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第二章 ヤマネコ商会、爆誕!:電力革命! 魅惑の家電と至福のバスタイム
第129話 ミアお姉ちゃんは神絵師!? アートディレクターの誕生です
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――そして、開店前日の午後。
私は腕組みをして、カウンターの上に置かれた『スタンド付きブラックボード』と睨めっこしていた。
これは通販で購入した、カフェの店先などでよく見るお洒落なメニューボードだ。
店の前に置いて、道行く人に「今日のオススメ」や「お店のウリ」をアピールするための、重要な集客ツールなのだが……。
「……ダメだわ。画伯すぎる」
試し書きしてみた私の絵は、ジャムの瓶が「赤いスライムが入った筒」にしか見えず、クッキーは「謎の茶色い円盤」になっていた。
美味しそうに見えるどころか、食欲減退待ったなしだ。
調子に乗って通販で専用の画材を揃えてみたけれど……転生したからって、絵が上手くなるわけないわよね。私の絵心が壊滅的なのは、前世からの仕様(スペック)だったわ。
「あの……店長さん? どうかしましたか?」
開店準備の手伝いに来ていたミアが、心配そうに顔を覗き込んでくる。
彼女の視線は、私が持っている「カラフルな棒(マーカー)」と「黒い板」に注がれている。この世界にはない画材だもの、気になるわよね。
「ううん、ちょっとね。看板を描こうと思ったんだけど、私の芸術的センスが前衛的すぎて、お客様には理解されないかなって」
「えっと……よろしければ、私が描いてみてもいいですか?」
「え、ミアお姉ちゃんが?」
私は驚いてマーカーを渡そうとして、ハッと気づく。
そうだ、使い方が分からないわよね。
「あ、その前に使い方を説明しますね。これ、『マーカー』っていう特別なペンなんです」
私は新しいマーカーのキャップを開け、黒板の隅に線を引いてみせた。
鮮やかなネオンカラーのインクが、黒い板の上に滑らかに乗る。
「うわぁ……! インクなのに、垂れないんですね。すごく色が綺麗……」
「でしょう? そしてね、一番すごいのはここからです」
私は、濡らしたタオルで、今描いた線をサッと拭き取った。
すると、インクは跡形もなく消え、黒板は元の真っ黒な状態に戻った。
「ええっ!? 消えた!?」
「そうなんです。このペンと板なら、失敗しても何度でも描き直せるし、日替わりで内容を変えることもできるのですよ」
私が説明すると、ミアは目を輝かせて、恐る恐るマーカーを受け取った。
「……すごい。これなら、思い通りの線が引けそうです」
ミアは黒板の前に立つと、深呼吸をして、マーカーを握りしめた。
最初はインクの出方に戸惑っていたようだが、数本試し書きをして感触を掴むと、彼女の目の色が変わった。
キュッ、キュッ、スラスラ……。
迷いのない手つき。色とりどりのマーカーが黒板の上を踊る。
数分後。
「……できました。こんな感じでどうでしょうか?」
「…………はい?」
私は、完成した黒板を見て絶句した。
そこに描かれていたのは、写真と見紛うばかりのクオリティで描かれた商品たちだ。
赤とオレンジのマーカーを巧みに重ねて表現された、ジャムの艶やかな光沢と透明感。
湯気が立ち上るようなタッチで描かれた、焼きたてのクッキー。
白一色ではなく、影やハイライトまで計算されたイラストは、見ているだけで唾が湧いてきそうなほどの「シズル感」に溢れている。
さらに、その周囲を可愛らしい草花の模様が囲み、『本日開店!』の文字は、カリグラフィーのようにお洒落に装飾されている。
これ、行列のできるカフェの入り口にある、プロの看板じゃん!
「す、すごいです……! ミアお姉ちゃん、絵も描けたのですか!?」
「あ、はい……。刺繍の図案を考えたりするのも好きだったので。この『まーかー』という画材、面白いですね。色が鮮やかで、塗り重ねることもできて……すごく便利です」
ミアはインクで少し汚れた指先を気にすることもなく、楽しそうに笑った。
この子、ただの事務員枠じゃない。店舗のビジュアルを統括する才能の塊だわ!
「決まりです! ミアお姉ちゃんを今日から『アートディレクター』に任命します!」
「あーと……?」
「お店の飾り付けや看板の責任者ってことです! そのセンス、存分に発揮してくださいな!」
横で商品の最終チェックをしていたリアも、誇らしげに胸を張る。
「でしょ? ミアはすごいのよ! 私なんて、小さい頃ミアが描いたパンの絵をお腹空かせて食べようとしたことあるんだから!」
それはリアちゃんが食いしん坊なだけ説もあるけど、とにかく凄いのは間違いない。
こうして、ヤマネコ商会に新たな武器「圧倒的ビジュアル力」が加わったのだった。
私は腕組みをして、カウンターの上に置かれた『スタンド付きブラックボード』と睨めっこしていた。
これは通販で購入した、カフェの店先などでよく見るお洒落なメニューボードだ。
店の前に置いて、道行く人に「今日のオススメ」や「お店のウリ」をアピールするための、重要な集客ツールなのだが……。
「……ダメだわ。画伯すぎる」
試し書きしてみた私の絵は、ジャムの瓶が「赤いスライムが入った筒」にしか見えず、クッキーは「謎の茶色い円盤」になっていた。
美味しそうに見えるどころか、食欲減退待ったなしだ。
調子に乗って通販で専用の画材を揃えてみたけれど……転生したからって、絵が上手くなるわけないわよね。私の絵心が壊滅的なのは、前世からの仕様(スペック)だったわ。
「あの……店長さん? どうかしましたか?」
開店準備の手伝いに来ていたミアが、心配そうに顔を覗き込んでくる。
彼女の視線は、私が持っている「カラフルな棒(マーカー)」と「黒い板」に注がれている。この世界にはない画材だもの、気になるわよね。
「ううん、ちょっとね。看板を描こうと思ったんだけど、私の芸術的センスが前衛的すぎて、お客様には理解されないかなって」
「えっと……よろしければ、私が描いてみてもいいですか?」
「え、ミアお姉ちゃんが?」
私は驚いてマーカーを渡そうとして、ハッと気づく。
そうだ、使い方が分からないわよね。
「あ、その前に使い方を説明しますね。これ、『マーカー』っていう特別なペンなんです」
私は新しいマーカーのキャップを開け、黒板の隅に線を引いてみせた。
鮮やかなネオンカラーのインクが、黒い板の上に滑らかに乗る。
「うわぁ……! インクなのに、垂れないんですね。すごく色が綺麗……」
「でしょう? そしてね、一番すごいのはここからです」
私は、濡らしたタオルで、今描いた線をサッと拭き取った。
すると、インクは跡形もなく消え、黒板は元の真っ黒な状態に戻った。
「ええっ!? 消えた!?」
「そうなんです。このペンと板なら、失敗しても何度でも描き直せるし、日替わりで内容を変えることもできるのですよ」
私が説明すると、ミアは目を輝かせて、恐る恐るマーカーを受け取った。
「……すごい。これなら、思い通りの線が引けそうです」
ミアは黒板の前に立つと、深呼吸をして、マーカーを握りしめた。
最初はインクの出方に戸惑っていたようだが、数本試し書きをして感触を掴むと、彼女の目の色が変わった。
キュッ、キュッ、スラスラ……。
迷いのない手つき。色とりどりのマーカーが黒板の上を踊る。
数分後。
「……できました。こんな感じでどうでしょうか?」
「…………はい?」
私は、完成した黒板を見て絶句した。
そこに描かれていたのは、写真と見紛うばかりのクオリティで描かれた商品たちだ。
赤とオレンジのマーカーを巧みに重ねて表現された、ジャムの艶やかな光沢と透明感。
湯気が立ち上るようなタッチで描かれた、焼きたてのクッキー。
白一色ではなく、影やハイライトまで計算されたイラストは、見ているだけで唾が湧いてきそうなほどの「シズル感」に溢れている。
さらに、その周囲を可愛らしい草花の模様が囲み、『本日開店!』の文字は、カリグラフィーのようにお洒落に装飾されている。
これ、行列のできるカフェの入り口にある、プロの看板じゃん!
「す、すごいです……! ミアお姉ちゃん、絵も描けたのですか!?」
「あ、はい……。刺繍の図案を考えたりするのも好きだったので。この『まーかー』という画材、面白いですね。色が鮮やかで、塗り重ねることもできて……すごく便利です」
ミアはインクで少し汚れた指先を気にすることもなく、楽しそうに笑った。
この子、ただの事務員枠じゃない。店舗のビジュアルを統括する才能の塊だわ!
「決まりです! ミアお姉ちゃんを今日から『アートディレクター』に任命します!」
「あーと……?」
「お店の飾り付けや看板の責任者ってことです! そのセンス、存分に発揮してくださいな!」
横で商品の最終チェックをしていたリアも、誇らしげに胸を張る。
「でしょ? ミアはすごいのよ! 私なんて、小さい頃ミアが描いたパンの絵をお腹空かせて食べようとしたことあるんだから!」
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