【完結】追放された大聖女は黒狼王子の『運命の番』だったようです

星名柚花

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12:シャノンとの再会

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「――そうか。それでアンジェリカはエレギアに来たのか」
《ええ。本人はあたしたちに心配かけまいと平気そうに振る舞ってるけどさ。ただでさえ長旅で疲れ切ってたっていうのに、帰って早々罪人扱い。両手足に拘束具をつけられて地下牢に閉じ込められた挙句、三日も馬車で揺られてたのよ。心身ともにめちゃくちゃ傷ついてるだろうから、本当に大事にしてやってよね》

「もちろんだ。おれにできることは何でもするよ」
《よろしい。口先だけじゃなく、メルトリンデとかいうエルフからも、人間をよく思わない亜人の悪意からもちゃんと守ってよ。アンジェリカが亜人に酷いことをしたことは一度もない、それどころか旅先で亜人を助けたことだってあるのにさ。人間だからって一括ひとくくりに敵視するのはおかしいでしょ。アンジェリカが何したっていうのよ》

「おれもそう思う。悪い奴と良い奴がいるのは人間も亜人も一緒なのにな。メルトや他の亜人たちにもわかってもらう努力をするよ。大丈夫、エレギアには人間も住んでるんだ。数は少ないけど、みんな亜人と仲良く暮らしてる」
《へー。本当に人間がいるんだ》
「ああ。おれがエレギアに連れてきた人間の中に『運命の番』がいたらしくて、犬族のアインスには深く感謝されたよ。そのまま二人は結婚した」

《あー、知ってる知ってる。獣人族には魂で結ばれた運命の相手がいるってやつね。初対面で『この人だ!』って思うらしいけど、それって単に一目惚れじゃ?》
「全然違う。おれがアンジェリカと出会ったときの衝撃といったら、天地がひっくり返ったかと――」
《え、マジ? それって、アンジェリカがあんたの――》

 ……なんだろう。声が聞こえる。
 目を開けると、会話が止んだ。

「あっ。アンジェリカ。起きたか?」
 低く透き通った声で私の名前を呼びながら顔を覗き込んできたのは、驚くほどの美青年だった。

 年齢は私の二つ上で、十九歳。

 少し癖のある艶やかな黒髪。
 完璧な場所に、完璧な大きさで配置された顔のパーツ。
 私を見つめる黄金色の瞳。

 何より特徴的なのは、頭に生えた三角の黒い耳。
 彼のズボンからはふさふさな黒い尻尾が生えていることを、私は知っている。

「……シャノン!」
 私は驚愕して跳ね起きた。
 シャノンはひょいっと上体を引いて、顔面衝突を避けた。
 亜人は人間より身体能力が高い。当然、反射神経も抜群だ。

「おはよう。よく眠ってたみたいだな。それだけ疲れてたんだろうな。無理もない。事情は全部ディーネから聞いたよ。大変だったな」
 ベッドの横に置いてある椅子に座り直し、シャノンは眉尻を下げた。
 頭の耳をしゅんと垂らした彼の横にはディーネがいる。

「おれのせいで、その……とんでもない冤罪をかけられたみたいで」
 姦通罪という直接的な単語を口に出すのは憚られるらしく、シャノンは言葉を濁した。

「ごめん。あのときは倒れてるアンジェリカを見て、気が動転してたんだ。とにかく早く助けなければと、考えなしに抱き上げてしまった。でも、おれが触れるべきじゃなかった。誰か人を呼べば良かったんだ――」
「止めて、シャノンが謝ることなんて何もないわ。シャノンは私を助けてくれただけよ。そこに何の咎があるというの」
 私はベッドの端に移動してシャノンの腕を掴んだ。

「シャノンがいなければ私はあのまま弱って死んでいたかもしれない。シャノンは私の命の恩人よ。助けてもらって本当に感謝してるの。いまもまた私を助けてくれている。こんなに素敵な部屋を用意してくれてありがとう」
 シャノンの腕から手を離し、私は室内を見回した。

 石造りの白い壁。火の入っていない暖炉。向かいの壁には風景画が飾ってある。
 カーテンは淡いピンク色で、テーブルの上の燭台の傍にイグニスがいた。
 燭台の火は煌々と明るく部屋を照らし、イグニスに影を落としている。

 窓際に置かれた大きな花瓶には色とりどりの花。
 ノームが窓枠に座っているのは花の香りを楽しんでいるのかもしれない。
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