44 / 69
ドイツ第三帝国 1939年9月 地獄の始まり
しおりを挟む「閣下。本当によろしいのですね」
疑問形でない、ただなる最終確認。
どれだけの人間が死ぬことになるかもわからない。その割には実に簡素な問いであった。
「ああ。もちろんだとも」
この場にいる人間は、すべてが滞りなく始まることを、知っていた。
そんな時、総統の執務机の電話が鳴り響く。
受話器を耳に当て、向こうで何者かが話す声が、漏れ聞こえる。
「変更など何もない。互いの利益のために動こうじゃないか。条約に何の変更もない」
そして、電話が切れる。
「では、諸君。あとは任せたよ。全て予定通りに、遅滞なく、完璧に」
総統の言葉に、皆が敬礼をして答える。総統はその様子すら確認せず、部下に退室を促し、自身は書類に目を通し始めた。
同日10時。ドイツ第三帝国はポーランド政府に対し、正式な宣戦を布告し、国境での戦闘が開始された。
そして、その一時間後極東の国家、大日本帝国は中華統一戦線との戦争が終結したことを宣言し、全世界に向けて東京条約を発行を明らかにした。その内容は群雄割拠していた軍閥が全て解体され、統一された中華政府の樹立と、沿岸地域の200年にも及ぶ租借であった。
今日という日は、それだけでは終わらなかった。そして正午。ソビエト連邦はトルコ共和国に対して、る。ダーダネルス海峡とボスポラス海峡を要求し、宣戦を布告した。この会談は秘密裏に行われており、世界に大きな衝撃を与えた。
後にこの3時間は、”The moment the demon descended.”(悪魔が降臨した瞬間)といわれることになる。
そんな中、ロンメルはフランス国境部を訪れていた。
ポーランド国境での戦闘には、一切関与していないのだ。自身の手腕を振るうのはもう少し後である。今日は、部下が残していった、作戦の実施が滞りなく行われるかの確認に足を運んだのであった。
「首尾はどうかね、ヘルマン少佐、フェーラ少佐。」
「ええ、問題なく。工程はすべて終えてあります」
二人を代表してヘルマンが答える。その返答に、満足も不満足も示さずに、設置された野砲を眺めるロンメル。その光景は、多くの兵士には近づきがたく、周囲には三人を除き誰も姿を現さなかった。
ヘルマンおよびフェーラも心情は似たようなもので、突如として現れた上官、それもかなり上の地位の人間が現れ、この状況から早く解放されたいと、願っていた。しかし、そうすることができない状況があり、二人は仕方なく、精神をすり減らしながら、対応をしていた。
二人が逃げ出せない原因。それは、ペーターの不在であった。3か月ほど前に指令が下った。そう言い残して、どこかへ行ってしまったのである。問題はすべて解決済みであったため、いままで問題なく事は運んでいた。この人が現れるまでは…。
そんなことを考えていると、そくさくと歩き始めたロンメルから、遅れること数歩。その後ろを追いかけることになる。そして、近くの天幕に入り中にいた兵士の全てを追い出した。着席を促され、二人は腰を下ろす。そして、ロンメルはずっと小脇に挟んできた茶封筒を二人の間に置いた。
「君たちのリーダー、ペーターは今、トルコにいる。」
10
あなたにおすすめの小説
幻の十一代将軍・徳川家基、死せず。長谷川平蔵、田沼意知、蝦夷へ往く。
克全
歴史・時代
西欧列強に不平等条約を強要され、内乱を誘発させられ、多くの富を収奪されたのが悔しい。
幕末の仮想戦記も考えましたが、徳川家基が健在で、田沼親子が権力を維持していれば、もっと余裕を持って、開国準備ができたと思う。
北海道・樺太・千島も日本の領地のままだっただろうし、多くの金銀が国外に流出することもなかったと思う。
清国と手を組むことも出来たかもしれないし、清国がロシアに強奪された、シベリアと沿海州を日本が手に入れる事が出来たかもしれない。
色々真剣に検討して、仮想の日本史を書いてみたい。
一橋治済の陰謀で毒を盛られた徳川家基であったが、奇跡的に一命をとりとめた。だが家基も父親の十代将軍:徳川家治も誰が毒を盛ったのかは分からなかった。家基は田沼意次を疑い、家治は疑心暗鬼に陥り田沼意次以外の家臣が信じられなくなった。そして歴史は大きく動くことになる。
印旛沼開拓は成功するのか?
蝦夷開拓は成功するのか?
オロシャとは戦争になるのか?
蝦夷・千島・樺太の領有は徳川家になるのか?
それともオロシャになるのか?
西洋帆船は導入されるのか?
幕府は開国に踏み切れるのか?
アイヌとの関係はどうなるのか?
幕府を裏切り異国と手を結ぶ藩は現れるのか?
対ソ戦、準備せよ!
湖灯
歴史・時代
1940年、遂に欧州で第二次世界大戦がはじまります。
前作『対米戦、準備せよ!』で、中国での戦いを避けることができ、米国とも良好な経済関係を築くことに成功した日本にもやがて暗い影が押し寄せてきます。
未来の日本から来たという柳生、結城の2人によって1944年のサイパン戦後から1934年の日本に戻った大本営の特例を受けた柏原少佐は再びこの日本の危機を回避させることができるのでしょうか!?
小説家になろうでは、前作『対米戦、準備せよ!』のタイトルのまま先行配信中です!
土方歳三ら、西南戦争に参戦す
山家
歴史・時代
榎本艦隊北上せず。
それによって、戊辰戦争の流れが変わり、五稜郭の戦いは起こらず、土方歳三は戊辰戦争の戦野を生き延びることになった。
生き延びた土方歳三は、北の大地に屯田兵として赴き、明治初期を生き抜く。
また、五稜郭の戦い等で散った他の多くの男達も、史実と違えた人生を送ることになった。
そして、台湾出兵に土方歳三は赴いた後、西南戦争が勃発する。
土方歳三は屯田兵として、そして幕府歩兵隊の末裔といえる海兵隊の一員として、西南戦争に赴く。
そして、北の大地で再生された誠の旗を掲げる土方歳三の周囲には、かつての新選組の仲間、永倉新八、斎藤一、島田魁らが集い、共に戦おうとしており、他にも男達が集っていた。
(「小説家になろう」に投稿している「新選組、西南戦争へ」の加筆修正版です)
対米戦、準備せよ!
湖灯
歴史・時代
大本営から特命を受けてサイパン島に視察に訪れた柏原総一郎大尉は、絶体絶命の危機に過去に移動する。
そして21世紀からタイムリーㇷ゚して過去の世界にやって来た、柳生義正と結城薫出会う。
3人は協力して悲惨な負け方をした太平洋戦争に勝つために様々な施策を試みる。
小説家になろうで、先行配信中!
もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら
俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。
赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。
史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。
もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。
征空決戦艦隊 ~多載空母打撃群 出撃!~
蒼 飛雲
歴史・時代
ワシントン軍縮条約、さらにそれに続くロンドン軍縮条約によって帝国海軍は米英に対して砲戦力ならびに水雷戦力において、決定的とも言える劣勢に立たされてしまう。
その差を補うため、帝国海軍は航空戦力にその活路を見出す。
そして、昭和一六年一二月八日。
日本は米英蘭に対して宣戦を布告。
未曾有の国難を救うべく、帝国海軍の艨艟たちは抜錨。
多数の艦上機を搭載した新鋭空母群もまた、強大な敵に立ち向かっていく。
大東亜戦争を有利に
ゆみすけ
歴史・時代
日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を
札束艦隊
蒼 飛雲
歴史・時代
生まれついての勝負師。
あるいは、根っからのギャンブラー。
札田場敏太(さつたば・びんた)はそんな自身の本能に引きずられるようにして魑魅魍魎が跋扈する、世界のマーケットにその身を投じる。
時は流れ、世界はその混沌の度を増していく。
そのような中、敏太は将来の日米関係に危惧を抱くようになる。
亡国を回避すべく、彼は金の力で帝国海軍の強化に乗り出す。
戦艦の高速化、ついでに出来の悪い四姉妹は四一センチ砲搭載戦艦に改装。
マル三計画で「翔鶴」型空母三番艦それに四番艦の追加建造。
マル四計画では戦時急造型空母を三隻新造。
高オクタン価ガソリン製造プラントもまるごと買い取り。
科学技術の低さもそれに工業力の貧弱さも、金さえあればどうにか出来る!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる