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11:今日はお祭り?
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《――疾く立ち去れ、人の子よ。ここは亜人の領域だ。たとえお前が四大精霊を引き連れた大聖女であろうと、王の許可無き者は決して通さぬ。わたくしは許さない。美しい森を焼き払い、数多の命を奪い、偉大な母を殺したお前たち人間を決して許さない》
私は息を呑んだ。
このエルフは人間に母を殺されたのか。
「……それは、百年前のことでしょうか? 亡国の軍隊がこの森に火を放ったと聞きました」
《そうだ。お前たち人間にとっては遠い過去の話だろうが、長命のエルフにとっては昨日のことと同じ。この恨みが、憎しみが消えることはない。アンジェリカ・コートレット。この森に足を踏み入れたこと、大精霊に免じて一度は許そう。しかし、二度目はない。命が惜しければいますぐ――》
《――なあメルト、いまアンジェリカって言わなかったか?》
突然、第三者の声が割って入った。
聞き覚えのある声だ。一日たりとも忘れたことはない。
「シャノン!!」
無意識のうちに私は叫んでいた。
《アンジェリカ!? 本当に!? どうしてエレギアにいるんだ!?》
驚愕と歓喜が入り混じったようなシャノンの声がする。
シャノンは私の姿が見えているのだろうか。もし声だけで私と気づいたなら凄い。
「あなたに会いに来たの!」
《えっ? わざわざおれに会いに来てくれたのか? それは、ええと……ありがとう。おれもアンジェリカに会いたいと思ってたから、すごく嬉し――》
《ちょっとおおお!!》
シャノンの声を遮って、謎の声が元気よく叫んだ。
《勝手に入ってきて桃色の空気作るの止めてくれません!? どうしてくれるんですか、威厳とか緊張感とか全部消えちゃったじゃないですか!! 大体なんでここにいるんですか!? ここは神聖な巫女の部屋ですよ!? たとえ王子であろうと立ち入りを許した覚えはないんですけど!!》
最初は恐ろしいと感じていた声が、シャノンの登場で緊張感が消え去ったいまではただの少女の声に聞こえる。
王子って誰のことだろう?
言葉を発していないだけで、シャノン以外にも誰かいるのだろうか?
まさかシャノンが王子……なんてことはないわよね?
もしそうだったら私は王子に敬語も使わず、気安く接していたことになってしまう。
《いや、ちょうど神殿の前を通りがかったところだったんだけど。アンジェリカっていう単語が聞こえたような気がして》
さっきとは別種の不安に襲われている間にも、二人の会話は続く。
《嘘でしょう!? 外にいたのに聞こえるって、どんだけ地獄耳!? とにかく出て行ってください! いま大事な話をしているんです!! この森に立ち入った人間は誰だろうと追い返さなくちゃいけないんですから!! なのに王子ときたら、困ってる人間を見つけたらほいほい連れ帰ってきて!! ここは亜人の国なのに、あんたが連れてきた人間が九人もいるんですよ九人も!! 二桁の大台に突入させて堪るものですか!!》
《どうして人間を受け入れてはいけないんだ? 相手はアンジェリカだろう? 追い返す必要なんてない。むしろ国を挙げて歓迎すべきだ。今日は祭りだな》
《祭りはあんたの脳内だけで充分ですよ!! だーもうっ、あんたは口を開けばアンジェリカアンジェリカって、馬鹿の一つ覚えか!!》
少女の怒鳴り声が聞こえた直後、一切の音が聞こえなくなった。
森に静寂が戻る。
もう警戒する必要はないと思ったのか、ノームがふよふよと宙を飛び、私の前にやってきた。
なんとなく手を差し出すと、ノームは私の手の上に立って踊り出した。
イグニスとアクアもやってきて、イグニスがノームの上に乗り、さらにアクアがイグニスの上に乗る。
精霊たちは自分の重さを調整できるため、三体が手のひらの上に乗っていても特に重くはない。
「…………。えっと……どうしたらいいと思う?」
風が木々を撫でる音、鳥のさえずり、精霊や虫たちの声。
渾然一体となった自然の音楽を聞きながら、助言を求めてディーネを見る。
ノームは二体の精霊を頭に乗せたまま、私の手の上で呑気に踊り続けていた。
《あの感じじゃ多分、メルトリンデを説得して迎えに来てくれると思うわよ。ここで待っていましょう》
しばらくして、本当にシャノンは迎えに来てくれた。
私は息を呑んだ。
このエルフは人間に母を殺されたのか。
「……それは、百年前のことでしょうか? 亡国の軍隊がこの森に火を放ったと聞きました」
《そうだ。お前たち人間にとっては遠い過去の話だろうが、長命のエルフにとっては昨日のことと同じ。この恨みが、憎しみが消えることはない。アンジェリカ・コートレット。この森に足を踏み入れたこと、大精霊に免じて一度は許そう。しかし、二度目はない。命が惜しければいますぐ――》
《――なあメルト、いまアンジェリカって言わなかったか?》
突然、第三者の声が割って入った。
聞き覚えのある声だ。一日たりとも忘れたことはない。
「シャノン!!」
無意識のうちに私は叫んでいた。
《アンジェリカ!? 本当に!? どうしてエレギアにいるんだ!?》
驚愕と歓喜が入り混じったようなシャノンの声がする。
シャノンは私の姿が見えているのだろうか。もし声だけで私と気づいたなら凄い。
「あなたに会いに来たの!」
《えっ? わざわざおれに会いに来てくれたのか? それは、ええと……ありがとう。おれもアンジェリカに会いたいと思ってたから、すごく嬉し――》
《ちょっとおおお!!》
シャノンの声を遮って、謎の声が元気よく叫んだ。
《勝手に入ってきて桃色の空気作るの止めてくれません!? どうしてくれるんですか、威厳とか緊張感とか全部消えちゃったじゃないですか!! 大体なんでここにいるんですか!? ここは神聖な巫女の部屋ですよ!? たとえ王子であろうと立ち入りを許した覚えはないんですけど!!》
最初は恐ろしいと感じていた声が、シャノンの登場で緊張感が消え去ったいまではただの少女の声に聞こえる。
王子って誰のことだろう?
言葉を発していないだけで、シャノン以外にも誰かいるのだろうか?
まさかシャノンが王子……なんてことはないわよね?
もしそうだったら私は王子に敬語も使わず、気安く接していたことになってしまう。
《いや、ちょうど神殿の前を通りがかったところだったんだけど。アンジェリカっていう単語が聞こえたような気がして》
さっきとは別種の不安に襲われている間にも、二人の会話は続く。
《嘘でしょう!? 外にいたのに聞こえるって、どんだけ地獄耳!? とにかく出て行ってください! いま大事な話をしているんです!! この森に立ち入った人間は誰だろうと追い返さなくちゃいけないんですから!! なのに王子ときたら、困ってる人間を見つけたらほいほい連れ帰ってきて!! ここは亜人の国なのに、あんたが連れてきた人間が九人もいるんですよ九人も!! 二桁の大台に突入させて堪るものですか!!》
《どうして人間を受け入れてはいけないんだ? 相手はアンジェリカだろう? 追い返す必要なんてない。むしろ国を挙げて歓迎すべきだ。今日は祭りだな》
《祭りはあんたの脳内だけで充分ですよ!! だーもうっ、あんたは口を開けばアンジェリカアンジェリカって、馬鹿の一つ覚えか!!》
少女の怒鳴り声が聞こえた直後、一切の音が聞こえなくなった。
森に静寂が戻る。
もう警戒する必要はないと思ったのか、ノームがふよふよと宙を飛び、私の前にやってきた。
なんとなく手を差し出すと、ノームは私の手の上に立って踊り出した。
イグニスとアクアもやってきて、イグニスがノームの上に乗り、さらにアクアがイグニスの上に乗る。
精霊たちは自分の重さを調整できるため、三体が手のひらの上に乗っていても特に重くはない。
「…………。えっと……どうしたらいいと思う?」
風が木々を撫でる音、鳥のさえずり、精霊や虫たちの声。
渾然一体となった自然の音楽を聞きながら、助言を求めてディーネを見る。
ノームは二体の精霊を頭に乗せたまま、私の手の上で呑気に踊り続けていた。
《あの感じじゃ多分、メルトリンデを説得して迎えに来てくれると思うわよ。ここで待っていましょう》
しばらくして、本当にシャノンは迎えに来てくれた。
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◇◇◇◇
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