【完結】追放された大聖女は黒狼王子の『運命の番』だったようです

星名柚花

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41:帰り道で(2)

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「モートンさんは信用していいみたいね」
「ああ。これなら取引を持ち掛けてもよさそうだ。目指すべきは改革派の王族との接触だな。亜人解放に向けた計画を届けたい。そのためには――」
《ちょっとちょっとお。そういう真面目な話は王宮に帰った後にしなさいよ。決定権を持つバロンがいないところであーだこーだ言っても仕方ないでしょうが》
 シャノンと話し込んでいると、ディーネが呆れ顔で腰に手を当てた。

「それはそうだけど、でも、いまのうちに方針くらいは決めておこうかと……」
《後でいいって。さっきは夏祭り楽しみーとか言ってたくせに、あの桃色の空気はどこに行っちゃったのよ。王宮に着いたらシャノンとゆっくり話す機会も減るでしょ? たまには気を利かせて真実二人きりにしてあげるから、限られた時間を大切にしなさい。ほらあんたたち、外に出るわよ。ついてきなさい。『えー』じゃない! つべこべ言わずについてくる!》
 ディーネは大勢の精霊を引き連れて飛んで行った。

 突然シャノンと二人きりにされた私は、会話に困ってしまった。

 どうしよう。何を話そう。
 シャノンに聞きたいことなら、ある。
 夜の花畑で、彼は私に何を言いかけたのか。
 あれからずっと気になって仕方ない。

「……シャノン。奴隷制度廃止に向けての話し合いは置いといて、ごく個人的な……私の知りたいことを聞いてもいいかしら?」
「いいよ。何?」
 シャノンも話題に困っていたらしく、ホッとしたような顔で聞いてきた。

「夜の花畑で、あなたは何を言おうとしたの?」
「……竜車の中で言うのは……夜の庭園とか、綺麗な夕陽を見ながらとか、もうちょっと格好つけた場所で言いたいんだけどな……」
 シャノンは何やら渋い顔。

「言って。聞きたいの」
 私は彼の隣に移動し、彼の手に自分のそれを重ねた。

「……わかった。じゃあ、言う」
 シャノンは金色の瞳に決意を宿し、私の手を握り返した。

「アンジェリカは『運命の番』という言葉を知ってるか?」
「ええ。獣人族にとって魂の片割れなのよね。出会ってしまったら、相手を愛さずにいられないと聞いたわ」
 私が話している間も、シャノンはただ私だけを見つめ続けている。
 射抜くような強い目で見つめられて、鼓動が早くなった。
 もしかして。都合の良い妄想なのかもしれないけれど、でも。

 シャノンの『運命の番』というのは――

「アンジェリカ。おれの『運命の番』は――」

《大変大変たいへーん!! 魔物ー!! 魔物が出たー!!》

 核心に触れる直前、慌て顔のディーネが壁を貫通して飛び込んできた。

「「……………………。」」
 私とシャノンは同時に脱力した。

《どうしたのよ二人とも。あきらかにガッカリしちゃって》

「またこのパターンか……」
 ディーネは首を傾げ、シャノンは頭を押さえている。
 私は深く項垂れ、返事をする気力もない。

 何故いつも肝心なところで邪魔が入るの……!!
 運命の女神様に文句の一つでも言ってやりたい。

《え、もしかして良い雰囲気だった? あたしたち、出ていったばっかりなのに? 意外とやるわね。まあ続きは後のお楽しみってことで、とにかく、魔物が出たんだって。近くの村でイノシシみたいなでっかい魔物が暴れ回ってるんだって。イグニスがなんかやたら張り切ってすっ飛んでいったけど、シャノンはこの国の王子として魔物を放置してて良いわけ? 国民の安全よりもアンジェリカとイチャイチャするほうが大事だっていうなら軽蔑するんだけど。そんな男にアンジェリカを任せるわけにはいかないんだけど――》
「言われなくてもわかってるよ! 国民の安全確保が最優先だ!!」
 やけになったように叫び、シャノンは御者台に続く小窓を開けた。
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