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閑話 1938年春 旧ハンガリー国境近郊 ロンメル将軍

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「旧チェコスロバキア国境への野砲の配備は滞りなく進んでいます。」

「了解した。整備点検を怠るな。防御陣地の方はどうなっている?」

「傾斜を利用した陣地を構築中です。山岳部につき塹壕を掘ることは困難を極めており方面司令官のフェリックス司令官の下コンクリート陣地の構築を行っています。」

「敵の状況偵察は順調か?コンクリート陣地は相手の砲撃陣地の射程圏内に立てないことだけは注意してくれ。動かせないコンクリート陣地は野砲の良い的になるだけだからな。」

「了解しました。旧チェコスロバキア国境は旧チェコスロバキア軍によって守られていることが判明しています。軍の統一が済んでいないのではとの見解です。また、堅固な陣地が確認されており攻略するには陸軍戦力だけでは困難だろうとのこと。」

「旧チェコスロバキア軍のままであるのは恐らく、高所での活動になれているからであろう…。その点は我らに不利に働くであろうな。指揮系統の混乱はあるやもしれんが、油断はしないように伝えろ。攻勢はハンガリー大平原からのみ行う。旧スロバキア国境は防衛のみに専念せよ。」

「はっ!」

ウィーンに設けられた対大ハンガリー総司令部にロンメルはいた。旧スロバキア国境方面司令部に伝令を走っていった。しかし、これで終われば良い物の総司令部総司令官のロンメルにはまだまだ多くの仕事が残されている。

「次に航空師団だな。」

「はい。」

「指揮系統の簡略化ないしは、一本化を最優先で進めるのだ。現在の中隊規模での航空師団の運用は非効率的である。しかし、指揮系統の構築中だからといって出撃できないなんて言わせはしない。この戦争においても航空戦力は必要不可欠である。」

「承知しております。」

「戦争の航空師団の師団編成編成、作戦の立案、陸軍師団との戦略整合などに加えて激務となるであろうが手を抜くことが許されないのだ。よろしく頼むぞ!」

「承知しました。ただ、現在配備先の問題が噴出しており対立が起こっています。現在はヘルマンゲーリング主体で編成が行われていますが、航空師団の主力の配置先を巡って内部で対立が起こっています。」

「ヘルマンゲーリングはなんと言っているのだ?」

「大ハンガリー国境に全ての航空機を配置し、帝都の防空を対空砲に一任すれば良い、とのことです。論理としては敵地上空で全ての敵航空機を撃墜すれば帝都の防空は兼用される、と言うものです。しかし、内部では戦闘機の一部は帝都近郊の航空基地に配備し、前線では航空機を機動的配置を行い必要数を前線内で調整することを前提とした案です。」

「なるほど…。今回の採用した作戦が今後のドイツ空軍の戦略となりうる…。」

机に座りながら腕を組む。

「今ここで答えを出すことはできない。後日ヘルマンゲーリングとともに会談を行う。そのための資料作りを行っておいてくれ。可能な限り多方面的なものであることが望ましい。」

「承知しました。追って日程を連絡させていただきます。」

こうして、ロンメルの一日は過ぎていった。
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