【R18】君に届くまで〜カタギの俺には資格がないの?〜

keco

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〚38〛恋しい

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*.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜


 家に、ひとり戻る



 手を洗って 冷蔵庫を開ける

 お腹も空いてないのに
 無理やり頬張る
 仁が作ってくれたおかず


 "一緒に食べなきゃ、意味が無い…"
 仁が良く言ってた

 今頃、気付かされる

 ホントだね…2人で食べないと味気ない



「そうだ、仁の着替え…」


 。゜⋆。゜⋆。゜⋆。゜⋆。゜⋆。゜⋆



 洗面道具、髭剃りと…
 下着、Tシャツ 短パン…
 あとは……タオルと…

 洗濯洗剤と柔軟剤
 私たちは 別々のものを使ってる

「……」

 バスタオルから ふわりと立ち込める
 私の鼻を擽る 意地悪な優しい香り


 恋しさが込み上げてくる

「仁…っ…」


 バスタオルに顔を埋める


 ── 大丈夫… ──



 *・゚・*:.。.*.。.:。゜⋆。゜⋆



 夜が長い1日だった
 心が塞ぎ込みそうで
 "大丈夫"の暗示も 一瞬で消えていく

 必死に 別のことを考えているうちに
 朝を迎えた


 仁の居ないベッドから
 重たい身体を引き摺りながら這い出る


「準備 しなきゃ…」



 *・゚・*:.。.*.。.:。゜⋆。゜⋆


 起床の時間
 看護師さんがやって来て
 カーテンを開ける

「木村さん、おはようございます!
 夜は眠れましたか?」

「あまり眠れませんでした…」


 寝返りを打つたびに 体が痛くて
 目が覚める…
 全身が筋肉痛みたいだ

 ベッドから体を起こそうとすると


「横になったままで大丈夫ですよ!
 血圧測らせてください」


 左腕には点滴、右腕で血圧を測りながら
 看護師さんの質問に答える


「お名前 教えてください」

「木村 仁です」

「お誕生日、言えますか?」

「12月4日です」

「指の動きが鈍いとか
 体が痺れるなど 違和感ないですか?」

「痺れはないけど 何となく変な気分です…
 あと、時々頭が痛くなります…」



 昨日 この病院に救急車で運ばれてきた

 てつからは
 車にねられたと聞いたけど…

 どうして車に?車道に飛び出した?
 信号無視の車が突っ込んできたとか?

 汚れたスーツ、会社用のカバン…
 仕事の帰りだったのか?


「痛っ…」
 何かを思い出そうとすると
 頭痛で顔がゆがむ

 
「今日は、精密検査と
 先生の診察があります…
 朝食後に迎えに来ますので それまで
 のんびりしていてくださいね!」


 看護師さんは出て行った…


 運ばれてきた朝食も 喉を通らない…



 *.゜。:+*.゜。:+*.゜。:+*.゜



 ナースステーションで引き継ぎが行われる
 夜勤だった同僚に
 詳しく仁の様子を聞く


 4人部屋を3か所と
 個室の仁の担当は 私


 "元に戻ってるといいけど…"


 不安なまま
 ノックをして 病室に入る


「おはようございます!」

「あ!昨日の!!」


 そこは覚えているんだ?
 まだダメっぽい…(´^`*)


「看護師さんだったんですね!(*´꒳`*)」


 こんな形で…私の白衣姿を
 見せることになるとはね~


「本日 木村さんの担当をする
 みなとと言います」

 ネームプレートを見せながら自己紹介


 なんか変な感じ…


「湊さん…よろしくお願いします」

「今日、検査があるので
 また迎えに来ますね…
 あ、ご飯 食べれませんでしたか?」

 サイドテーブルのトレイに乗った朝食は
 ほとんど残してある

「はい、痛っ…」

「どこか痛みますか?」

「全身筋肉痛みたいに痛いのと、頭が…」

「頭の傷…ですか?
 ちょっと待ってくださいね」


 パソコンで仁のカルテを開く
 どの位置に傷があるのか確認


「失礼します…」

 髪の毛を分けて 傷口を確認した

「カサブタになってますけど…
 冷やしてみますか?」

 頭をわしゃわしゃしながら
 他にも傷がないか探していると


「……なんか…気持ちいいです」

「え?」

「頭を触られると 何だろう…
 …安心しますね」


 そうだよ…
 仁の頭は毎日
 私が撫でていたんだから


「もう少し、撫でましょうか?(*´艸`)ふふっ」

「い、いえ…大丈夫ですっ!すみません…」


 慌てている仁…可愛いなぁ


 やっぱり まだ思い出さないか…


「では、また後ほど迎えに来ます!
 左足首を捻挫してるので
 無理して歩かないでくださいね!
 ここにある車椅子や松葉杖を
 使って移動してください…
 何かあったら 遠慮しないで
 ナースコールで呼んでくださいね!」

「はい、ありがとうございます」


 *・゚・*:.。.*.。.:。゜⋆。゜⋆


 → 脳神経外科


 車椅子に 仁を乗せて診察室へ

 頭部のレントゲンと 脳波測定
 MRIの検査の説明


 脳外の看護師の案内でレントゲン室へ


 少しだけ耳に入れておこう…

 担当の女医 髙橋先生に

 ここ数ヶ月の記憶がなく
 私が彼女だというのを覚えていないこと…
 仁の状況を話した


「…そうかぁ」

 そういう事例があるのも わかっている
 でも実際には受け入れ難い

「直ぐに記憶が戻ったり
 戻るまで時間が掛かったり
 最悪、記憶が戻らないことはある」

「はい…」

「検査の結果をみないと何とも言えないけど
 記憶喪失も一時的なものだと 願いたいね…
 私も最善を尽くすわ」

「よろしくお願いします…」


 *・゚・*:.。.*.。.:。゜⋆。゜⋆


 仁が検査している間
 一度、持ち場に戻り
 出勤時に持参した
 仁の荷物を 病室のクローゼットに…

「はぁ…」

 落ち込んでもいられない…
 命が助かっただけでも良しとしないと


 。゜⋆。゜⋆。゜⋆。゜⋆。゜⋆。゜⋆


 担当の部屋を巡回し終わると
 検査室から 呼び出し

 車椅子に乗せた仁と
 髙橋先生のいる診察室へ入る

 問診、MRI、レントゲン…
 脳波の結果を総合して


 診断名は "外傷性健忘"
 交通事故などの外傷によって
 脳に損傷が加えられ、記憶に関する機能が
 一時的に、または永続的に障害された状態

 健忘は、精神的なストレスによっても
 引き起こされることもある


「適切なリハビリテーションや
 治療を受けることで症状の改善や
 進行の抑制が期待できますので
 もうしばらく入院しましょう」


 診察が終わって病室に戻る間
 仁は無言だった


 車椅子からベッドに移動

 点滴の残量を確認してると
 仁が口を開いた


「頭の中の一部が
 空洞になってるみたいで
 なんか変な感じだったんです」

「……」

「とても大事なこと…
 忘れてるような気がします…」


 大事なことって言ってくれるところが
 仁らしい…


「大丈夫ですよ!
 ここにいる間はリラックスして
 私たちに お世話されてください(*´꒳`*)」

「お世話…」

 と、言いかけて頭を押さえた


「今、頭を冷やすもの持ってきます
 お疲れだと思うので 少しお休みに…」


 コンコンコン…
 ドアがノックされ


「はい…」

 仁が返事をした


 ドアが開くと そこには…

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