美緒と狐とあやかし語り〜あなたのお悩み、解決します!〜

星名柚花

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23:ヨガクレで一番偉い神様

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  篝に通されたのは庭に面した部屋だった。
 上段の間、とでもいうのだろうか。時代劇で殿様が家臣と相対する時に使われる広間に似ていた。
 天井からは紐付きの御簾が垂れさがっていたが、いまは頭上で止められているため、一段高い場所に正座する少女の姿は丸見えだった。

「ふむ。つまり、美緒も良枝と同じ道を辿りたいというわけじゃな」
 額に赤い紋様のある少女は鈴を転がすような声で言い、ふわりと笑った。

 眉の上でまっすぐに切られた銀髪。
 後ろは長く伸び、床まで届いている。
 黄金の大きな目。
 透き通るほど白い肌は染み一つなく、巫女装束を大胆にアレンジしたような着物に包まれている。

 外見年齢は十歳前後。
 彼女の頭からは狐の耳が生え、耳の下に牡丹の花飾りをつけていた。

 彼女の背後には尻尾が九つ、扇のように広がっている。
 高天原から下りてきた天狐、九尾の狐。それがアマネの正体だった。

「はい」
 美緒は金襴織りの分厚い座布団の上で正座し、頷いた。
 ただそうするだけで気力が必要だった。

 アマネは他のあやかしとは纏うオーラの質が違う。
 目にしただけで、その威光にひれ伏したくなってしまう。
 隣で朝陽も緊張しているのが見て取れた。

「人の身でありながらあやかしの力になりたいと思う、その心がけは嬉しい。しかし、わらわはまだお主の人となりを知らぬ。良枝は良く働いてくれたが、祖母が善人だからとて、孫がそうであるとは限らぬであろう?」
 優しい声で、アマネは諭すように言った。

「じゃから美緒、しばらくは朝陽の助手として働くが良い。お主を相談員と認め、紐を与えるかどうかはお主の働き次第じゃ。ちょうどお主たちに任せたい者がおる。現世からやって来た魚なんじゃが、まだ上手に人に化けられもせんのに、どうしても戻りたいと言って聞かぬ。後で紹介するから、朝陽とともに力になってやっておくれ」
「わかりました」
「朝陽もそれで良いな?」
「はい」
 朝陽が頭を下げると、アマネがふふっと微笑んだ。

「物分かりの良い者は好きじゃ。人でも、あやかしでもな。どれ、褒美をやろう。美緒、鞄の中に何か持っておるであろう? 仄かにあやかしの気配がする。出しなさい」
「はい」
 傍に置いていた鞄を開け、鈴を取り出すと、アマネが立ち上がり、こちらへ下りてきた。
 美緒は驚いた。

 アマネはこのヨガクレで一番偉い神さま。
 となれば、当然その場から動かず、美緒が平伏して運ぶものだとばかり思っていたのに、アマネは頓着することなく、銀糸のような髪を引きずって、美緒の前にやって来た。

 控えていた篝が素早く動いて、美緒の前に座布団を置く。
 アマネはそこに座り、差し出した鈴を受け取って眺め、「ふむ」と目を細めた。
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