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1939年 月 トルコ東部某所
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日が当たると、まだ長袖の制服で十分だが、日陰ではもう一枚羽織りたい。しかし持ち合わせがない以上そう我儘もいっていられない。乾燥した空気は、日陰に入ると、更に冷たい空気を運んでくる。一概に悪いとは言えないが、故郷の空が恋しくなる。しかし、これは任務だ。軍人である以上、その任務を遂行しなくてはならない。
現実逃避をやめ、双眼鏡を除きかろうじで見えるか、見えないかの物体を探す。そして、、、
「見つけた」
「本当ですか?」
ペーターの横には、現地人とのコミュニケーションを図るために、派遣された通訳者、トルコ人のセリムは同じように双眼鏡を構えながらも、標的を見つけられずにいた。
「先のとんがった木が見えるだろ?あれから少し右下を見ると、膨らみがあるのが見えるだろ?あれだよ」
「本当に?石とか土の膨らみじゃないの?」
その無邪気さゆえの無神経さに、苛立つことなくにこやかに自身の両眼を指しながら、
「これが経験だよ」と、ペーターは言った。
ここまで乗ってきた、トラックに乗り込み、近くの町にまで移動する。そしてそこに設置された前線基地でペーターはトルコ共和国軍の司令官と情報の共有をした。
「君の国の情報は間違っていなかった、そういうわけだね」
「ええ、その認識で間違っていないでしょう。練度・質は著しく下がっているようですね。兵を率いて適切に配置すること。待機すること。そのほかにも数えられないくらいありますが、それを実践経験がないものが行うのは無理があるのです。机の上と、土の上じゃ同じにはいきませんからね」
我々がハンガリーと戦争をしていたころ、隣の大国では悪夢のような虐殺が行われていた。その影響は軍部にまで及んだとドイツ参謀本部は判断していた。今回はそれが露呈した形だ。
「つまり、敵はこのルートで攻めてくるのか?」
「全ての軍が、とは断言できませんが、戦車はこの道を進んでくるでしょう」
各地をトルコ共和国軍と見て回った結果、ペーターは一つの場所に目星をつけた。それが今回の場所だったわけだ。
「戦車乗りとしての勘といっていたか。多層立派なものを持っている」
「それほどでもありませんよ。戦車運用のマニュアル通りに敵が動くのであれば、ここが一番合致すると踏んだんですよ」
ペーターとトルコ共和国軍が前もって立てた作戦は、簡単には以下の通りであった。
敵の進路を予測し、待ち伏せによる被害の拡大
であった。要は時間稼ぎであった。しかし、トルコ共和国軍は”いつ、誰が自身に宣戦布告するのかを【知っている】”故にその作戦が立案され、こうして実施に向けて練られているのだ。
アナトリア東部、ソビエト連邦と接する地域は平均標高が2200メートルと高く、冬が長い。場所によっては湿気ることで雪が降る。
ペーターは熱い場所だと勝手に思い込んでいたが故に、準備不足は否めなかった。しかし、今着ているもの自体用意してきたものではなく、トルコ共和国軍群から支給された軍服である。それでも寒い。どかで何かを買うのもいいがここはトルコでも人が少ないことで有名(セリムが言っていた)な場所。そう都合よく町なんてあるはずがなかった。
建物から外に出た前線基地にはかろうじでトラックはあるものの、戦車は一台も見受けることができなかった。
ともに先の大戦の敗者であるが、こうも軍備に差があると気が滅入ってしまう。しかし何もない訳ではない。野砲と対戦車砲はあるのだ。それも、我が国と同じものが。なぜか?設計を横流ししているからなんだけどね。もちろん一つ昔の型だけど。
そんな風に始まったソビエト=トルコ戦争。ピーター大佐からの現在にまでに届いている報告は以下の通り。
遅滞戦術は有効に機能を果たし、敵の被害は拡大。しかし戦線は着実に後退を重ね、トルコ中東部にまで後退をした頃、1939年12月初頭ソビエト連邦は新たな戦線を構築するために大規模(推定6個師団航空機がないため不正確である)な強襲上陸をサムスンに実行。
一時トルコ共和国軍の前線は崩壊し、終戦が見えたが”エルジンジャン地震”が発生。物資補給用の港湾施設及び道路の損壊によって、両軍に被害が発生。トルコ共和国軍は軍を直ちに救援部隊とし、救助活動を開始し、また戦火を逃れるために多くの人が疎開していたこともあり被害は小規模となった。しかしソ連軍は、敵地かつ奥地に進んでいたこともあり、被害はこちらで確認できるだけで、13万人。攻勢が停止しているなどの理由から見て、前線を担っていた部隊は、甚大な被害を出したことに違いはなさそうです。
トルコの継戦能力は著しく低くなっています。それと同時にソビエト連邦にも大きな被害があったことは事実です。しかし、その被害がどの程度戦況に響くものかは不明です。私の推測では、ソビエト=トルコ戦争は早ければ来年4月。遅くとも来年の冬まではもたないでしょう。以上が報告になります。
現実逃避をやめ、双眼鏡を除きかろうじで見えるか、見えないかの物体を探す。そして、、、
「見つけた」
「本当ですか?」
ペーターの横には、現地人とのコミュニケーションを図るために、派遣された通訳者、トルコ人のセリムは同じように双眼鏡を構えながらも、標的を見つけられずにいた。
「先のとんがった木が見えるだろ?あれから少し右下を見ると、膨らみがあるのが見えるだろ?あれだよ」
「本当に?石とか土の膨らみじゃないの?」
その無邪気さゆえの無神経さに、苛立つことなくにこやかに自身の両眼を指しながら、
「これが経験だよ」と、ペーターは言った。
ここまで乗ってきた、トラックに乗り込み、近くの町にまで移動する。そしてそこに設置された前線基地でペーターはトルコ共和国軍の司令官と情報の共有をした。
「君の国の情報は間違っていなかった、そういうわけだね」
「ええ、その認識で間違っていないでしょう。練度・質は著しく下がっているようですね。兵を率いて適切に配置すること。待機すること。そのほかにも数えられないくらいありますが、それを実践経験がないものが行うのは無理があるのです。机の上と、土の上じゃ同じにはいきませんからね」
我々がハンガリーと戦争をしていたころ、隣の大国では悪夢のような虐殺が行われていた。その影響は軍部にまで及んだとドイツ参謀本部は判断していた。今回はそれが露呈した形だ。
「つまり、敵はこのルートで攻めてくるのか?」
「全ての軍が、とは断言できませんが、戦車はこの道を進んでくるでしょう」
各地をトルコ共和国軍と見て回った結果、ペーターは一つの場所に目星をつけた。それが今回の場所だったわけだ。
「戦車乗りとしての勘といっていたか。多層立派なものを持っている」
「それほどでもありませんよ。戦車運用のマニュアル通りに敵が動くのであれば、ここが一番合致すると踏んだんですよ」
ペーターとトルコ共和国軍が前もって立てた作戦は、簡単には以下の通りであった。
敵の進路を予測し、待ち伏せによる被害の拡大
であった。要は時間稼ぎであった。しかし、トルコ共和国軍は”いつ、誰が自身に宣戦布告するのかを【知っている】”故にその作戦が立案され、こうして実施に向けて練られているのだ。
アナトリア東部、ソビエト連邦と接する地域は平均標高が2200メートルと高く、冬が長い。場所によっては湿気ることで雪が降る。
ペーターは熱い場所だと勝手に思い込んでいたが故に、準備不足は否めなかった。しかし、今着ているもの自体用意してきたものではなく、トルコ共和国軍群から支給された軍服である。それでも寒い。どかで何かを買うのもいいがここはトルコでも人が少ないことで有名(セリムが言っていた)な場所。そう都合よく町なんてあるはずがなかった。
建物から外に出た前線基地にはかろうじでトラックはあるものの、戦車は一台も見受けることができなかった。
ともに先の大戦の敗者であるが、こうも軍備に差があると気が滅入ってしまう。しかし何もない訳ではない。野砲と対戦車砲はあるのだ。それも、我が国と同じものが。なぜか?設計を横流ししているからなんだけどね。もちろん一つ昔の型だけど。
そんな風に始まったソビエト=トルコ戦争。ピーター大佐からの現在にまでに届いている報告は以下の通り。
遅滞戦術は有効に機能を果たし、敵の被害は拡大。しかし戦線は着実に後退を重ね、トルコ中東部にまで後退をした頃、1939年12月初頭ソビエト連邦は新たな戦線を構築するために大規模(推定6個師団航空機がないため不正確である)な強襲上陸をサムスンに実行。
一時トルコ共和国軍の前線は崩壊し、終戦が見えたが”エルジンジャン地震”が発生。物資補給用の港湾施設及び道路の損壊によって、両軍に被害が発生。トルコ共和国軍は軍を直ちに救援部隊とし、救助活動を開始し、また戦火を逃れるために多くの人が疎開していたこともあり被害は小規模となった。しかしソ連軍は、敵地かつ奥地に進んでいたこともあり、被害はこちらで確認できるだけで、13万人。攻勢が停止しているなどの理由から見て、前線を担っていた部隊は、甚大な被害を出したことに違いはなさそうです。
トルコの継戦能力は著しく低くなっています。それと同時にソビエト連邦にも大きな被害があったことは事実です。しかし、その被害がどの程度戦況に響くものかは不明です。私の推測では、ソビエト=トルコ戦争は早ければ来年4月。遅くとも来年の冬まではもたないでしょう。以上が報告になります。
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