世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記

颯野秋乃

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ドイツ第三帝国 マジノ線遠方観察

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アルザス・ロレーヌ(エルザス・ロートリンゲン)方面へと配属されたペーターを含めた1師団は方面軍の指揮下に収まることなく、自由な行動が許可されていた。ペーターの直属の上司はロンメル将軍であった。

 そういう事情もあり、ペーターとヘルマン、そして整備士長のフェーラはフランス国境から程近いザールブリュッケンでコーヒーを飲んでいた。

「この街が我々の国に帰属してもう3年にもなるんですか…」

「忌々しいヴェルサイユ条約を脱したことを象徴する事実のひとつだな。フエーラ少佐はここに縁でもあるのか?」

「いえ、ペーター大佐。別段これと言っては無いです。ただ感慨深くって」

「自国の領土が返ってくる。それも無血でだ。これほど嬉しいことは無いだろう?今回はズデーテン地方を奪還するのに流血を伴ってしまったが。なぁ、ペーター?」

ペーターはその問いに答えること無く席を立った。そのままカウンターへと向かい3人分のコーヒー代と5人分のコーヒー代を“追加注文”し、計8杯分の代金を支払い店を出る。その背中をおってヘルマン、フェーラ続いて退店していく。

そして変るように数人の老人が入店して行った。

店先に止めてあった車に乗り込む。ヘルマンが運転席、フェーラが助手席、ペーターが後部座席である。エンジンが掛かり、走り始めて少しだったがおもむろに口を開いた。

「領土とは国家のアイデンティティのようなものだ。奪われれば自分たちが自分たちではないような感覚に襲われる。逆に奪えば全能感に似た……いや少し違う。優越感だな…に浸ることができる。これに優るプロパガンダが有るだろうか?」

「では、ペーター大佐はこの国の領土の回収外交はどう考えておられるのですか?世間ではリトアニアに対してメーメルを要求するという噂やユーゴスラビアに対してもスロベニアを用するのではないかと囁かれています」

「私がどう考えているのか……か。領土と国境は切っても切れない関係だがそもそも、国境に価値はあるのか?そして私たちの見据えるエルザス・ロートリンゲンを巡って起こった戦いは何度あったことか…」

「ペーター。お前寝不足だろ?目的地に着くまで大人しく寝とけ」

ヘルマンを睨みつけるフェーラだったが、何も言わずに前を向く。エンジン音が車内を支配した。

時間が経ちお昼時。とうに目的地に着いた3人はペーターが目を覚ますまでの間2人は車外の芝生で寛いでいた。

「なぜあのタイミングで割り込んだのですか?」

「あれ以上は聞くべきじゃない内容が出てくる気がしたから」

「友人ゆえの配慮ですか?」

「それは違うな。俺とペーターは確かい友人だろうな。しかしそこには軍人であり、同じ戦車に乗るものであり、上官であるなんて言う、とても一言では言いきれない関係性がねじれ混んでるんだよ。ただしこれだけは言える。俺かペーターのどちらかが軍人を辞めれば、この関係は終わるよ」

「?“普通の”友人になるって事ですか?」

「逆だよ。他人になる」

訳が分からないといった顔をするフェーラにヘルマンはハハっと笑う。そして続けて言う。

「あんたがペーターをどんなふうに見ているのかは知らないけど、あいつは聖人君子でも無ければ英雄でもない。けれども一般人とも違う」

そうとだけ言ってヘルマンはペーターを起こしにクルマへと戻っていく。フェーラは目の前に広がる独仏国境を眺めるだけだった。
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