白い結婚だと思っていたら、(溺愛)夫にガブガブされて、番になっていたようです

まんまる

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「シルティ殿下っ!!」

「はわっ」

「遅れて申し訳ありません!ご無事ですかっ!」

「はわわ」

「シルティ殿下っ!もしや、私のお迎えが遅れたせいで、どこか具合が悪くなられたのではっ!」

「そ、そんな事ないよ、アリウス。だって、僕、お手洗いに来ただけだよ」 ぽっ

「ふぅ、良かった。シルティ殿下に何かあったら、私もすぐに後を追う所存です」 きりっ

「ふぁっ、かっこいい⋯」




「⋯⋯⋯」

俺はしがない王宮騎士(β)。
俺の上司である、王宮騎士団団長にして、キーファ侯爵家現当主であらせられる、アリウス団長、御歳おんとし29歳。
─と、俺の護衛対象である、フレア王国の第3王子であらせられる、麗しのシルティ殿下、御歳18歳になられた。

この2人、どう考えても、両想いだよな⋯。

だって、ちょっと殿下がお手洗いに立っただけで、団長が全速力で走ってくるか?
てか、団長、どこにいたんですか?
団長、仕事はどうしたんですか?
団長、さっきから無視されてますけど、護衛の俺の立場は、どうなるんですか?

⋯なんて事は、口が裂けても言えない。

なぜなら、俺はしがない王宮騎士(β)だから。

どれだけ瞳からハートを飛ばし合っていても、どれだけ無意識に互いに手を伸ばしかけていても、当の本人たちが全く気づいていないのは、いい歳をした大人として、いかがなものか。

こんな面白い⋯ごほん、失礼、こんな酸っぱい純愛を見せられたら、これはもう、最後まで見届けるしかないだろう。

だから俺は、この2人をそっと見守ると決めた。

はてさて、この2人、ちゃんと幸せになってくれるだろうか。






◇◇◇◇◇

「シルティ殿下、今日から殿下の護衛に任命されました、キーファ侯爵家長子、アリウスでございます。この命に賭けて、殿下をお守り致します」

「ふぁっ、かっこいい⋯、あっ、な、何でもない。うん、よろしくね、アリウス」

僕が初めてアリウスと出会ったのは、僕が7歳の時だった。当時、学園を卒業して、王宮騎士団に入ったばかりのアリウスは、少し緊張気味に、僕に挨拶をしてくれた。

初めて会ったアリウスは、甘やかな目眩めまいを起こしそうな、大人の香りを全身にまとった、男らしい美丈夫だった。
さらりとした漆黒の髪に、吸い込まれそうなサファイアブルーの切れ長の瞳、こんなかっこいい人が、僕の護衛になってくれるんだ、そう思うと、僕はなぜか、体が熱くなったのを覚えている。


「シルティ殿下、お手に触れてもよろしいでしょうか」
「あっ、はい、どうぞ」

僕はアリウスに言われるがまま、慌てて右手を差し出した。
アリウスは僕の前にひざまずいて、そっと僕の手を下から支え、微笑みをたたえた唇で、手の甲に触れるだけの口づけをした。

「この命、シルティ殿下のものです。何があっても、このアリウスが、殿下をお守りします」
「はうっ、かっこいい⋯、あっ、で、でもアリウス、命は大事にしてね」

僕がきゅっとアリウスの手を握り返すと、アリウスはサファイアブルーの瞳を大きく見開いて、カタカタと小刻みに震え出した。

「ア、アリウス、大丈夫?」
「離したく⋯、なんて柔らか⋯」
「あっ、あのっ、アリウス?」

僕は恥ずかしくて、咄嗟に手を引いて、アリウスから離れようとしたけど、アリウスの力には敵わなかった。


結局、アリウスは父様からたしなめられるまで、僕の手を離さなかった。

美しいアリウスに手を握られながら、穴が空くほどじっと見つめられ、これで、恋に落ちない人がいたら、是非連れてきて欲しい。

そう、僕はこの日、アリウスに、物の見事に恋をしてしまったのだ。

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