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54:夏祭り(4)
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「次はどこに行こうか。屋台を回る? それとも『願い葉』を書きに行く?」
広場の端に設置してあるゴミ箱にアイスの棒を捨てて、シャノンが言った。
「そうね。まだ屋台を見て回りたいわ。『願い葉』を書くのは昼食の後にしましょう」
同じくアイスの棒を捨てて言う。
「わかった。行こう」
シャノンが再び私の手を取ろうとした、そのときだった。
「王子!? そこにいるのはシャノン王子では!? あっ、アンジェリカさんもいる!」
何やら慌てた様子で声をかけてきたのは壮年の男性だった。
赤毛に青目、はち切れんばかりの筋肉を纏った巨体。
彼の額からは立派な角が生えていた。鬼族の男性らしい。
「誰だ?」
面識のない男性らしく、シャノンは戸惑ったような顔で聞いた。
「申し遅れました、わたくし、料理コンテストの主催者のルアドと申します。料理コンテストの審査員が、ひとり急病で来られなくなりまして」
「急病? 大丈夫ですか? 良ければ私が――」
「あっ、ご心配は無用です。急病といっても、ただの食べ過ぎなので」
ルアドさんは片手を上げて私を制した。
「……そうですか。出しゃばってしまってすみません。どうぞ、お話の続きを」
どうやら出番はなさそうだと、私は踏み出した足をひっこめた。
「いえいえ、見知らぬ亜人を心配してくださってありがとうございます。皆が言う通り、アンジェリカさんはお優しい方なんですね」
ルアドさんは微笑んだ。
ごく自然に浮かんだのであろう笑顔を見て、胸がじんと熱くなる。
――この一か月の頑張りは無駄ではなかった。
私は人間だけど、それでも私自身を見て、評価してくれた亜人はちゃんといた。
しかも、『皆』ということは、知らないところで相当な数の亜人が高評価してくれているらしい。
感激のあまり何も言えないでいる間に、ルアドさんはシャノンに顔を向けた。
「お話の続きですが。もしよろしければ、王子に代打をお願いしたいのです」
「え」
驚いたらしく、シャノンの耳がピンと立った。
「王子が登場されたら盛り上がると思うんですよ! そうだ、どうせなら×××のアンジェリカさんも審査員として参加されません? 王子と人間の××が××参加! 大盛り上がり間違いなしです!」
ルアドさんは両手を握って力説した。
ルアドさんの言葉はそもそも訛りが強く、聞き取るのが難しい。
さらに、いまは早口でまくしたてられたため、注意深く聞いていたつもりでもわからなかった個所があった。
「ねえ、ルアドさんは私のことをなんて形容したの? 人間の、何? 悪口ではないと思いたいんだけれど……」
困ってシャノンを見る。
「悪口じゃないよ。人間の大聖女様って褒めてくれたんだ。話題沸騰中のアンジェリカさん、だって」
「……私、話題沸騰中だったの?」
「アンジェリカは国の各地で大活躍してくれたからな。話題になっていてもおかしくはない。おれは構わないけど、アンジェリカはどうする?」
「どうかお願いいたします! 料理コンテストの成否はアンジェリカさんの両肩にかかっているんです!」
「わ、わかりました。私でよければ……」
自分より年上の男性に身を折って深々と頭を下げられては、断れるはずもなかった。
広場の端に設置してあるゴミ箱にアイスの棒を捨てて、シャノンが言った。
「そうね。まだ屋台を見て回りたいわ。『願い葉』を書くのは昼食の後にしましょう」
同じくアイスの棒を捨てて言う。
「わかった。行こう」
シャノンが再び私の手を取ろうとした、そのときだった。
「王子!? そこにいるのはシャノン王子では!? あっ、アンジェリカさんもいる!」
何やら慌てた様子で声をかけてきたのは壮年の男性だった。
赤毛に青目、はち切れんばかりの筋肉を纏った巨体。
彼の額からは立派な角が生えていた。鬼族の男性らしい。
「誰だ?」
面識のない男性らしく、シャノンは戸惑ったような顔で聞いた。
「申し遅れました、わたくし、料理コンテストの主催者のルアドと申します。料理コンテストの審査員が、ひとり急病で来られなくなりまして」
「急病? 大丈夫ですか? 良ければ私が――」
「あっ、ご心配は無用です。急病といっても、ただの食べ過ぎなので」
ルアドさんは片手を上げて私を制した。
「……そうですか。出しゃばってしまってすみません。どうぞ、お話の続きを」
どうやら出番はなさそうだと、私は踏み出した足をひっこめた。
「いえいえ、見知らぬ亜人を心配してくださってありがとうございます。皆が言う通り、アンジェリカさんはお優しい方なんですね」
ルアドさんは微笑んだ。
ごく自然に浮かんだのであろう笑顔を見て、胸がじんと熱くなる。
――この一か月の頑張りは無駄ではなかった。
私は人間だけど、それでも私自身を見て、評価してくれた亜人はちゃんといた。
しかも、『皆』ということは、知らないところで相当な数の亜人が高評価してくれているらしい。
感激のあまり何も言えないでいる間に、ルアドさんはシャノンに顔を向けた。
「お話の続きですが。もしよろしければ、王子に代打をお願いしたいのです」
「え」
驚いたらしく、シャノンの耳がピンと立った。
「王子が登場されたら盛り上がると思うんですよ! そうだ、どうせなら×××のアンジェリカさんも審査員として参加されません? 王子と人間の××が××参加! 大盛り上がり間違いなしです!」
ルアドさんは両手を握って力説した。
ルアドさんの言葉はそもそも訛りが強く、聞き取るのが難しい。
さらに、いまは早口でまくしたてられたため、注意深く聞いていたつもりでもわからなかった個所があった。
「ねえ、ルアドさんは私のことをなんて形容したの? 人間の、何? 悪口ではないと思いたいんだけれど……」
困ってシャノンを見る。
「悪口じゃないよ。人間の大聖女様って褒めてくれたんだ。話題沸騰中のアンジェリカさん、だって」
「……私、話題沸騰中だったの?」
「アンジェリカは国の各地で大活躍してくれたからな。話題になっていてもおかしくはない。おれは構わないけど、アンジェリカはどうする?」
「どうかお願いいたします! 料理コンテストの成否はアンジェリカさんの両肩にかかっているんです!」
「わ、わかりました。私でよければ……」
自分より年上の男性に身を折って深々と頭を下げられては、断れるはずもなかった。
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◇◇◇◇
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