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第二部
14:猫又さまと化け犬の遭遇
しおりを挟む世界から取り残されたようだった。さっきまでまばらに居たはずの人の姿がない。あったはずの道も、家も、雨と闇に取り残されたかのように。
「ミケ……!」
「フナアアアア!!」
ガタガタガタガタ!!
「ミケ!」
手が震える。唇が、全身が、雨の冷たさだけじゃなくて。ミケと闇に放り出された恐怖に。ぬるりと現れた巨大な獣への恐怖に……!
――グルルルルルル!!
「っ、ひ……!!」
赤い目。逆立つ毛。むき出しの牙が、わたしの目線の遥か上にある。
これが、みんなが言ってた化け犬!?
「桜ちゃん! わたしを出すにゃ!!」
ガタガタ!!
暴れ続けるミケ。
フ――! フ――! と息を荒げながら叫ぶ。出して、逃げてくれるならいい! でもミケは絶対にわたしを守ろうと無茶をする!! 出せるわけがない!!
「だめ……!!」
わたしはキャリーケースをぎゅうっと抱え込む。絶対にミケを守る!!
「女、その猫を置いて行け」
唸り声の後、化け犬が喋る。ミケを寄越せと言う。
「ぜったいに、いや!!」
渡せない! わたしがミケを守る!!
(ルイくんが言ってたっ)
――『お前の言霊は『願う力』が異常に強い。少しの雑念もなく口にした願いは『引き寄せる力』になる』
そうだ。わたしの『言霊』は強い!!
ガチガチと歯がかみ合わない。
それでも、すうっと大きく息を吸い込む。
化け犬の大きな前足が迫る。跳ねのけないと……!!
「――――――渡さない!!」
大きく、声を発した。喉が熱い……っ
「……!!」
「桜ちゃん!?」
何かが、化け犬の前足を弾いた気がする。――だけど。
「っ……!」
ズキンっと喉が引きつる。
次の、言葉が、でない!? 弾いただけじゃ意味がないのに!!
「――この女からも九尾のにおいがするな」
「つ、つれていこう。ぜったい、みけ様、よろこぶ」
(!?)
一匹じゃなかったの!? 化け犬がゆるりとぼやける。その後ろからもう一匹……!!
ううん、それより。
(『みけさま』……?)
「『あの猫』は始末できたか?」
「う、う、に、にげた」
「逃がしたか。逃げ足の速い……」
頭がぼうっとする。どういうこと……?
「桜ちゃん、桜ちゃん!!」
ミケがわたしを呼ぶ。どうしよう。どうしたらいいの……!!
(わたしの『言霊』は……!)
言葉にならなければ意味がない!
ジリィ! ジリィ! と、あの音はずっと鳴り続けてる。
振り続ける雨音よりも、ずっとけたたましく。
「桜ちゃん!!」
ミケの叫びと、わたしごと捕らえようとする化け犬の動き。
それから、
シャララ――ン――……
いつかのガムランボールの音が、大きく響いた。
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