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61:銀太との約束(2)
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「……銀太くんは、朝陽くんが死んじゃうかもしれない危険性にも気づいてたの?」
「ううん。気づいてたら全力で止めたよ」
「あ……そうだよね、ごめん」
何を馬鹿なことを言っているのだろう。当たり前のことなのに。
とことん自分が嫌になり、美緒は再び頭を垂れて畳の目を見つめた。
沈黙が落ちる。
愚かさを責め立てるような、重い沈黙。
アマネも、控える篝も、ただ黙している。
「…………あのね、美緒」
沈黙を破ったのは、銀太の静かな声だった。
「ぼくには朝陽お兄ちゃんの他にも、お兄ちゃんが二人、お姉ちゃんが二人いたの」
「……え」
唐突に始まった身の上話に、美緒は当惑した。
これまで狐の兄弟が自身の家族について話すことはなかった。
なんとなく触れてほしくなさそうな雰囲気だったため、ただ漠然と、両親は亡くなっているか遠いところに住んでいて、二人兄弟なのだとばかり思っていた。
「煌《こう》お兄ちゃん、朝陽お兄ちゃん、夕陽《ゆうひ》お兄ちゃん、茜《あかね》お姉ちゃん、白夜《びゃくや》お姉ちゃん、それからぼく。ぼくは末っ子だったの。お母さんと、ぼくと、白夜お姉ちゃんだけ毛が真っ白で、お父さんや他の兄弟はみんな茶色だった」
銀太は目を伏せたまま、訥々と語った。
「ぼくもお兄ちゃんも、キリマっていう里で生まれたの。キリマはヨガクレよりずっと貧しい里だった。みんなが一生懸命畑を耕しても、土地が痩せてて作物はろくに実らないし、みんなのお腹を満たしてくれるような動物も住んでなかった。ただでさえ暮らしていくには厳しい環境なのに、ぼくは生まれつき身体が弱くて、すぐ熱を出したり咳き込んだりして、薬代がいっぱいかかった。寝込んでたら、隣の部屋からお父さんたちの声が聞こえたの。銀太は山に捨てようって」
あまりの言葉に背筋が凍った。
喉が干上がり、頭の中は塗り潰されたかのように真っ白だ。
「恨む気持ちにはならなかった。だってお母さん、泣いてたもの。そう言うお父さんの声も辛そうだったから。仕方ないなぁって思った。でも、明日みんなとお別れなんだと思ったら、やっぱり寂しくて、悲しくて、布団の中で泣いちゃった」
銀太が四つ足を動かして、美緒の前にやってきた。
落ちた雫は銀太の身体を透過して、畳の上で跳ねた。
銀太は泣く美緒を見上げて、小さく首を振った。
大丈夫、とでもいうように。
「ううん。気づいてたら全力で止めたよ」
「あ……そうだよね、ごめん」
何を馬鹿なことを言っているのだろう。当たり前のことなのに。
とことん自分が嫌になり、美緒は再び頭を垂れて畳の目を見つめた。
沈黙が落ちる。
愚かさを責め立てるような、重い沈黙。
アマネも、控える篝も、ただ黙している。
「…………あのね、美緒」
沈黙を破ったのは、銀太の静かな声だった。
「ぼくには朝陽お兄ちゃんの他にも、お兄ちゃんが二人、お姉ちゃんが二人いたの」
「……え」
唐突に始まった身の上話に、美緒は当惑した。
これまで狐の兄弟が自身の家族について話すことはなかった。
なんとなく触れてほしくなさそうな雰囲気だったため、ただ漠然と、両親は亡くなっているか遠いところに住んでいて、二人兄弟なのだとばかり思っていた。
「煌《こう》お兄ちゃん、朝陽お兄ちゃん、夕陽《ゆうひ》お兄ちゃん、茜《あかね》お姉ちゃん、白夜《びゃくや》お姉ちゃん、それからぼく。ぼくは末っ子だったの。お母さんと、ぼくと、白夜お姉ちゃんだけ毛が真っ白で、お父さんや他の兄弟はみんな茶色だった」
銀太は目を伏せたまま、訥々と語った。
「ぼくもお兄ちゃんも、キリマっていう里で生まれたの。キリマはヨガクレよりずっと貧しい里だった。みんなが一生懸命畑を耕しても、土地が痩せてて作物はろくに実らないし、みんなのお腹を満たしてくれるような動物も住んでなかった。ただでさえ暮らしていくには厳しい環境なのに、ぼくは生まれつき身体が弱くて、すぐ熱を出したり咳き込んだりして、薬代がいっぱいかかった。寝込んでたら、隣の部屋からお父さんたちの声が聞こえたの。銀太は山に捨てようって」
あまりの言葉に背筋が凍った。
喉が干上がり、頭の中は塗り潰されたかのように真っ白だ。
「恨む気持ちにはならなかった。だってお母さん、泣いてたもの。そう言うお父さんの声も辛そうだったから。仕方ないなぁって思った。でも、明日みんなとお別れなんだと思ったら、やっぱり寂しくて、悲しくて、布団の中で泣いちゃった」
銀太が四つ足を動かして、美緒の前にやってきた。
落ちた雫は銀太の身体を透過して、畳の上で跳ねた。
銀太は泣く美緒を見上げて、小さく首を振った。
大丈夫、とでもいうように。
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