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ゆれるひと
ゆれるひと
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男が夜道を歩く。
バイトの帰りで少々遅くなってしまったからだ。
夜なのに蒸し暑く、風が吹いても涼しさはなく、生暖かい湿気を纏った空気が吹きつけられるだけだ。
男が借りている部屋は少々郊外にあるアパートの一室だ。
理由は家賃が安かったからだ。
出かけるとなると少し不便ではあるが、それ以外は男に不満はない。
いや、一つだけある。
アパートの周囲には自然が多く虫が多いのだ。
今も歩いているのにもかかわらず既に数カ所も蚊に刺されている。
蚊に刺されたところを男は掻きながら、歩いているとちょっとした藪の前を通る。
道に沿って三十メートルくらい、森とまではいかない、やはり藪というべきものがフェンスに囲まれて続いている場所がある。
木々はなくとも背の高い雑草が生えているような場所だ。
空き地ではなくとある工場の敷地の一部らしいが、男も詳しくは知らない。
まあ、藪が道に沿って、少し続く道があるのだ。
その辺りは特に蚊も多い。
腕を激しく振って蚊に刺されないように歩いていると、藪の中に男の視線が行く。
なにかが動いていたからだ。
それは左右に、まるでメトロノームの振り子のように、規則的に左右に動いているものがあったからだ。
嫌でも視線が行ってしまう。
ちょうど人と同じくらいの大きさだったというのもある。
男は驚いて、立ち止まりそれを見てしまう。
それは全裸の人だった。
恐らくは男だ。激しく左右に動いていたので、ちゃんと確認出来てはいない。
それが、まさにメトロノームと同じような速度で左右に揺れているのだ。
男は、うわっ、とつい声を上げてしまう。
そうすると、左右に揺れている人物も、通りを歩いている男に気づく。
動いていて確かではないが、その揺れている人は男に気づいた瞬間、顔をニンマリと笑ったそうだ。
男は逃げるために駆け出す。
絡みつくような足を必死に動かし、転がるように走る。
何度か後ろを振り返るが、揺れる人が通りにまで出て来る様子はなかった。
藪の道を通りすぎても、男は足を止めず自分の部屋まで駆け込んだ。
男は息を整えながら、ドアにしっかりと鍵をかけ、部屋の雨戸も閉めようとする。
その時、アパートの小さな庭先に体を左右に揺らすあの人物が立っていた。
暗闇の中、白い体が光を反射して目立って見えていた。
やはり笑みを浮かべているように男には思えた。
男は急いで雨戸を閉め、部屋の中で朝まで震えた。
あれは生きた人間だったのか、それともそうじゃないのか。
その判断も男にはつかなかった。
それ以来、男は暗闇の中で度々揺れる人を見かけるようになる。
いつ見ても、その顔はニンマリと笑っているように見えたという話だ。
バイトの帰りで少々遅くなってしまったからだ。
夜なのに蒸し暑く、風が吹いても涼しさはなく、生暖かい湿気を纏った空気が吹きつけられるだけだ。
男が借りている部屋は少々郊外にあるアパートの一室だ。
理由は家賃が安かったからだ。
出かけるとなると少し不便ではあるが、それ以外は男に不満はない。
いや、一つだけある。
アパートの周囲には自然が多く虫が多いのだ。
今も歩いているのにもかかわらず既に数カ所も蚊に刺されている。
蚊に刺されたところを男は掻きながら、歩いているとちょっとした藪の前を通る。
道に沿って三十メートルくらい、森とまではいかない、やはり藪というべきものがフェンスに囲まれて続いている場所がある。
木々はなくとも背の高い雑草が生えているような場所だ。
空き地ではなくとある工場の敷地の一部らしいが、男も詳しくは知らない。
まあ、藪が道に沿って、少し続く道があるのだ。
その辺りは特に蚊も多い。
腕を激しく振って蚊に刺されないように歩いていると、藪の中に男の視線が行く。
なにかが動いていたからだ。
それは左右に、まるでメトロノームの振り子のように、規則的に左右に動いているものがあったからだ。
嫌でも視線が行ってしまう。
ちょうど人と同じくらいの大きさだったというのもある。
男は驚いて、立ち止まりそれを見てしまう。
それは全裸の人だった。
恐らくは男だ。激しく左右に動いていたので、ちゃんと確認出来てはいない。
それが、まさにメトロノームと同じような速度で左右に揺れているのだ。
男は、うわっ、とつい声を上げてしまう。
そうすると、左右に揺れている人物も、通りを歩いている男に気づく。
動いていて確かではないが、その揺れている人は男に気づいた瞬間、顔をニンマリと笑ったそうだ。
男は逃げるために駆け出す。
絡みつくような足を必死に動かし、転がるように走る。
何度か後ろを振り返るが、揺れる人が通りにまで出て来る様子はなかった。
藪の道を通りすぎても、男は足を止めず自分の部屋まで駆け込んだ。
男は息を整えながら、ドアにしっかりと鍵をかけ、部屋の雨戸も閉めようとする。
その時、アパートの小さな庭先に体を左右に揺らすあの人物が立っていた。
暗闇の中、白い体が光を反射して目立って見えていた。
やはり笑みを浮かべているように男には思えた。
男は急いで雨戸を閉め、部屋の中で朝まで震えた。
あれは生きた人間だったのか、それともそうじゃないのか。
その判断も男にはつかなかった。
それ以来、男は暗闇の中で度々揺れる人を見かけるようになる。
いつ見ても、その顔はニンマリと笑っているように見えたという話だ。
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