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42:魔物討伐
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「竜車を止めろ! 近くの村で魔物が出た! 大至急討伐に向かう!」
「えっ、また魔物!? もしかしてオレを追いかけ回してた奴!? いや、とにかく、メラム、ジーニ、止まれ!」
モートンさんは混乱しているようだけれど、賢い竜たちはきちんと呼びかけに応じた。
竜車が急激に速度を落としていく。
車が完全に止まるよりも早く、シャノンは稲妻のような速さで剣帯を腰に巻き付け、扉を開けて外に飛び出した。
即座にその背中を追って外に出ると、シャノンは私が車から下りる補助をしてくれた。
「ディーネ、おれたちを現場まで運んでくれ!」
シャノンは私の腰を抱いたまま叫んだ。
離れているより密着していたほうがディーネが運びやすいからシャノンは私を抱いているのだろう。
必要に駆られての行為だと頭ではわかっているけれど、私の頰は熱を帯び、心臓がバクバクうるさい。
《言われなくとも!》
ディーネは私とシャノンを風で包み込み、そのまま高く飛翔させた。
ディーネに風の力で運んでもらい、シャノンと手を繋いで降り立ったそこは小さな村だった。
周りに広がるのは田畑ばかり。
狐族が暮らす村と雰囲気がよく似ている。
違いがあるとすれば、狐族の村ほど拓かれていないことだろう。
狐族の村は水辺や里山が一体となって美しい田園風景を形成していたけれど、この村では雑木林や雑草、空き地が目立つ。
そんな景色の中に亜人たちがいた。
頭から生えている耳の形状は兎、猫、熊、犬、狸と様々だ。
最も私の目を引いたのは、犬の耳を生やした男性の隣に立つ、お腹の膨れた女性。
妊婦らしき彼女には特徴的な耳も尻尾もない――私と同じ人間だった。
この村は人間を含めた色んな種族の者たちが共同で暮らしているらしい。
呆然と立っている人々の真ん中に、二十メートルはあろうかというドラゴンがいた。
赤い鱗で覆われた皮膚。金色の爪。長い尻尾。
頭からは水晶のように美しい角が生えている。
ドラゴンの周囲の地面は七か所ほど焦げていた。
辺りには生物が焦げたような異臭が漂っている。
察するに、ドラゴンが魔物を骨も残さず蒸発させたらしい。
もしも魔物がいまなお暴れ回っているというのなら、亜人たちは逃げまどっているはずだ。
《わお。これって、イグニスが村に入り込んだ魔物全部やっつけちゃった感じ?》
ディーネは口笛でも吹きそうだけれど、亜人たちの強張った表情を見ていると『よくやった』とは言えない。
明らかに亜人たちは巨大な赤いドラゴンを――イグニスを怖がっている。
中には涙を浮かべて母親の腰にしがみついている亜人の子もいた。
「……今日の晩飯が……」
槍を手に持っている熊耳の男性の無念そうな呟きが聞こえた。
どうやら彼は村に出現した魔物を狩って食卓に乗せるつもりだったらしい。
エレギアでは毒のない魔物は普通に食材として扱われている。
市場で魔物が食用として吊るされているところを見たときはギョッとしたものだが、いまではもうすっかり慣れ、魔物を食べるのに抵抗もなくなった。
自分で言うのもなんだけれど、貧乏育ちの私は意外と逞しかったりする。
聖女として周辺諸国を回ってきたおかげで、異文化を理解し尊重することが友好関係を築くうえでどれほど大事かも身に染みてわかっていた。
「イグニス!」
名前を呼んで駆け寄ると、イグニスはギョロリと黄緑色の目玉を動かして私を見た。
大きな翼を広げて得意げに胸を張り、それから頭を下げて私と視線を合わせる。
どうやら誉め言葉を期待しているようだ。
言葉はなくとも、態度が雄弁に語っていた。
「え、ええと……うん。魔物を退治してくれたのよね。ありがとう……でも、蒸発させたのはちょっとやりすぎかなあって――あっ! いえ、本当に助かったし、ありがたいと思ってるのよ!?」
あからさまに落ち込んだイグニスを撫でる。
私がひたすらフォローしている間、シャノンは亜人たちと話していた。
イグニスに怯え切っている様子の子どもの前で跪き、一言二言話して頭を撫でる。
真っ先に子どもの心のケアに務めるところが彼らしい。
子どもが泣き止んだのを確認してから、シャノンは別の亜人たちと言葉を交わした。
三人の亜人たちがシャノンに近づいて、何か言っている。
「アンジェリカ。悪いけど怪我の手当をしてくれるか。魔物にやられたらしい。一人は魔物に驚いて転んだだけらしいけど、それでも怪我は怪我だ」
三人の亜人を連れてシャノンがやってきた。
一人は派手に膝を擦りむき、一人は腰を押さえ、一人は腕と足を負傷していた。
「えっ、また魔物!? もしかしてオレを追いかけ回してた奴!? いや、とにかく、メラム、ジーニ、止まれ!」
モートンさんは混乱しているようだけれど、賢い竜たちはきちんと呼びかけに応じた。
竜車が急激に速度を落としていく。
車が完全に止まるよりも早く、シャノンは稲妻のような速さで剣帯を腰に巻き付け、扉を開けて外に飛び出した。
即座にその背中を追って外に出ると、シャノンは私が車から下りる補助をしてくれた。
「ディーネ、おれたちを現場まで運んでくれ!」
シャノンは私の腰を抱いたまま叫んだ。
離れているより密着していたほうがディーネが運びやすいからシャノンは私を抱いているのだろう。
必要に駆られての行為だと頭ではわかっているけれど、私の頰は熱を帯び、心臓がバクバクうるさい。
《言われなくとも!》
ディーネは私とシャノンを風で包み込み、そのまま高く飛翔させた。
ディーネに風の力で運んでもらい、シャノンと手を繋いで降り立ったそこは小さな村だった。
周りに広がるのは田畑ばかり。
狐族が暮らす村と雰囲気がよく似ている。
違いがあるとすれば、狐族の村ほど拓かれていないことだろう。
狐族の村は水辺や里山が一体となって美しい田園風景を形成していたけれど、この村では雑木林や雑草、空き地が目立つ。
そんな景色の中に亜人たちがいた。
頭から生えている耳の形状は兎、猫、熊、犬、狸と様々だ。
最も私の目を引いたのは、犬の耳を生やした男性の隣に立つ、お腹の膨れた女性。
妊婦らしき彼女には特徴的な耳も尻尾もない――私と同じ人間だった。
この村は人間を含めた色んな種族の者たちが共同で暮らしているらしい。
呆然と立っている人々の真ん中に、二十メートルはあろうかというドラゴンがいた。
赤い鱗で覆われた皮膚。金色の爪。長い尻尾。
頭からは水晶のように美しい角が生えている。
ドラゴンの周囲の地面は七か所ほど焦げていた。
辺りには生物が焦げたような異臭が漂っている。
察するに、ドラゴンが魔物を骨も残さず蒸発させたらしい。
もしも魔物がいまなお暴れ回っているというのなら、亜人たちは逃げまどっているはずだ。
《わお。これって、イグニスが村に入り込んだ魔物全部やっつけちゃった感じ?》
ディーネは口笛でも吹きそうだけれど、亜人たちの強張った表情を見ていると『よくやった』とは言えない。
明らかに亜人たちは巨大な赤いドラゴンを――イグニスを怖がっている。
中には涙を浮かべて母親の腰にしがみついている亜人の子もいた。
「……今日の晩飯が……」
槍を手に持っている熊耳の男性の無念そうな呟きが聞こえた。
どうやら彼は村に出現した魔物を狩って食卓に乗せるつもりだったらしい。
エレギアでは毒のない魔物は普通に食材として扱われている。
市場で魔物が食用として吊るされているところを見たときはギョッとしたものだが、いまではもうすっかり慣れ、魔物を食べるのに抵抗もなくなった。
自分で言うのもなんだけれど、貧乏育ちの私は意外と逞しかったりする。
聖女として周辺諸国を回ってきたおかげで、異文化を理解し尊重することが友好関係を築くうえでどれほど大事かも身に染みてわかっていた。
「イグニス!」
名前を呼んで駆け寄ると、イグニスはギョロリと黄緑色の目玉を動かして私を見た。
大きな翼を広げて得意げに胸を張り、それから頭を下げて私と視線を合わせる。
どうやら誉め言葉を期待しているようだ。
言葉はなくとも、態度が雄弁に語っていた。
「え、ええと……うん。魔物を退治してくれたのよね。ありがとう……でも、蒸発させたのはちょっとやりすぎかなあって――あっ! いえ、本当に助かったし、ありがたいと思ってるのよ!?」
あからさまに落ち込んだイグニスを撫でる。
私がひたすらフォローしている間、シャノンは亜人たちと話していた。
イグニスに怯え切っている様子の子どもの前で跪き、一言二言話して頭を撫でる。
真っ先に子どもの心のケアに務めるところが彼らしい。
子どもが泣き止んだのを確認してから、シャノンは別の亜人たちと言葉を交わした。
三人の亜人たちがシャノンに近づいて、何か言っている。
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