世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記

颯野秋乃

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ドイツ第三帝国  東方通信

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「私の手元には、偉大な功績と地獄のような被害が書かれた報告書がある。君は聞くとしたらどちらから聞く?」

 ラジオの奥から聞こえてくる声は、嫌な平坦さがあった。ポーランド侵攻を成功させ、その戦後対応のために現地にとどまっていたグデーリアンは、自身の上司であるヒトラーからの通信を私室で聞いていた。

「私は気分は上げて終わるべきであると考える人間です。地獄のような被害の書かれた報告書から聞きたいと思いますね」
「それは、反省を薄くするという意味か?」

詰問のような返しに、逡巡してしまう。それほどまでに悪いことがあったのだろうか。ドイツ東端にいる自分が西端の事情を把握するには、相応の時間を要する。もちろん、常に参謀本部と連絡を取り合っていれば、情報自体は手に入れられるかもしれないが、そこまではしていなかった。なにせ、そこに自身の任務は存在していないのだから。
 かといって、今そんなことを言える状況ではない。

「私はその報告書に関して、何も知りえません。果たしてそれらの報告書に、どれほど反省する価値のあるものなのでしょうか?何も知らないゆえに、言えることもあります。どうしますか?」

報告書の内容を話すか、私に質問をするのか。グデーリアンは会話のボールをヒトラーに返した。

「……いや、報告書の内容を話す。……頭が冷えたよ」
通信越しでも伝わってくる、悲壮感。しかし何も言わずに話の続きを待った。

「お前は、先に悪い報告を聞きたいといっていたな。それが起きたのはイタリアとフランス国境部での出来事だった。ロンメル将軍率いるa軍集団がマジノ線を打通させ、イギリス海峡に目掛けて北上を開始した。そして後詰の部隊がマジノ線の包囲を行っていた。しかし、ここで大きな失敗を犯したのだ」

「失敗ですか?」

「ああ。マジノ線に残留していた部隊の大半は、スイス国内を横断し、フランスと対峙するイタリア軍の側面および後方に出現し、壊滅した。トリノを失陥し、ミラノ・ジェノヴァラインで部隊の立て直しを図っている最中なのだ」

「被害のほどは?」

「4個師団が壊滅。2個師団が被害を出しながらも撤退に成功し、防衛線を構築を始めている。そこにわが軍も派遣し、計4個師団で防御を固めている。ただ、15万人近い人間を失ったことは事実だ」

トリノの失陥とミラノ・ジェノヴァは近い地域だったはずだ。失った人員は痛いが、まだまだ致命傷ではないだろう。ただ、仏伊国境は山岳地形であったはずだ。・・・敵の動向が気になる。

「参謀本部はどう対処するつもりなのですか?」

「兵站の集積が済んでいないため、しばらくは動けないらしい」

妙案はまだ無い様だ。それもそうだろう。

「では、良かった報告とは何なのでしょう?」

「ベネルクス大包囲が完成したことだな!」

そこからは、役者のように表現された戦況が高らかに語られた。

ロンメル率いる機甲師団がイギリス海峡に到達し、陸路補給が寸断され海路による補給が間に合わなくなっており、数日以内に殲滅作戦が実行される予定だそうだ。包囲されている敵の想定数は20万~25万。もし仮に全ての殲滅が完了すれば、趨勢は大きくこちらに傾くことが間違いないだろう。

2つの報告を聞き終わった後、終わりつつあるポーランドの処理の進捗を伝え、ヒトラーとグデーリアンの通信は終わった。
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