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24:銀太との再会(1)
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「この鈴を渡したのは銀太か? 朝陽の弟の」
「? はい」
「なるほどの。死して霊魂となりながらも、惚れた女子《おなご》の元に行き、鈴に宿ったか」
「えっ?」
納得したようなアマネの呟きに、美緒は目を剥いた。
「その鈴を見たとき、銀太の気配がしたような気がしました……けど、まさか……本当に?」
朝陽の問う声は震えてすらいた。
「ほう。弟の魂を感じ取ったか、朝陽。元より狐は愛情深い種族であるが、お主の弟に対する愛情は人一倍強かったようじゃな」
アマネは感心したように言って、赤い紐を摘み、鈴を掲げてみせた。
「銀太は霊力のない、か弱き狐だったのであろう。この鈴に宿るだけで力尽き、深く眠っておるようじゃ。お主たちが会いたいと望むなら、わらわの霊力を与えて具現化してやるが」
「本当ですか!? 是非お願いします!」
身を乗り出した朝陽を、アマネは透明な瞳で見つめた。
「断っておくが、銀太は死者じゃ。いずれ在るべき場所へ行き、お主の元を去る。お主はその心の痛みに耐えられるか? 再び別離の苦しみを味わう覚悟はあるか?」
心の奥底まで見透かすような、金色の瞳。
「……はい」
朝陽は一拍の間を置いて、真顔で頷いた。
「それならば良い。銀太。銀太。ほれ、起きよ。お主の目覚めを待つ者がおる」
人差し指と中指の二本で優しく鈴を叩いて呼びかけるアマネ。
固唾を飲んで見守っていると、鈴が淡い光を放ち始めた。
みるみるうちにその光は強くなり、輝きが最高潮に達すると、鈴から分離して一匹の白い子狐を形作った。
「……んー……あれえ? アマネ様?」
子狐は前脚で目を擦り、寝ぼけた声を上げた。
実際に寝ぼけているのだろう。とろんとした目をしている。
「銀太!!」
隣で白い煙が上がる。朝陽が狐に変化したのだ。
「えっ? お兄ちゃん!? それと……美緒!? 大きくなったけど、あなた、美緒だよね!!」
銀太は興奮気味に叫んで駆け寄って来た。
「うん、わたしだよ、銀太くん!!」
歓喜して両手を広げる。
銀太は飛び上がり、美緒の腕の中に飛び込んだ――が、その身体は美緒の手や身体を突き抜け、背後に行ってしまった。
慌てて振り返ると、銀太も不思議そうに自分の身体を見ていた。
身体は透けてはいない。普通の狐に見える。
それでも、幽霊だから、触れ合うことはできないらしい。
「? はい」
「なるほどの。死して霊魂となりながらも、惚れた女子《おなご》の元に行き、鈴に宿ったか」
「えっ?」
納得したようなアマネの呟きに、美緒は目を剥いた。
「その鈴を見たとき、銀太の気配がしたような気がしました……けど、まさか……本当に?」
朝陽の問う声は震えてすらいた。
「ほう。弟の魂を感じ取ったか、朝陽。元より狐は愛情深い種族であるが、お主の弟に対する愛情は人一倍強かったようじゃな」
アマネは感心したように言って、赤い紐を摘み、鈴を掲げてみせた。
「銀太は霊力のない、か弱き狐だったのであろう。この鈴に宿るだけで力尽き、深く眠っておるようじゃ。お主たちが会いたいと望むなら、わらわの霊力を与えて具現化してやるが」
「本当ですか!? 是非お願いします!」
身を乗り出した朝陽を、アマネは透明な瞳で見つめた。
「断っておくが、銀太は死者じゃ。いずれ在るべき場所へ行き、お主の元を去る。お主はその心の痛みに耐えられるか? 再び別離の苦しみを味わう覚悟はあるか?」
心の奥底まで見透かすような、金色の瞳。
「……はい」
朝陽は一拍の間を置いて、真顔で頷いた。
「それならば良い。銀太。銀太。ほれ、起きよ。お主の目覚めを待つ者がおる」
人差し指と中指の二本で優しく鈴を叩いて呼びかけるアマネ。
固唾を飲んで見守っていると、鈴が淡い光を放ち始めた。
みるみるうちにその光は強くなり、輝きが最高潮に達すると、鈴から分離して一匹の白い子狐を形作った。
「……んー……あれえ? アマネ様?」
子狐は前脚で目を擦り、寝ぼけた声を上げた。
実際に寝ぼけているのだろう。とろんとした目をしている。
「銀太!!」
隣で白い煙が上がる。朝陽が狐に変化したのだ。
「えっ? お兄ちゃん!? それと……美緒!? 大きくなったけど、あなた、美緒だよね!!」
銀太は興奮気味に叫んで駆け寄って来た。
「うん、わたしだよ、銀太くん!!」
歓喜して両手を広げる。
銀太は飛び上がり、美緒の腕の中に飛び込んだ――が、その身体は美緒の手や身体を突き抜け、背後に行ってしまった。
慌てて振り返ると、銀太も不思議そうに自分の身体を見ていた。
身体は透けてはいない。普通の狐に見える。
それでも、幽霊だから、触れ合うことはできないらしい。
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