それなりに怖い話。

只野誠

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かばしら

かばしら

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 夕方、少女は母親に言われて庭先のポストを見に行く。
 そこにお届け物が届いているかもしれないから、と。
 大した用事ではない。
 ちょっと行って来て、ポストの中を覗いて荷物があれば持って帰って来ればよいだけだ。

 少女はそう考えていた。

 玄関のドアを開けると、もう外は薄暗くなっていた。
 ちょうど真っ赤な夕日が玄関から見える。
 夕日の照らされている部分だけ、オレンジ色に染められ、それ以外は夕闇に包まれていた。
 
 少女は少し不気味だと思いながらも、玄関から外へと出る。
 そして、ポストを目指す。
 ポストはちょっと入り組んだ塀の裏にあり、更に暗くなっている。
 少女はポストに手を突っ込み中に何かないか調べる。
 もう暗く目では物があっても、よくわからなかったからだ。

 中には薄い段ボールのお届け物が入っていた。
 後は特にない。
 少女はそれを手に持って帰ろうとしたときだ。

 振り返ると、黒い小さな無数の物体が渦を巻くように飛んでいるのが見えた。
 蚊柱という奴だ。羽虫の集合体だ。
 少女はそれを見ただけで、顔を歪め、蚊柱から距離を取ろうとする。

 だが、まるでその蚊柱は少女を追うように近づいてくるのだ。

 少女は庭の方に迂回しながら玄関を目指して走る。
 少女のすぐ後ろをブーンブンブーンと羽音が鳴っている。
 蚊柱を形成する羽虫にしてはやけに羽音が大きい。

 ただの蚊柱ではないのでは、少女がそう思った時だ。
 首筋や肩、腕や腿など肌を出していた部分に強い痛みを感じる。

 腕を見ると1センチくらいの小さな虫が噛みついていたのだ。
 少女は悲鳴を上げ手足を激しく動かしながら家の中へと逃げ込む。

 そして泣きながら、手や足についた虫を払う。
 虫に噛まれた場所は赤く腫れあがっていて、酷い場所には血がにじんでいた。

 ただ、おかしなことに払った虫はどこにも落ちていない。
 跡形もなくなっていたのだ。

 まるで夕闇そのものが虫だったかのように。




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