美緒と狐とあやかし語り〜あなたのお悩み、解決します!〜

星名柚花

文字の大きさ
62 / 127

62:銀太との約束(3)

しおりを挟む
「そしたら朝陽お兄ちゃんが怒ったの。ふざけるなって。いくら暮らしが辛くたって子どもを捨てるなんて親じゃない、もうお母さんやお父さんを親とは思えないし思わない、銀太はおれが引き取って育てるって叫んだの。ぼく、すっごくびっくりして、布団から顔を出したの。そしたら朝陽お兄ちゃんが来て、ぼくを背負った。みんな止めたけどお兄ちゃんは振り切った。ぼくを背負ったまま、何日も歩いて、ヨガクレまで連れて行ってくれた。着いた途端に倒れちゃって、大変だったなぁ」

 銀太は目を細めた。笑ったようにも見えた。

「お兄ちゃんはそれからずっと、働きながらぼくの面倒を見てくれた。お兄ちゃんだってあの頃はまだ小さい子どもで、すごく大変だったはずなのに、文句ひとつ言わずに、最後まで大事にしてくれた。お兄ちゃんは本当に、優しい人なの。付喪神さんのことも、霊力をあげたら衰弱するってわかってたのに、それでももし自分が付喪神さんだったらきっと自分の言葉で、自分の声で、大好きなおばあさんを慰めたいだろうなって思ったんだよ。昔からお兄ちゃんはそうなの。自分のことより他人のことを考えちゃうの。そういうお兄ちゃんだから、ぼくは救われたんだけど……でも、やっぱり心配だよ」

 銀太が膝の上に乗り、見上げてきた。
 美緒は手の甲で涙を拭い、朝陽と同じ金色の目を見返した。

「だからね、美緒。やりすぎだって思ったら止めてあげてほしい。ぼくはいつまでここにいられるかわからないけど、自分がいなくなった後のお兄ちゃんのことを考えると心配で仕方ない。また他人のために無茶をしてるんじゃないか、ちゃんとご飯を食べてゆっくり寝てるのか、ぼくがそんなこと考えなくていいように、お兄ちゃんよりもお兄ちゃんを大事にしてあげてくれないかな」

「うん。うん、わかった。約束する」
 銀太の願いにも似た一途な想いを受けて、また溢れようとした涙を指先で払い、何度も頷く。

「……美緒はここに来ると泣いてばかりいるの」
 衣擦れの音と共に、苦笑交じりの声。

 顔を上げれば、アマネが目の前に立っていた。

 いつの間にかそこにあった――音もなく篝が用意したのだろう――座布団に座り、アマネは小さな手で美緒の頭を撫でた。

 美緒は少なからず動揺した。神さまが自分に触れている事実に。

「全く、あやつは本当に阿呆じゃの。こんなに想われておるのに気づかぬとは」

 アマネの手は柔らかく、優しかった。
 触れた箇所からじんわりと温もりが広がり、余計な力が抜けて、身体がふっと楽になる。
 これが神さまの力なのだろうか。心までも軽くなった。まるで魔法だ。

「美緒、もしまた朝陽が暴走したら、殴ってでも止めなさい。わらわが許す」

「……はい」
 珍しく冗談めかしたアマネの言葉に笑う。笑えるほど余裕ができた。

 美緒の心の変化を察したのか、アマネが微笑する。
「話はしまいじゃ。さあ、これを朝陽に届けておあげ」
「はい」
 手渡された小瓶を、美緒は強く握り締めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

後宮の手かざし皇后〜盲目のお飾り皇后が持つ波動の力〜

二位関りをん
キャラ文芸
龍の国の若き皇帝・浩明に5大名家の娘である美華が皇后として嫁いできた。しかし美華は病により目が見えなくなっていた。 そんな美華を冷たくあしらう浩明。婚儀の夜、美華の目の前で彼女付きの女官が心臓発作に倒れてしまう。 その時。美華は慌てること無く駆け寄り、女官に手をかざすと女官は元気になる。 どうも美華には不思議な力があるようで…?

芙蓉は後宮で花開く

速見 沙弥
キャラ文芸
下級貴族の親をもつ5人姉弟の長女 蓮花《リェンファ》。 借金返済で苦しむ家計を助けるために後宮へと働きに出る。忙しくも穏やかな暮らしの中、出会ったのは翡翠の色の目をした青年。さらに思いもよらぬ思惑に巻き込まれてゆくーーー カクヨムでも連載しております。

高塚くんの愛はとっても重いらしい

橋本彩里(Ayari)
恋愛
時期外れ、しかも偏差値の高い有名校からなぜかわざわざやってきた話題の転校生。 「どこに隠れていたの?」 そんな彼に、突然探していたと莉乃は背後から抱きしめられ、強引に連れて行かれる。 その日から莉乃は高塚くんに振り回される毎日。 この関係は何? 悩みながらもまるで大事な恋人のように莉乃を扱う彼に絆されかけていた、あの言葉を聞くまでは……。 高塚くんの重愛と狂愛。 すれ違いラブ。 見目がいいだけの男ではないのでご注意ください。 表紙イラストは友人のkouma.作です。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

一億円の花嫁

藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。 父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。 もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。 「きっと、素晴らしい旅になる」 ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが…… 幸か不幸か!? 思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。 ※エブリスタさまにも掲載

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました

専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

処理中です...