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しおりを挟むその名前が体育館に響き渡った瞬間、僕は一瞬にして体が固まった。いや、僕だけじゃない。生徒全員が時を止められたかのような状態になった。
体育館の壇上に立ったのは、あの日と全く変わらない、雪のように白い肌、長いまつげが印象的な、あの美青年だった。玲央はゆっくりと歩を進め、壇上に立つと、そこから会場全体に視線を送った。彼の存在が、ただその場に立っているだけで、すべての視線を奪ってしまう。
玲央は冷静に、そして自信に満ちた様子でマイクを取った。その顔立ちは先日と同じで、どこか冷徹さを感じさせるが、どこか気品に満ちていて、まるで芸術品のように美しかった。
「はじめまして。白銀玲央です」
その一言に、僕はあまりにも驚いて、思わず息を呑んだ。周りの生徒たちも、皆同じだ。先生らですら固まっている。
テレビで見たあの天才俳優が、今、ここにいる。そんな現実が信じられないような感覚だった。玲央はさらりと髪をかきあげながら、朗らかに笑った。
「この学校には、色々と事情があって転校してきました。短い間ですが、よろしくお願いします」
その言葉を終えると、彼は軽く頭を下げ、改めて会場全体に微笑みを向けた。
しばしの静寂。
誰も何も言わない沈黙があり。
そして
「……し、白銀玲央だぁー!!!」
割れんばかりの歓声が、体育館中で爆発した。
僕の耳が壊れるぐらいの大歓声だった。
周りの女子たちが興奮のあまり立ち上がって叫び始めている。女子生徒たちが手を振ったり、叫んだりして、まるで祭りのような熱気を放っていた。
「玲央くんー!」
「うわぁ! 白銀玲央だ!」
「本物だ…! テレビで見てるのと全然違う!」
「かっこよすぎ!!」
「同じ人間なの……!?」
そんな声が何度も繰り返され、周りの空気はまさに熱狂そのものだった。と、突如として何人かの女子生徒が顔を真っ赤にして倒れ込んだり、号泣し始めた。彼の美しさに圧倒されたのか、あまりの興奮に耐えきれなくなったのだろう。
「うぅ、玲央くん……!」
「だめ、こんな、耐えられない……!」
涙を流しながら膝をついている女子生徒たちもいて、まるで夢を見ているような、興奮と感動の入り混じった雰囲気が体育館全体を支配していた。
誰もが目を輝かせ、息を呑んで彼を見つめている。
その一方で、僕はただ呆然と立ち尽くしていた。
まさか、この学校に彼が転校生として来るなんて。あの日、美少女として会ったあの子が、こんな形で全校生徒の前に登場するとは、全く予想していなかった。
玲央はもう一度軽く頭を下げ、また微笑んだ。そのたびに歓声が爆発する。
その光景を目の当たりにしながら、自然と自分の口が動いた。
「どうして、玲央がこの学校に……?」
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