンメル将軍。君に任せるとする。」

ヒトラーはただそう言い残し、軍議室から出ていった。帝国に忠誠を誓うロンメルにはそんなヒトラーの態度が気に食わなかった。

「ロンメル将軍、そう気を立てる必要は無い。総統は重要な仕事のためにここを将軍にお任せになったのです。」

「戦争よりも重要な仕事とは何かね?」

「戦争に必要なものは何も忠誠だけで成り立つものではありません。敵を効率よく殺し、都市を制圧してこそ勝利があるのです。」

46歳にしてはまだまだ若い熱を心に宿していたロンメル。そのロンメルを師の様に諭すのは彼よりも5つも歳の若いハゥワーであった。

ロンメルも馬鹿ではない。少し考え、ハゥワーの言うところを察した。

「そうか…今日はあの日だったのか。それならば仕方ないな。」

「ええ、あの日なのです。二、三日も前から総統は楽しみにされていたらしいですよ。なんでも通常業務が手につかないほどであったとか。」

「まさかそれほどまでに楽しみにされていたとは…。」

当初は一年後とされていた戦車の合同コンペティション。しかしヒトラーの執拗なまでの催促と過剰な財源投入によって半年以上も前倒しで開かれることになった。

そして1番の驚くべきことはダイムラー・ベンツ社だけでなく、マン社までもが「最高傑作」と銘打って戦車のお披露目を行うということであった。

電撃戦という戦術は非常に優れているとロンメルは考えている。敵を後退させても、再度の防衛線を構築されるよりも速くに敵領地の奥深くまで抉る。また停滞した戦線を装甲と火力によってこじ開ける能力を持つ。戦術家としてはまさに理想的な兵科であり、その兵科の能力を向上させる競走は祝うべきである。

「ロンメル将軍はご存知かもしれませんが、この度の戦車コンペティションにかかる研究費などは戦艦の建艦費用を当てたようです。総統は海軍には全く無関心のようです。」

ハゥワーの言葉をそうか、の一言で片付け、ロンメルは気を取り直して地図を見た。

旧チェコスロバキア国境に築かれた要塞と天然の要塞たるカルパティア山脈。この二つがある限り、国境の突破は容易ではない。戦車や航空機の支援が十分でない中、コンクリート製の防御陣地を歩兵だけで攻略するのは困難だ。

トーチカを破壊するために野砲を運びあげるという手もあるな…と考えたロンメル。用意段階として事前に必要量を運び込んでおけば輸送の手間も多少ましであるか…。

一旦旧チェコスロバキア領国境は置いておき、やはり本命となるのはオーストリア県と接するハンガリー本国。そこには山脈などは一切鎮座しないハンガリー大平原が広がっている。我々のしたい戦術にはもってこいの場所であった。ロンメルは1つの戦略を構築した。

「みんな聞いてくれ。大ハンガリー王国攻略の戦略はこのようにする。」

堂々と語られるロンメルの戦略。その説明に異を唱えるものは一人としていなかった。
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